「コスメ」

 とある会議で「コスメ」という単語が出てきたとき、私はそれを空想のお話でしか存在し得ない妖精のように感じた。そう思ったのは自分が化粧品のことを「コスメ」とあまり言わないからで、言った人物が化粧と何の関わりもない人生を送ってきたはずだからだった。使い慣れない言葉を使ってる、と思った。
 あんまり「コスメ」って言わなくないですか。自分だけがそうで、みんなコスメって思ったり、言ったりしてるの? 少なくとも私は今まで人生で化粧品のことを「コスメ」と呼んだことはないと思う。それよりかは、オーガニック系の化粧品を扱うお店「コスメキッチン」の方が使うし、存在がはっきりしている感じがする。(デパコスはデパコスで定着しているので、コスメにはカウントしない。)
 コスメ単体だと、救急箱が頭に思い浮かぶんだけどそれにはピンクの十字が描いてある。プラスチックの白いvanity case。語感から薬用の化粧品を連想させる。コスメは特定の化粧品を指さず、おそらく総称。だから、グロスのベトベト感や、アイシャドウのラメラメ感がない。薬用パウダー止まり。ライト。ちなみに「化粧品」はもっと重量感がある。

 今日は大学時代に使っていたマックのリップをひさびさにつけてみたら全然似合わなくてびっくりした。当時は、ウェルチの葡萄ジュースみたいな色の濃いリップをしていて、自分でもしっくり来ていた。当時の写真を見返してもしっかり似合っている。だけど、今日の自分は変だった。それが少しかなしい。自分の今の好みがそれではないという事実とは別に、似合いたかった。今はヌーディなやつをつけるのにハマっていて、化粧の仕上げにファンデを軽く唇に乗せて、それにリップを重ねるのが好き。

 化粧のテイストは大きく変わらないけど、趣向は変わる。最近は化粧するようになってから初めてチークがいいなと思うようになった。歌手のサブリナ・カーペンターにハマって、彼女のチークがかわいいと思ったのがきっかけ。影響されている。それまでは、たいていチークをしてる人を見ると、チークしか入ってこないから避けていた。チークしか入ってこない状態の人は、チークを付けすぎている。チークが入ってこない人がチークをしている場合もあって、それはあまりにも自然だからチークに気付けない。そういう仕組み。この前、友人が少し早い誕生日プレゼントにおそろいのチークをくれた。うれしかった。


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