読書実況レポート2021.4「言葉選びを意識すると読者視点が養われる」
本レポートは、Vtuberのサイとが、作家応援のために行うライブ配信「読書実況」の応募作について、気づいたことを述べた記事です。
本レポートは毎月1日に発表されます。
2021年4月1日~4月30日に読んだ作品が対象です。
古典を現代語訳にするのは読者視点を養う
作品:風姿花伝 偽の巻
作者:kiri
道(みち)をたしなみ、芸を重んずるに私(わたくし)なくば、などかその徳を得ざらん
ことさら、この芸、その風(ふう)を継ぐといへども、自力より出づる振舞あれば語(かたる)にも及びがたし
その風(ふう)を得て、心より心に伝(つたう)る花なれば風姿花伝と名付く
↑
(ちょーざっくり意訳) がんばってお稽古して、感動させたるやで!
なんとなくそんな雰囲気のことを、世阿弥(ぜあみ)さんが高尚な感じで書かれてますが、がっつり崩していく所存。
つまり、
取っ付きにくい!
まったりしすぎて長え!
セリフの言い回しが妙で、何言ってるかわからん!
そういう伝統芸能ってやつを、少しわかりやすくお話にまとめてみたものなのです。
古典文学を現代語訳した作品は学習まんが等が人気ですね。
たのしく歴史を学べます。
本作は古典芸能を現代語で文章化した短編集です。
古典芸能を小説化するというのは珍しい気がします。
しかし、物書きが習作として映画を小説化することは多いはずです。
古典芸能もまた然りなのではないでしょうか。
古典芸能を小説化するにあたって現代語訳が課題となります。
現代人が読んで理解できなければなりません。
自ずとどうすれば理解されるかを意識して執筆することになります。
古典を現代語訳するのは読者視点を養うのです。
実は、読者視点を持つことが出来ない人ってけっこういます。
古典という普通の人は読めない言葉を、現代人という幅広い範囲に向けて言葉を選ぶのですから、単に映画を小説化するより難しいことです。
言葉選びを意識しながら作ることで、読者視点は養われるのだと思います。
会話でもそうですね。
言い方に気をつけるだけで人の印象が変わります。
人となりが見える小説は心地よいです。
暗喩的に読むことでより面白く読める
作品:山羊男誕生のひみつ
作者:@isako
人里はなれた山小屋に住む男にはひみつがある。彼の頭は山羊そのものである。
そして彼の人生を縛るのは魔法を使う恐ろしい悪魔たちだった。
文学というのは芸術です。
ある種、パズルのように規則的で精緻でもあります。
そんな側面が強いのはミヒャエル・エンデの『モモ』などがそうでしょう。
過不足なく物語が綴られることに快感を覚えます。
ちょうどよい、ということが良いんですね。
私が天秤座だからかもしれません。
本作は、極めて理性的な判断を下す主人公が悪魔契約を行うところから物語は転がり始めます。
恐れとは何か? 愛とは何か? 自分とは何か?
知ってはいけないものと知るべきことの境界を問う話です。
シュールでメルヒェンな部分がけっこう出てくるんですが、これを暗喩的に読み込むことでより面白く読める小説だと思いました。
例えば『モモ』を読む時のような感覚です。
そして、文学とは個人的なものです。
本作は最後までずっと個人的な小説だったと思います。
これほどの名作がwebに眠ってるだなんて驚きました。
まとめ
今月は50作品読みました。
新しい試みとして配信の仕方をお好みで選べるようにしました。
甘口、朗読、宣伝は視聴者数が1/3くらい減ったので、やっぱりお好みで選べるようにしたらダメなんだと思いました。
今後はラーメン屋の頑固親父のように常に腕組していきます。