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AIチャットボット業界No.1、ジェナのマーケティング戦略を読み解く


近年AI(人工知能)という言葉を聞かない日はなく、AIサービスの中で特に目に付くようになったのがAIチャットボットだ。僕の会社でもAIチャットボットを取り扱っているので、業界トップのジェナについて調べながら、業界構造やマーケティング戦略について読み解いて行く。(使用フレームワーク:PEST分析、5Forces分析、3C分析、STP分析、4P、収益ドライバ)


チャットボットについてだが、質問に対してAIが回答してくれるサービスだ。(※1
先日新幹線のチケットをキャンセルしようと思いJRのHPにアクセスしたら、チャットボットにキャンセルの手順を教えてもらった。(※2
サイト内を調べるのが面倒だったので、非常に助かった。


■チャットボットにメリットを感じる人


①お問い合わせ対応が大変で、少しで良いからお問い合わせ業務を減らしたい人。つまり、お問い合わせ対応を減らし、他の業務をする時間が欲しい人だ。具体的には、人事部の採用担当者や総務部のIR担当者、カスタマーサポート部門の方たちだ。

②検索して、ヒットした文書の中から欲しい情報を探せない人。つまり、ITリテラシーが高くない人やヒットした文書から、欲しい情報を探すのが面倒だと感じる人だ。具体的には、新入社員や中途社員だ。

③時間外に問い合わせしたい人。つまり、夜勤が多い仕事だったり、出張が多く業務時間無いに問い合わせできない人たちだ。具体的には、中堅営業マンや役員の方たちだろう。


■ジェナについての基本情報

ジェナの基本情報(※3)(※4

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■ジェナの概要

ジェナはAIチャットボットを提供する会社の中で、市場シェアNo.1(33.2%)を獲得しており、クープマンの目標値で言えば、市場影響シェアである。(※5)これはジェナが新サービス投入などの動きを取ったときに競合企業は同調や対抗手段を投じないといけないといけないシェアだ(※6

また、継続利用率は98.6%と高く、顧客生涯価値(LTV)は初期費用200万円、月額30万円ほどだとして、2,343万円程になる計算だ。約6年間の継続利用。
計算式:200万円+30万円/(1-98.6%)≒2,343万円

ちなみにジェナの売上高は、2019年のチャットボット市場規模に市場シェアをかけることで求まる。(※7)売上高15億円、利益率24%程だ。
計算式:460,000,000円×33.2%=1,527,200,000円

ついでに、2019年から2023年までの4年間の年平均成長率は、14.2%程だ。
計算式:1-(109÷64)^0.25≒14.2%


■PEST分析


ジェナの属するチャットボット市場のマクロ環境分析を行う。PEST分析から、ジェナを取り巻く市場環境がどのようになっているかを読み解く。
政治要因(※8)経済要因(※9)(※10

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PEST分析の総括として、AIチャットボットは人件費削減やワークライフバランスの実現を手助けするツールになりうるし、DXの促進のためのIT投資資金の融資を低金利環境下では得やすいため、ジェナには追い風だ。
ただ、コロナウィルス環境下の緊急事態宣言により、企業の利益が減少しIT投資にまわす資金的な余裕がある企業が限定されてしまっていることが懸念点だ。


■5Forces分析


ジェナの属するAIチャットボット業界の構造を読み解いていく。

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5Forces分析の総括として、競合他社が多く、買い手にとってのメリットを十分に示せていないと価格競争になりやすい業界だ。一方売り手に対しては、AIを自社で開発している企業は、システムエンジニアの人件費は高い傾向にあるため、AI開発のエンジニアの採用に苦労するだろう。

また、新規参入には弱い業界構造だと言える。
なぜならシステムエンジニアがいれば参入できてしまうためである。参入障壁としては、NTT Communicationやリコーなどは、主力製品での販売ルートを持っているため、新規参入者より販売では優位といえる。代替品はドキュメント検索システムが考えられるが、カスタマーサポートの面では、検索の手間を省く、チャットボットが優位だ。


■3C分析


3C分析でジェナの基本構造を整理する。

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3C分析の総括として、顧客は業界No.1の実績及び、解約率の低さより安心感、信頼を得ていると考えられる。またAIに必要で特殊な作業である、初期学習を代行している点も大きな決定要因だと考えられる。

一方カラクリは、チャットボットの精度として95%を保証している。
これは顧客にとって、チャットボットの性能を評価する指標として信用できる物だと考えられる。また、正答率95%を実現する運用後のサポートを受けられる点が顧客には重要だと考えられる。

ジェナが選ばれる理由としては、実績からの安心感と特殊な作業の代行だろう。


■STP分析


続いて、STP分析で基本戦略を整理する。
まずは、セグメンテーションを確認する。

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顧客の負荷の大きさ、製品の機能で判断するか、実績で判断するかを軸に、顧客を分け、チャットボットベンダーを評価すると、ジェナは顧客の負荷が少なく、実績で判断する顧客に対し販売を行っていると考えられる。

次にターゲティングで、より具体的に誰にアプローチするのかを整理する。

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ニーズがありそうな、人事採用担当者、総務部IR担当者、カスタマーサポート、新入社員、中途社員、中堅営業マン、取締役・部長クラスを対象に6Rを実施する。結果、人事採用担当者、総務部IR担当者をコアターゲットにするのが良さそうだ。

STP分析の最後、ポジショニングだが、ジェナは人事部採用担当者、総務部を対象に実績があり、導入が楽というポジションを築いている。


■4P分析


ジェナは「実績があり、導入が楽」というポジションを築くためにどのようなマーケティングミックスを構成しているか見ていく。(※11

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4P 分析の総括として、製品の使いやすさやサポートの充実度が継続利用率の高さ、大手通信キャリアとの関係による紹介が市場のシェア率の高さというジェナの強みの根幹(実績)につながっていると考えられる。ちなみに、価格や流通、製品機能は他社とほとんど差は無い。


■収益ドライバ


最後にジェナがどのようなビジネスモデルで、収益を上げるているのかを整理する。

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ジェナの売上高は、顧客生涯価値と顧客数の積で計算できる。
顧客生涯価値は、初期費用、月額費用、解約率(1-継続利用率)が変化しなければ変わらないので、売上高を伸ばすには、既存顧客が解約する以上のスピードで、新規顧客数を増やし続けるしかない。

ちなみに、シェアを33.2%に保ち続けるならば、毎年15.4%の成長を実現しなければならない。つまり、顧客数を毎年15.4%増加させる必要がある。
計算式:年平均成長率+解約率=14.2%+1.2%=15.4%


■ジェナのマーケティング戦略総括


「実績があり、導入が楽」というポジションを築くために、実績をいち早く作り、実績が実績を呼ぶ状態の広告戦略がジェナのマーケティング戦略だ。
それを実現するために、大手通信キャリアと深い関係性を築き、新規顧客を獲得し続けるための手段を築き維持しているのが最大の成功要因だと考える。


■僕がジェナのCMOなら


僕がジェナのMCOならば、オウンドメディアの充実化と大手通信キャリアとの関係強化を実施する。
具体的には、成功事例や失敗事例、顧客へのインタビューや業界動向などの情報発信や、関係強化のために担当者への接触頻度を向上するなど。

なぜなら、ジェナのビジネスで大事なのは、解約率以上に新規顧客を獲得すること。そして新規顧客の獲得費用が顧客生涯価値を超えないことである。

つまり
新規顧客獲得率>解約率 かつ 顧客生涯価値>新規顧客の獲得費用

なので、打ち手は4つ。
・新規顧客獲得率の向上
・解約率の低減
・顧客生涯価値の向上
・新規顧客の獲得費用の低減

新規顧客獲得率の向上を考える場合、収益ドライバから、オウンドメディアの強化か、大手通信キャリアとの関係強化、新規顧客獲得方法の実施が考えられる。

解約率低減を考える場合、収益ドライバから、顧客満足度の向上、要因を分けると、顧客の使用頻度と使用人数を上げる施策を考える必要がある。

顧客生涯価値の向上を考えると、初期費用を上げるか、月額費用を上げる敷かない(解約率の低減は既に示した)

新規顧客の獲得費用の低減を考えると、効率の良い大手通信キャリアとの関係性強化の効率化、オウンドメディアの効率的な運用を考える必要がある。

これらを考えて、解約率低減は顧客に依存してしまう部分があり、顧客生涯価値を上げる(価格を上げる)のはインターネット上で顧客が他社と価格を比較したときに弱いの、新規顧客の獲得費用低減も難しいので今回は無視する。

すると、残るのは新規顧客獲得率の向上を考える場合のみで、オウンドメディアの強化か、大手通信キャリアとの関係強化、新規顧客獲得方法の実施となるからだ。



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