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東京都現代美術館「オラファー・エリアソン ときに川は橋となる」展ほか

2020.03.26, 06.12 訪問

とっても久しぶりの更新です…!緊急事態宣言が出される直前に行ってきた府中市美術館と、それが解除されてしばらくしてから行ってきた東京都現代美術館について書きます!

府中市美術館「ふつうの系譜 『奇想』があるなら『ふつう』もあります─京の絵画と敦賀コレクション」展

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「ふつう」の日本画を展示するという一見地味な、しかし聞いたことのない展示のコンセプトに惹かれて、訪問を決意しました。展示の最初に「ふつう」ではない日本画を展示し(曽我蕭白の『騎驢人物図』には得体の知れない恐怖を感じました、これはマジで)、比較対象がわかったところで「ふつう」の日本画を流派および時代別に見ていく、という展示構成になっています。作品の大半には見どころなどを紹介した解説がついていました。例によって解説を読んで作品を観て、という風にして観ていったのですが、「ふつう」の日本画には確かに強いインパクトというものはなくて、まあ言ってしまえば地味なんですけど、その地味な絵の中に、「ふつう」ではない日本画は持っていないふんわりとした良さというか、控えめな美しさがあることが実感できました。実感できるような解説だったということでもあります。キラキラの力強い日本画(狩野永徳とかその辺を想像していただければ)も嫌いではありませんが、静かな庭に面した部屋に飾ってのんびり眺めるならやはり「ふつう」の日本画にしたいですね。それにしても円山応挙の『狗子図』、可愛かったなあ

この展示は構成と解説がよくできていて面白かったのですが、このような面白い展示ができるほど一貫したコレクションを、東京から遠く離れた福井県の敦賀市にある博物館が形成していたということにも感心しました。今手元の図録で仕入れた知識ですが、かつての敦賀市長が芸術に対する理解のある人で、博物館の規模の割にかなりの予算を持たせてくれていたそうです。学芸員の審美眼がコレクションの形成には必要ですが、現実問題としてお金がないとその審美眼はミュージアムで目に見える形として現れてきません。それから、目に見える形にするためにはスペースも必須。敦賀市立博物館はスペースが圧倒的に足りないがためにコレクションの良さを発信できないでいたそうです。公立ミュージアムの運営は難しいですね。でも、この展示を見て敦賀市立博物館に俄然興味が湧いてきました。機会があれば行ってみたいです。

府中市美術館「ふつうの系譜 『奇想』があるなら『ふつう』もあります─京の絵画と敦賀コレクション」展
会期: 2020年3月14日(土)~5月10日(日)(終了)
 ※作品の大幅な展示替えを行います。
開館時間: 午前10時から午後5時(入場は午後4時30分まで)
休館日: 月曜日(5月4日は開館)
観覧料: 一般 700円(560円)
 高校生・大学生 350円(280円)
 小学生・中学生 150円(120円)
 ※( )内は20名以上の団体料金。

東京都現代美術館「オラファー・エリアソン ときに川は橋となる」展

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観に行こうと思ったきっかけは、”ときに川は橋となる”という副題。綺麗な言葉ですが、一体何を意味しているのか気になりました。オラファー・エリアソンは環境問題に関心のあるアーティストだそうで、展示されている作品はどれも自然をモチーフにしていました。水や光を用いて表現された作品はどれも涼しげで、夏に見るのに相応しい展示だと思いました。いや、確かに会場は涼しいのですが、見た目に涼しいと感じたんです。そう、ガラスでできた風鈴を見たときに感じるあの涼しさ。強い問題意識をそのまま伝えるというより、柔らかく、けれど確かに問題の所在(この場合だと、自然環境に問題が発生している)を示す感じ、と言いますか…。まあとにかく、あまり肩肘を張らなくても、穏やかな気持ちで見られる良い展示だと思います。ちなみに最初に挙げた副題ですが、これについてエリアソンは「まだ明確になっていないことや目に見えないものが確かに見えるようになるという物事の見方の根本的なシフトを意味しています」と語っています。

東京都現代美術館「オラファー・エリアソン ときに川は橋となる」展
会期: 2020年6月9日(火)~9月27日(日)
開館時間: 10:00-18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
休館日: 月曜日(8月10日、9月21日は開館)、8月11日、9月23日
観覧料: 一般 1,400 円
 大学生・専門学校生・65 歳以上 1,000円
 中高生 500円
 小学生以下無料

東京都現代美術館「ドローイングの可能性」展

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前述の「オラファー・エリアソン」展と同じ日に見ました。言葉との関係を示唆していたのが私のアンテナにビビビときました。それぞれのアーティストが手で描いた作品を中心に展示してあるのですが、必ずしも紙の上に描かれたものではないし、絵具を使っているわけでもないです。絵でさえない作品もありました。でも、アーティストがその手で”描いた”ことに変わりはありません。どの作品も、コンピュータでは(まだ)表現できない擦れや解れが魅力的でした。ちなみに、先ほどの展示とは違って、見ていて痛みを感じる作品もありました。写真には撮りませんでしたが、石川九楊と戸谷成雄の作品です。細いのが理由の全てなわけはないのですが、描かれた線が鋭くて心に刺さりました。ちなみに写真は盛圭太の作品です。写真ではあまり伝わらないと思うのですが、紐で描かれています。

東京都現代美術館「ドローイングの可能性」展
会期: 2020年6月2日(火)~6月21日(日)
開館時間: 10:00-18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
休館日: 月曜日
観覧料: 一般 1,200 円
 大学生・専門学校生・65 歳以上 800円
 中高生 600円
 小学生以下無料

久々にミュージアムに行くことができてとても嬉しかったし楽しかったのですが、油断した頃にやってくるのが病気の怖いところ…。自分の楽しみと感染のリスクを天秤にかけながら、という生活はまだ続きそうですね。


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