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子どもたちの創造力を刺激する「なんだこれ?!サークル」とは?

「なんだこれ?!サークル」は、思わず「なんだこれ?!」と言ってしまいそうなことが大好きな人たちの集まりです。才能はみだしっ子たちにも興味をもってもらえそうだなと感じたので、企画をされた岩淵拓郎さんに取材をさせて頂きました。

「なんだこれ?!サークル」は2014年に元美術作家で、現在編集のお仕事をされている岩淵拓郎さんが、子ども向けアートプログラムを企画・運営されている一般社団法人タチョナから依頼を受けて共同企画をしたワークショップがそもそもの始まりです。

岩淵拓郎さん

アーティストと一緒に行うワークショップはよく見かけますが、その多くは参加者がやるべきことがある程度決まっており、設定されたゴールに向かっていく内容となりがちです。材料が用意されていたり、ワークの過程でアーティストの方法論を使ってみたりとか。この時はそういうものではなく「なにをするのかが決まっていないワークショップをやりたい」というお題での依頼だったそうです。その依頼を受けて岩淵さんはなにをやるかが決まっていないなりにガイドライン的なものがあると良いのではないかと考えました。そこで作ったのが、「なんだこれ?!のつくりかた」です(最初はA4二つ折りサイズで10枚程度の冊子でしたが、後にこちらは日英バイリンガルの書籍として出版されています)。この書籍が教科書的な意味合いを持っています。

「なんだこれ?!」は何をするの?

「なんだこれ?!サークル」では、「なんだこれ?!」なことを見つけたら、実際にそれをやってみたり、かたちにしたりします。それを誰かに見せて「なんだこれ?!」と言わせたり、その「なんだこれ?!」が何なのかを考えたりします。

バナーで紹介しているのは、りくさんの作品《少ないけど大変なミルク》 2022年です。動画はこちらから。

下記は、はなさん、さちさんの作品 ≪ふえとひも(再演)≫ 2019年です。

はな、さち《ふえとひも(再演)》 2019年 動画はこちらから。

なぜそのようなことをするかというと、「なんだこれ?!」を考えたり、形にしたりすることはとても楽しいことだから。そして「なんだこれ?!」という発想を持つことから実は今まで気づかなかったことに気づけたり、見方や考え方を大きく変えることになったりするからです。

なんだこれ?!のつくりかた

本の中には「なんだこれ?!」を始めるひとのための10個のつくりかたが紹介されています。

  1. 誰もやっていないことをやってみる

  2. やりにくい方法でやってみる

  3. ひっくり返してみる

  4. 大きさを変えてみる

  5. 同じ事をものすごくくり返す

  6. よくわからない名前をつけてみる

  7. いろんなものを組み合わせてみる

  8. ふつうのことをわざわざやってみる

  9. やると怒られそうなことをやってみる

  10. (ほとんど)なにもしない

思わず笑ってしまうような面白いやり方ばかりです。そして、本の中ではサークルのパイセン(=せんぱい)として世界中のアーティストやサークルの参加者の「なんだこれ?!」な作品が参考として併せて紹介されていて、そのナンセンスさに楽しい意味で圧倒されます。

岩淵さんがこの教科書を使って実際にワークショップをしてみると、意外と子どもたちが自由に意味のわからない面白いものを作れるということがわかりました。最後に発表会をやってみたら、道具などを使わないパフォーマンスみたいなことをする子がいたり、ある意味60年代、70年代のパフォーマンスアートのような表現をする子どもたちの姿を観ることもありました。その時に「子どもが作る」ということに対して、大人として「この程度だろう」と想定していた概念を壊されることになりました。岩淵さんは子どもたちに対して今まで思っていたのとは異なる潜在した力を感じ、常に「子どもが作る」ということを考え直しアップデートしながら、「なんだこれ?!サークル」のワークショップを様々な形で継続して提供されています。

今までの活動・現在の活動

「なんだこれ?!サークル」は主に日本各地の公共文化施設などと共同で、月に1回集まり、3ヶ月~6ヶ月くらいのスパンで開催をしてきました。

対象は小学4年生以上中学生ぐらいをメインターゲットとしています。参加した子どもの保護者が大人もやりたいと言い出して大人向けのイベントを開催したこともありました。

2023年には兵庫県の西宮ガーデンズにて夏休み期間に「なんだこれ?!ガーデンズ」という大規模なイベントも開催されました。

「なんだこれ?!ガーデンズ」の様子

海外ではタイで2回2週間ほどのワークショップを行ったこともあるそうです。動画を観ると「なんだこれ?!」感がいっぱいですね。

バンコックでのワークショップ

(動画:「なんだこれ?!サークル」 バンコクLIVE 2017年

現在は兵庫県の西宮市と鳥取県の米子市で開催中です。途中参加は難しいようですが、2024年3月以降も活動は継続されます。

  • なんだこれ?!サークル にしのみや 2023

日程:2023年9月~2024年3月(月1回活動)
会場:兵庫県、西宮フレンテホール
対象:小学校4年生~6年生

  • なんだこれ?!サークル とっとり 2023

日程:2023年9月~2024年3月(月1回活動)
会場:鳥取県米子市「ちいさいおうち」
対象:子どもと大人

費用は各会場により異なります。鳥取でのサークル活動は毎回大きなテーマがあって展開しており、それぞれの場所で活動内容はカスタマイズをされているとのことです。

「なんだこれ?!サークル」を開催するには?

これまで各地で行われてきた「なんだこれ?!サークル」では岩淵さん自身が講師/ファシリテーター役をつとめてきました。ただ、ある種の「経験」をしたことがある人ならば、実はだれでも同サークルを主催・運営することができるし、実際にそういう人が増えてくれたらいいと岩淵さんは考えているそうです。その「経験」とは、誰かに言われたわけでもないのに、人の誰とも違う何かを熱中して作ったことがあるということ。

なんだこれ?!中の参加者と岩淵さん

「開催をしてみたい!」と思われたら、岩淵さんはいつでも相談にのってくださるとのことです。 ※お問い合わせはこちらから。

とても大切な「鉄のおきて」

最後に「なんだこれ?!サークル」にとって最も重要なルール「鉄のおきて」についてご紹介します。それは3つあります。

  1. しんけんにやる、しんけんにみる (どんななんだこれ?!にもしんけんに向き合う。はずかしがったり、ふざけてやるのが一番かっこわるい)

  2. まねをしない、でも参考にする (他の人が考えたなんだこれ?!をまねしてもなんだこれ?!は決して生まれない。でもいっぱい参考にしよう)

  3. きずつけない、きずつかない (なんだこれ?!のために誰かをきずつけたりもしくは自分がきずついてはいけない。体ももちろん心も。物をこわすときはよく考えてからこわそう)

「なんだこれ?!」を作ろうとしていると、つい自分のことばかり考えてしまうことにもなりがちです。自分が作りたいものを作るけれど、周りは関係ないとなってしまったり。けれども「なんだこれ?!サークル」は人との関わりも大切にしています。ひとりで表現してもつまらないことが、人と一緒にやることでめちゃめちゃ面白いことになることもあります。また、面白いからとむやみやたらに危険なことをしたり、壊したり傷つけることもNGです。

書籍「なんだこれ?!のつくりかた」の書評で『「鉄のおきて」は凄まじい。このおきて3つでだいたいのことがいける気がしました』というコメントがありましたが、私も同感です。この掟は人が生きていく上で本当に大切なことが凝縮していると思いました。

最後に

岩淵さんにお話を伺っていて、「なんだこれ?!サークル」は学校などの大人の作った仕組みなどに染まり始める前の子どもたちが自由に発想が出来るとても大切な場所だと感じました。岩淵さんが「子どもたちの気持ちの風通しが良くなる場所であればと思っています」とおっしゃっていたのがとても印象的でした。

私はアートとは自由な発想から生まれると思っており「なんだこれ?!サークル」はアートという枠組みもない場所でアートを体感する場所なのではないかと思っています。なにをするのか、少しわかりにくいと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、このブログを読んでくださっている方たちには理解頂ける感覚なのではないかと思い今回ご紹介をしてみました。

岩淵さん、取材へのご協力ありがとうございました!

岩淵拓郎さん、とてもユニークなワクワクする活動をご紹介頂き誠にありがとうございました。これからも「なんだこれ?!サークル」の活動がさらに広がっていかれることを心から願っております。


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