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【才能はみだしっ子サポーターズ ②】「子どもたちが人生の大冒険に出られるように個々の素晴らしさを呼び起こしたい」日本ギフティッド協会 / NPO法人 Feelosopher’s Path Japan

日本のギフテッドの子どもたちを応援する団体、『才能はみだしっ子サポーターズ』。

今回は、日本ギフティッド協会 、NPO法人 Feelosopher’s Path Japanをご紹介します。アメリカと日本と協働して活動する、教育コミュニティ・NPO法人Feelosopher’s Path。その代表である今瀬博さんにお話を伺いました。

アメリカでのギフティッドとの出会い、そしてFeelosopher’s Pathができるまで

教育コミュニティであるFeelosopher's Pathは、ギフティッドの子どもを含めた多種多様な子どもたちとその家族を対象に様々なプログラムを通して、安心できるコミュニティ、感情知性を育む機会を提供しているNPO法人です。

主催者の今瀬博さんは、サンフランシスコ・ベイエリアにある中学生向け(日本の小学校6年生~中学校2年生)のギフティッド教育機関オデッセイ中学校で、2002年から2012年までの10年間教鞭をとられていました。そして今瀬さんとオデッセイ中学校時代の同僚のエリン・スターリングさんが2012年に Feelosopher's Pathを立ち上げました。

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日本ギフティッド協会は、ギフティッド教育の普及とネットワークの構築を目的として活動をしています。主な活動は年1回の「ギフティッド教育カンファレンス」と月1回のギフテッド・サポートグループワークショップを開催しFeelosopher’s Pathがその運営をしています。

両組織の創設者である今瀬さんは、子どもの頃から近隣の子どもたちがどのように過ごしているのか、近所で何が起きているのかを見て回ることが好きでした。警察官になる事を夢見て犯罪心理学を学んでいた米国の大学時代に、恩師から「子どもたちと関わる仕事がある。興味はないか」と紹介されたのがオデッセイスクールでした。

ギフティッドの子どもたちと出会い、中学生にもかかわらず大学生なみのスピードで学ぶ一方であどけない側面を見せる子どもたちと触れ合い、今瀬さんはギフティッド教育にのめり込んでいきました。パートタイムの教師から始まり、その後は担任、生徒生活指導、副校長と、10年の間に仕事の幅を広げて行ったのです。

こうして今瀬さんは、2012年の帰国後、ギフティッドの子どもを含めた様々な子どもたちの教育に関わりたいと、教育コミュニティFeelosopher's Pathを日米共同で立ち上げ、活動を開始しました。

思春期を成長の黄金期に変えるギフティッド同士が出会う場に

思春期の子どもは、とても複雑な心の変化を抱えています。さらに、ギフティッドの子どもが自分の性質を正しく理解できていない場合、とても困難な時期となってしまいかねません。今瀬さんは、「親子でその時期を共に成長しながら乗り越えることで、大切な思春期を『黄金期』に変えることができる」と話します。

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日本では、ギフティッドの子どもたちへの理解が進んでいないために、学習面で優れている部分を伸ばすことだけを重要視する傾向がありますが、Feelosopher’s Pathのプログラム、日本ギフティッド協会のカンファレンス、ワークショップは次の要素を大切にしています。

1.社会・情緒的スキルを身につける感情知性教育
2.  自らの認知行動を学ぶメタ認知教育
3.自らの性質を理解するキャラクター教育

そして、実際にFeelosopher’s Pathが提供するのは以下のようなプログラムです。 (FP=Feelosopher’s Path)
① お昼のデイプログラム(週1回/月4回開催)
② FP年間冒険プログラム(年に10回開催)
③ FPキャンプin日本
④ FPキャンプin アメリカ(アメリカのFeelosopher’s Pathと共同開催)
⑤ 日米のFP家族が情報交換をするコミュニティバディシステム
⑥ FPコミュニティにおいて大人になったことを表明するセレモニーであるComing of Ageイベント
⑦ FPホームスクール(前期:1月-6月 後期:9月-12月)
⑧ FPコミュニティーの家族(生徒の兄弟)が参加するワンダーフォーゲル部

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今瀬さんの方針として、ギフティッドの子どもの教育で大切なのは、その子のコンフォートゾーンを広げていく上で、子ども自身が自分を知り、自分に必要なサポートやチャレンジについて主張できるようになっていくこと。つまり、「セルフアドボケイト(self advocate)」ができるようになること。

Feelosopher’s Pathでは冒険プログラムやキャンプなどで、子どもたちが自分の限界を超えて様々なチャレンジをする機会を作っています。そこでは、子ども同士で助け合い、智恵を出し合います。時には保護者も参加し、参加する家族同士が交流することもあります。

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学校では出会うことがむずかしいギフティッドの仲間と、コミュニティの形成をすることもでき、親子で学び合うことができる場となっています。

ところで、「Feelosopher」という言葉は、今瀬さんオリジナルの言葉です。そこに込められた思いを、Feelosopher’s Pathのサイトから、ご紹介します。


Feelosopherとは、感情知性-エモーショーナルインテリジェンスを活用し「気持ち・心に賢い人」を意味しており、自分だけでなく、周りの人の気持ちも理解し、お互いの似ている所や違いを楽しめる人です。つまり、自分自身とも周りの人ともポジティブに関わり合いを持てる人です。「成功する」事よりも「成功を感じる」事に焦点を置いている人です。自分の可能性にワクワクし、人生の目的を見つけ、未知の領域を仲間と冒険する人です。そのような人のPath=道を作ることを理念とされています。

日本ギフティッド協会:https://www.jagifted.org/
Feelospher’s Path Japan : https://www.fpjapan.org/
ヒロ先生のブログ:https://chishikijin.blogspot.com/

【インタビュー後記~酒井の思い~】

今瀬さんは現在お一人で日本ギフティッド協会、Feelosopher’s Path Japanの運営をされています。ギフティッドの子どもの支援には「今、その子どもが何を必要としているのか」という「見極め」がとても重要と今瀬さんはおっしゃいます。ひとりひとり異なる子どもの様子を冷静に観察し、保護者から話を聞いて、最適と思われるアドバイスを、今瀬さんは提案しています。そのような「見極め」のノウハウは、今瀬さんがアメリカのギフティッドスクールで出会った多様な子どもたちと、その保護者と向き合い培った10年間、さらに帰国してからの8年間の経験から身についたもの。だから、トレーニングによって人に教えることがむずかしいのだそうです。

とはいえ、日本ではこれから、ギフティッドの子どもたちに関する啓発活動が進み、子どもたちへの対応が増えていくであろう中で、教える側の層を厚くしていくことが必要となります。今瀬さんは、設立当初から参加している親子が、いずれその役を担ってくれるのではないかと考えているとおっしゃっていました。

私が取材をした海外の支援団体では、ほとんどの発起人や運営者は才能はみだしっ子の保護者や家族または本人でした。実際に子どもを育て、トライアンドエラーを積み重ねる中で得た知識と経験に勝るものは、なかなかないのかもしれません。そのような方達がFeelosopher’s pathと日本ギフティッド協会の活動を継続していく上で大きな力となる事を願っています。

国内で才能はみだしっ子の支援団体や保護者の方々とお話すると、信頼できる団体として日本ギフティッド協会のお名前が挙がります。規模を大きくすることを重視せず、対応できる範囲で最大限の支援を丁寧に提供されている今瀬さんの努力の賜物だ、と感じました。 (酒井)


※ 日本ギフティッド協会では「ギフティッド」という表記を使っていますので、今回の記事内での表記をギフティッドで統一しています。


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