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介護にアレクサ導入

今日は親の介護について触れます。
昨年5月に父を見送りました。同世代の友人と100歳まで頑張る気満々でしたが80代半ばで旅立ちました。振り返ると父の介護は本格的に始まってから約3年。これが長いか短いのか比較の問題ではないでしょうが、何もかも初めての経験で手探り状態でした。まさか自分の親が介護の必要な状態になるとは、そしてそれが自分の生活に降りかかるとは、コロナ前までは思ってもいなかったのです。それほどゆっくりと、しかし着実に父の老いは忍び寄ってきました。父が自宅で過ごした2年間は、生活のすべてが、そして私の思考や予定の大半が父の介護を中心に回っていました。

間近で父を観ながら、人間、年をとるとはこういうことなのかとじわじわと肌で感じました。そしておのずとあれこれ考えを巡らするようにもなりました。とくに、
・どうしたら、父は最後の年月をいい形で過ごせるか
そして
・自分の老後はどうしたいか、どうありたいか
まで思いを馳せるようになりました。まだ先のこととはいえ準備が大切。

ある日、父が介護施設に入ることになりました。事前に子どもたちで見学し、ショートステイを体験して父も気に入り、縁あって決めた施設でした。その時の介護度で入れる範囲で決めた中で最良の選択でしたが、その後一度、施設を変えています。その二回とも入所時に施設に家族からお願いした一点、それは

部屋にアレクサを設置したい

でした。

アレクサとは何でしょうか。きっと私より説明が上手な方ばかりでしょう。
いろいろな使い方ができるようですが、着目したのはテレビ電話らしきコミュニケーションが双方向でできる点です。ITに強い甥(大学生)の軽い一言「アレクサ使って、こっちからおじいちゃんに呼びかけることができるよ」
と聞いて使ってみることにしました。

実はそれまでも甥がもってきたアレクサを自宅に置いていたのですが、使われておらず宝の持ち腐れ状態でした。そんな便利なことができるのならと、ほこりを拭いて磨き私たちの携帯やipadにもアプリを入れて準備開始。

というのも、電話をかけるのが好きだった父があまりかけなくなってきていたからです。聞くと「おっくうになってきた」
まず耳が遠くなりました。補聴器をしてようやく聞こえる程度です。どうも聞こえる声と聞こえにくい声がある様子で話し手の声の性質にもよるかもしれませんが、よく聞こえないことには変わりありません。

高齢になると指の動きもスムーズでなくなり、短縮ボタンがあっても電話を取り出してかけること自体が面倒になるようです。若いときから手が不器用でもあった父。ガラケイの操作が難しいとなると、ふと娘や孫と話したいと思っても簡単にできなくなります。それはすなわち家族とのコミュニケーションが困難になるということ。世の中にはコロナ禍でもLINEで孫と会話しているおばあちゃんがいましたが、父にはもはやスマホ操作ができる頭の柔軟性も手の器用さもありません。慣れている携帯電話の補完としてアレクサ導入になりました。

アレクサの利点
(1)こちら(家族)から話しかけることができる。
「おはようお父さん、今話せる?」
聞こえれば画面に近づいてきます。家族の顔が見えるとそれはもう嬉しそうで、そこからしばらく話すことができました。私も父の表情が見られることが安心材料となりました。
(2)アレクサの設置角度を工夫すれば、話さない時でも、いまどうしているかな、夕食終わった頃かなと父の様子をうかがうことができる
(3)リマインダー替わり:メッセージを入れてアレクサに流してもらう
「今日はデイサービスの日です。8時までに用意済ませようね」
「今日の1時からNHKで大学ラグビーやってるよ」
などなど

アレクサの話をしたとき、施設からは「アレクサって何ですか?」
怪訝な表情を浮かべられましたが無理もありません。私もその時までほとんど知らなかったのですから。
「自分で携帯電話の操作が難しくなってきたので、離れている家族とのコミュニケーションにぜひとも使わせていただきたい。何か不都合があったり邪魔になるようでしたら、電源のON/OFFは施設にお任せします」

持ち込み後には施設の方にも使い方を説明し、試しに操作もしてもらいました。念のため操作方法を書いた紙もおいておきました。
音量や電源の調整もお任せました。節度をもって、今ごろ話せる時間だろうと思っても見計らって限定してかけることにしました。日々お世話になっている施設の方には余計な負担はかけたくなかった、ただ父には家族の顔を見せたかったという狭間で揺れ動いていた結果のアレクサ導入だったのです。

施設の理解を得ることは必須です。毎日使うものですし、何よりパスワードを教えてもらう必要があります。利用者向けパスワードを使わせていただき、甥に設置してもらいました。どちらの施設にも言われたことは
「こんなものがあるんですね。今どきのテクノロジーはすごいですね」
ほかのスタッフもやってきて
「私も触ってみていいですか?」
「お孫さん、私にも教えて」
転じて一躍人気者になったアレクサと説明者の甥。。

二件目の施設では、ラジカセ、TV、髭剃りなど持ち込む電気製品ごとに電気代を課金される設定だったので、アレクサも入れてもらいました。もっともなことだと思います。

アレクサのおかげで、施設にいた間も面会だけでなく父とコミュニケーションをとることができました。いま思うとあれもできたかもこれもするべきだだったかもと思うことしきりです。それでも、アレクサ画面に近づきのぞき込む嬉しそうな父の表情がいまでも目に浮かび救われる思いもあります。
ありがとう、お父さん。年をとっても子どもたちの言うことに耳を傾けてくれて。アレクサは今も孫(私の甥)のところで活躍しています。