見出し画像

「デスマッチを観たことがないなんて、人生半分損してます!」

「最強レスラー数珠つなぎ」を刊行し、自著出版という夢を叶えたライターの尾崎ムギ子。しかし、順風満帆とはいかなかった――。書くことに恐れを抱き、負けてもいないのに突然の引退宣言、さらには復帰劇で、周囲を大いに困惑させた。「それでも書いて欲しい」。そんな編集者の執着じみた思いから、なんとか本連載が始まったものの、氏のジェンダー観に絶句・動揺した編集者は「物語を分ける!」と、マイクパフォーマンスさながらの大言壮語してしまい……。プロレス往復書簡4戦のゴングが今鳴る……!!!!

前回のプロレス往復書簡ンンン!!

ムギ子さんへ

 前回、私は特殊能力を発動して物語を分けると豪語してしまいました。自分で自分を苦しめました。正直見切り発車だったので、うまくいかなかったらどうしよう、と、夜中に目が覚めて不安になって眠れなくなったりもして、自分は果たして一体何をしてるんだと思います。

 最初にあのまどマギ展開を持ちかけたとき、ちょっと(というか実はだいぶ)酔っぱらっており、これやったら・できたら、めっちゃおもしろいじゃんと思い、言ってしまいました。私はまだ特殊能力を安全に発動できるほどの経験値もセンスもないにもかかわらず、です。でも。言葉にすることでもしかしたら叶うんじゃないか? そんな希望を抱いてしまい、言ってしまったのです。

 私は、岡崎体育さんが大好きです(それもあって、「編集黒田」ではなく、「黒田編集」と名乗っている)。いつも夢を口に出すことで実現してきた、最高にカッコいい同い年です。「30歳までにさいたまスーパーアリーナでライブするんだ」と豪語して、マジで叶えました。すげえカッコいいなと思いました。当日、私はライブ会場に行き、泣きながら公演を観ました。こんなすごいものを見せてもらったんだから、私もこの人のように、とにかくやりたいことは豪語して全力で実現せねば、と思ったあの日が懐かしいです。

 というわけで、物語を分けると言ったとき、何も段取りできていなかったので、私は非常に不安でございました。不安ですが、私が不安な素振りを見せるのは一番良くないので、無理にでも毎日4キロ走ることで、現実逃避をしておりました。

 その日も、iTUNESで「怒りの獣神」を聴きながら、「走れ! 走れ! 明日へ走ぃ~れ~ぇえ!」とめちゃ息切れしながら歌い走っておりました。すると、「怒りの獣神」が突如再生停止、かわりに着信音が鳴り響きました。走っている間は電話に出ない主義の私ですが、そのときは何か感じるものがあり、電話にでました。

 電話先の相手はかく語りき。

「……結論から申しますと……、企画が通りました」

 電話口のお相手は、某WEB媒体の担当さんです。耳を疑いました。

まさか!!!!!!!!! 

 というわけで、「強い女たちに話を聞きに行く世界線」こと、「最強レスラー数珠つなぎ 女子レスラー編 女の答えはリングにある(仮)」を始めます。最初はもちろん、あの選手でしょう。誰だかわかるでしょう、ムギ子さん、読者の皆さん?

 この企画が通ったのは、ムギ子さんが信じて私に委ねてくださったからです。私の編集者としての熱量がすごいとかじゃないです。良い文を書くムギ子さんがいるからこそ、わたしは覚悟を決めて動こうと思いました。

 前回、ムギ子さんが男性嫌悪について語ったとき、私だけど私じゃないなこの人は、と不思議でした。強い女たちに話を聞きにいくことの意義を強く感じ、こうした展開を実行することにしました。

 実は私は、男性に対する嫌悪感はあります。性的な部分というよりも、完全に偏見ですが、きったないなと思っています。もうこれ完全に偏見なので、誰に怒られても何も言えません。手は洗わないし、生肉切ったまな板でサラダ用の野菜切ろうとするし(いずれも、私に相撲をしかけた奴の所業なので、すべての男性がそういうわけではないですよね、スマン男方)……。だから、ベースで男性を汚い人達だわなと思ってしまっていて、スマヌ。

 そして、デスマッチ。ついに来てしまいましたか……。

 わたしはデスマッチを見たことがありません。なぜなら怖いので。最初にデスマッチという言葉を知った時に、マジでガチでどちらかが死ぬのかと思い、「そんなん駄目だ! 刑事罰確定じゃないかあああああ!!!!」と混乱しました。

 でも、もしかしてデスマッチって「ゴールデンカムイ」なのかな? 「悪魔のいけにえ2(※1じゃない)」なのかなあ? と最近思ってきています。いや、こんな軽はずみな発言をしてはいけないのかもしれません……。皆さま怒らないでください、私という人間は基本的には愚かですし、敗れ果てているので、炎上なんかしたらお布団から出られません……(と、愚かにも予防線を張る)。

 ということで、ムギ子さん。私は次は、大日本プロレスを観に行ってきますね……。。。(大丈夫かな、生きて帰ってこれるだろうか)

黒田


黒田さんへ

 ありがとう! わたしなんかのために頑張ってくれて。眠れぬ夜を過ごしてくれて。本当にありがとう!「あなたは書くだけです」とだけ言い残し、さらりと連載を決めてきちゃうなんて、世界一カッコいい編集者さんです。岡崎体育さんが知ったら、絶対「カッコいい!」って言うと思います。

『SLAM DUNK』コミックス30巻、山王戦終盤――。湘北高校は“王朝”山王工業に驚異の追い上げを見せます。試合時間残り2分を切り、僅か5点差。チャージドタイムアウトでベンチに入った瞬間、湘北キャプテン・赤木剛憲の目から大粒の涙がこぼれ落ちます。入学当時から全国制覇を目指していた赤木。しかし、赤木の志に賛同するバスケ部員はいなかった。「強要するなよ、全国制覇なんて。お前とバスケやるの息苦しいよ」――。かつての仲間に言われた辛辣な言葉がよぎります。

 そんな赤木の涙を見て、唯一の理解者である木暮公延は思う。

「味方の頼もしさに一瞬、心が緩んだのか……赤木……」
「…ずっとこんな仲間が欲しかったんだもんな……」

 ライターを目指して、新卒で入社した会社を2年3か月で退職したとき、わたしには味方がいませんでした。コネもない。経験もない。才能もない。上司や同僚に「絶対、いつか本を出します!」と意気込んで見せたものの、その言葉を信じた人はだれひとりいなかった。ライターになってからは、自分でも自分の言葉が信じられなくなりました。本どころか1,000文字のWEB記事すら満足に書けないわたしには、到底無理だと思うようになっていったんです。

 それでも本を出版できたのは、黒田さんの先輩である編集Mさんのおかげです。Mさんだけが、わたしの書く記事を「面白い」と言い続けてくれた。そしていま、黒田さんがわたしに「書いてください」と言ってくれる。これまで「書かせてください」と言ったことしかなかったわたしに、「書いてください」と言ってくれる人がいる。それがどれほど感動的なことか、想像できるでしょうか。

 わたしは書きます。黒田さん、あなたという頼もしい味方ができたから、わたしはきっと書けると思います。

 さてさて、まだまだ続く、ムギ子と黒田の“男性嫌悪”トーク!「手は洗わないし、生肉切ったまな板でサラダ用の野菜切ろうとする」……それは35億分の1の男性がたまたまそういう人だっただけで、それが原因で男性に嫌悪感を抱いてしまうのはもったいない。というか、原因はそれだけなのでしょうか?

 前回も書きましたが、わたしは根本的に男の人が好きです。「性的に受けつけない」というだけで、霊長目ヒト科オスという生き物は大好きなんですよ。そこがもしかしたら、わたしたちは決定的に違うのかもしれない。黒田さんと接していて、なぜそんなにも男性を敵視するのか、いつも不思議に思っています。否定も肯定もしませんが、ただただ不思議です。

 なんと、デスマッチを観たことがないとのこと……!「梅干しが苦手だなんて、人生半分損してるよ!」的なムカつくノリで言いますが、デスマッチを観たことがないなんて、人生半分損してます!(ちなみにわたしは梅干しが苦手です)。

 デスマッチの美しさを知ると間もなく、「もうデスマッチしか愛せない……」という蜜月に突入します(※以下、ムギ子調べ)。「どうしても血を生で見たい!」という衝動を抑えきれず、チケット代が家計を圧迫し始めるのでお気をつけください。最初は「蛍光灯なんて怖い!」と思っていたのが、画鋲、カミソリ、ルアー、竹串、電動ノコギリ、どんとこい! 注射器が頬を貫通するときはさすがに涙が出そうになるものの、凶器はエグければエグいほどデスマッチは面白い!

 しかしそんな”デスマッチファン過激派”な時期を過ぎると、「蛍光灯1本の闘いが一番美しい」と感じるようになります。いやむしろ、凶器を使わなくたっていい。血を流さなくたっていい。それはもはやデスマッチとは呼ばないかもしれないけれど、デスマッチファイターがデスマッチスピリットを持ってリングに上がる限り、その試合はきっとデスマッチなんです。

 果たして、黒田さんはデスマッチ沼に落ちるのか!? 楽しみにしていますよ、フフフ。

尾崎ムギ子


ムギ子さんへ

「来るぞ来るぞお~~!」
いや待って、何が来るんですか!?!?!? 私は新木場で怯え果てておりました。

 先日、大日本プロレスを拝見しました。当日券で入りました。チケット売り場の方に、「最前列も空いてますよ♪」と言われ、「お! そうですか! じゃあ最前列にします!」と、食べられないのに激辛でカレー頼んだ時のようなイキり具合でした。

 チケットをもって入ろうとしたら、コロナの影響で住所とか書いた紙を提出しなければならず、その紙を書きにいくために踵を返したとき……アブドーラ・小林さんが目の前に立っていたんです……。すごいジト目でした……。やはり、私はヤバいところに来てしまったのではないか……。生きて帰れるのか……。こんなに三点リーダばかり使っていていいのか……。

 しかし勇気をふり絞って紙を提出、なんとか会場に入ると、その瞬間ゴングが鳴って、飛び上がって驚いてしまいました。でもまだまだ、行けるところまで行くんやワシは! 最前列にたどりつきました。

 デスマッチは2試合組まれていました。
1試合めのデスマッチ。見られないところは顔を背けてなんとか最後まで見ました。みなさん、破傷風等に気をつけてなさって、すぐにマキロン!マキロン!マキロン! 

 2試合めのデスマッチ。
 出たよ、蛍光灯! わたくし、本当にこれが怖くて怖くて、週プロも蛍光灯が見えた瞬間に「ヒエ!」と声あげながらページを飛ばす始末。でも今日は。逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ…最悪目をそらして耐え忍ぼう。
 そんな私に渡されたのが、ゴミ袋でした。

「!?」

 隣の男性にさすがに聞きました。
「あのう……これってどうやって使うんですか?」
 その方、本当に良い方でした。「そんなのも知らねえの?」みたいなのはまったくなくて(というか、会場の皆さんが本当にすごい優しそうだったんですが……なぜだ、なぜかわからないけど素晴らしい)、「えっと、こうやって飛んでくる破片から自分をかばったり、荷物が汚れないようにしたりします……」

「!?」

 ちょっと待って、こっち飛んでくるんですか? ここで会場アナウンス。

「蛍光灯の破片が飛び散る恐れがあります。目をそらさずご覧ください!」

 おいおいおいおい! おーい!!!!!
 目をそらして耐え忍べないじゃないですか……。そして、始まってしまいました。


「来るぞ来るぞ~!」
 え? 何が!? 待って! 待って! 待ってえええええ!!!

 ッっぱあーーーーん! ッっぱあーーーーーん!

 蛍光灯って、割れるというか、破裂するんですね。未だに鼓膜にも網膜にも残っています。


 試合後。「デス」なマッチをしていたレスラーのみなさんが、ニッコニッコしながら物販に出てきていて、もう私、こんなにあったかい安らぐところと「デス」の共存に、困惑しきりでした。新木場駅まで歩きながら、「ああ~ビビったあ、ビビったよお」とつぶやいてました。怖いけど、また見に行きたいなあと今は思っていますが、でもやっぱり怖いですね。まんじゅうこわいになるかな、いつか。デスマッチこわい。

p.s. えっ、私、男性を敵視してますか? 男の人ってカワイイ! とかはないかもですね……。いや、カワイイ!って、オタクとしてキャッキャなるのは、男性も女性もいますね……。コズエンの皆さんなど、「あらやだカワイイ!」ってなりますし、男性レスラーだと誰でしょう、例えば後藤洋央起選手などすごく、カワイイ要素ありますよね。K-POPアイドルだと最近はスキズのI.Nなんかはいつもニコニコしていてカワイイ、レコメンドです!

黒田

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?