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「ナナカードゲーム」と「アニマルコレクティング」を比べてみた!

ゲームマーケット2021秋からもうすぐ3週間が経とうとしています。制作者としては、次のゲームマーケット大阪だったり、そのほかの色々なイベントに向けて次の一手を考えたり、あるいはゲームマーケット2021秋で好評だったゲームの販路をどうしようか、などと考えているところですね。

かくいう自分も、次の「アナログゲームフェスタ」に向けて動いているとは言いつつも、「アニコレ(アニマルコレクティング)が遊ばれてないかな?」と毎日気になって日々twitterで検索しています。とはいえ、なんせ頒布数が50にも満たないので感想を発見することなどなかなかできず、若干寂しかったりしています。もっと頑張ろう!

さて、そんな中、twitter上で「面白い!」「傑作だ!」という感想を目にするゲームがありました。そう、「ナナカードゲーム」です。(他にももちろん色々なゲームの「面白い!」という感想を見ますが、今回のnoteの主旨のため挙げさせていただきました)

こちらの「ナナカードゲーム」、作者はグループSNEのコンテスト受賞作「ギャンブラー×ギャンブル」などで知られる宮野華也さんです。

実は、たびたびタイムラインを流れる「ナナカードゲーム」の感想を見て、そのルールを断片的に見ていると拙作「アニマルコレクティング」と、共通するようなコンセプトや要素があるように思ったので、今回実際に購入して「ナナカードゲーム」を遊んで(ゲムマでは行った時にはすでに売り切れでした…)、2つのゲームを色々な点から比べてみました。
(以下は、HAL99さんのナナの感想ツイートです。「オーサー」はまさに「アニコレ」の原型でもあります)

もちろん、売り上げなど比べるまでもなく「ナナカードゲーム」には圧倒的に敵いませんので、そこは置いておいて、どんなところが共通しているな、こんなところは違うなということを書いていきたいと思います。(おそらく違うところが売り上げに直結しているのでしょうけれども…)

当たり前ですが、まったく別のゲームです!
あくまで、僕が主観として感じたことを書いていきます。というのと、「ナナカードゲーム」が優れているということはどんどんアピールしていきますが、それと比較して「アニマルコレクティング」がよくないということを書こうとするものでありませんし、もちろん「ナナカードゲーム」を貶めるものでもありません。何重にも予防線を張っていますが、よければ以下ご覧ください!

1、内容物

「ナナカードゲーム」と「アニマルコレクティング」の共通点といえば、どちらもカードゲーム、カードしか使わないゲームであるということです。

「ナナカードゲーム」には、「1」から「12」までの数字が描かれたカード3枚ずつの合計36枚のカードが入っています。
一方、「アニコレ」には、「動物」が6種、各4色ずつ描かれた24枚のカードと「ネコ」のカード1枚を合わせた25枚(厳密には、プレイを補助する「質問カード」もあります)が入っています。

2つのゲームとも大体同じくらいの価格帯(ゲムマ価格で1,500円、一般流通で1,900円前後)というのも似ているところかなと思います。「アニコレ」の方がカードの総枚数が少ないので、1枚あたり若干割高ですね。
カードのサイズは、「ナナカードゲーム」の横幅が若干「アニコレ」のカードより短い程度でほとんど変わりません。

また、「ナナカードゲーム」にはカード表面にエンボス仕様がなされており、商品としての価値を高めるものになっているなぁと感じます。「アニコレ」は、以前も書いたことがありますが萬印堂さんの「小ロット応援パック」を用いて印刷していることがあり、こういったカスタムメイドは難しかったのでこの点は違いとしてあります。

2、対象年齢

「ナナカードゲーム」は6歳以上、「アニコレ」は10歳以上です。
こうしてみると、ここは歴然とした差がありますね。そして、この部分はアートワークやゲームデザインなど様々な部分と関連してきます。

3、イラスト・アートワーク

「ナナカードゲーム」は、別府さいさん(@allotment31)のデザインワークになります。ナナ製作委員会(@nana_cardgame)というアカウントでは、「ナナカードゲームのデザイン」というまとめで、1枚1枚それぞれの数字のカードをじっくり見れます。どれも可愛くて、素晴らしいですね!「7」のカードは初回生産分に限り金の箔押しまで!!箱にも特別な箔押しがなされていますし、ほんと、商品としての価値が高いです。
箱の方向性や、カードに描かれている動物のテイストから、子どもにも手を取ってもらって遊んでもらうことを目指したデザインである、ということが伝わってきます(違っていたらすみません)。

一方、「アニコレ」はというと以前のnoteでも書きましたが、基本的には商用可能な動物のシルエット画像をカードのメインのイラストとして用いています。ゲーム中に、「動物」と「色」の2つの要素が重要ですのでできるだけカードに占める面積を大きくするためシルエットにした、というのは以前書いた通りです。
実は背景やUIはデザイナーさんにお願いする前は、真っ白で簡素なものだったので、かなりよくなりました。(今と動物も違います)

デザイナーさんに渡した「アニコレ」のカードイラスト
「アニコレ」製品版のカードイラスト

とても良くなったので、今ではお気に入りですが、子どもたちが見て惹かれるかというと、そこは分が悪いと思います。致し方なし。箱絵もこれらのシルエットを並べたものですので、やはりターゲットとする年齢の差がアートワークの差に出ているかなと思います。
「売り上げ」への影響として、商品の「本物っぽさ」というところは敵うべくもなくという感じですね。

4、ゲームデザイン

さて本題です。今回この記事を書こうと思った1番の理由に当たる、ゲームデザインの共通点と相違点をいくつかの視点にわたって書いていこうと思います。

コンセプト

「ナナカードゲーム」は、ボドゲーマにサークルMob+さん(宮野さんのサークル)が書かれているように、ゲームの進め方としては「神経衰弱」ではありますが、体験としては神経衰弱の「記憶」に加えて、「推理」を楽しむゲームであるように思っていました。

一方、「アニコレ」のコンセプトは、「記憶」「推理(論理的思考)」とそこに加えて「ブラフ」という要素です。

どちらもコンセプト自体は似ているように思っていました(アニコレでは「ブラフ」の要素がありますが)が、実際に体験してみたところ、そのコンセプトへのアプローチがかなり異なっているように思いました。

「ナナカードゲーム」で遊んだ写真(初めから「7」が3枚!!)

「ナナカードゲーム」は、「神経衰弱」からのアプローチというのを強く感じました。同じ種類(数字)のカードを集めるというところからは、「オーサー」「カルテット」味は確かにあります。ですが、どちらかというと「神経衰弱」の記憶力の高い人が結局は勝つというどうしようもなさに、「運」の良さを残しつつ、その「ガチ」感を薄めてくれているようなプレイ感でした。

少し横道にそれますが、アプローチとしてはクニツィア先生の「ゴールド」のように、いかに「記憶」によりすぎることなく、同種カードを集めることを楽しむか、ということを狙って作ってあるように思います。

一方で、「アニコレ」の方はスタートが「オーサー」からのアプローチでした。「オーサー」の抱える問題点を解決しつつ、「記憶」「推理」のゲームとして、それを深めるように作っていったように思います。
基本的に「運」による揺らぎはないどころか、「ネコ」カードによる「ブラフ」要素を足したことで、「駆け引き」の要素をも強めたデザインになりました。

「似ている(共通点だ)」と思っていたコンセプトですが、そのアプローチには違いがあって、それらが各ゲームのルールによって引き起こされていたことがわかりました。以下、細かく相違点についてみていければと思います。

カード構成

「ナナカードゲーム」は、「1」から「12」までの数字カードが各3枚という構成です。ゲームには、「数字」という属性しか登場しないというのがポイントです。

一方、「アニコレ」は「動物」と「色」という2つの属性が登場します。「動物」は6種、「色」も6色登場しますが、動物ごとに異なる4色が配されているので、カードセットとしては独特、かつ覚えづらくはなっています。

1つの属性について記憶しておくことと、2つの属性について記憶しておくことを比べれば、当然前者の方が覚えやすいです。とはいえ「アニコレ」でも、4枚セットを作るという目的達成だけを考えれば、基本的には「動物」という属性1つを記憶していけば良いようにはなってはいます。(数字の「1」を覚えておくことと、動物の「ライオン」を覚えておくことを比べると、人によってどちらが覚えやすいか一概には言えないですね。)

手番にすること

「ナナカードゲーム」では、誰か(自分も含む)に「最大か、最小のカードの提示を求める」か、「場札をめくる」のいずれかを異なる数字のカードが出されるか、3枚セットになるかまで続けます。

一方、「アニコレ」では、他のプレイヤーに「動物か、色を指定してそのカードを持っているか」を尋ねます。失敗するまで、尋ね続けることができます。

「誰かに尋ねる」というところは共通していますが、尋ねる選択肢の幅の広さがかなり違います。一見すると、「アニコレ」の方が幅が広くて当てが付かなそうに見えますが、中央の場札があるという点では「ナナカードゲーム」もそれなりに選択肢が多くあります。
基本的に「誰かに尋ねる」も「場札をめくる」も、初めの段階では手がかりがないため「運」になりますが、「ナナカードゲーム」では尋ねられた人はカードを「公開する」ため、他プレイヤーに情報が共有されることがその後の「推理」に有用です。
「アニコレ」では、当事者同士は完全な情報のやり取りがありますが、例えば「ライオンが移動した」ということは、他プレイヤーに情報が共有されたとしても、「何色のライオンが移動したか」はわからないので、はっきりした情報が開示されないのが特徴的です(厳密に言うと尋ねる方は持っているカードについてしか尋ねられないため、その情報は他プレイヤーにも開示される)。とはいえ、先に書いたようにとりあえず「動物」を追って記憶していく、という戦略は有効なので「色が分からなくてもなんとかなる」のかもしれません。

「自分の番がどこで終わる」か、というのも2つのゲームで大きく違います。「アニコレ」では、他の人からカードを得続ける限り手番を続けることができますが、一方で他のプレイヤーに対して情報(自分が対象カードを持っているという情報)を出し続けることになります。一方、「ナナカードゲーム」は失敗せずに3枚揃ったとしても、連続手番にはならず次のプレイヤーの番に移ります。このあたり、ゲームのテンポの良さやカジュアルさに一役買っていると思いました。

カードの移動

「ナナカードゲーム」では、プレイヤー間のカードの移動はありませんが、「アニコレ」ではそれがあります。この部分、かなり「記憶」への負荷が「ナナカードゲーム」と「アニコレ」で違う部分と思います。

「記憶」には、「記銘」「保持」「再生」という3つの段階があります。「記銘」は「どうやって覚えるか?」という段階を指します。「保持」は「覚えておくこと」、「再生」は「思い出すこと」をそれぞれ指しますが、「記憶」への負荷といった場合、それぞれの段階で考え、それらの総合的な負荷の大きさと考えることができます。

「記銘」への負荷は、覚える属性の多さや、種類の多さに依存します。先にあげた「カード構成」に加え、ここであげる「カードの移動」が入ってきます。
実は、「アニコレ」でも「ナナカードゲーム」でも、カードの色・動物や数の大きさなど位置情報を持たない「言語情報」に加えて、「誰が」とか「どこに」という「位置情報」も覚える必要があります。しかし、プレイヤー間のカードの移動によって、「誰が」という情報が頻繁に動いてしまうので、特に「アニコレ」でのカード情報の「記銘」が難しくなっていると考えられます。

また、「保持」の難しさも「アニコレ」の方が高いです。他プレイヤーの動向(「ナナカードゲーム」で言うと、誰かが3枚組を作ることで場札や他プレイヤーの手札の構成が変わる、「アニコレ」で言うと誰かにカードが移動する)によって、状況が変わるのはどちらのゲームでも一緒なのですが、自分の番が回ってくるタイミングが一定ではないのが「ナナカードゲーム」と異なります。
「自分の番までアレを覚えておけば大丈夫」というのは、1つの戦略になり得ますが、実際その場面がやってくるまでにかなり時間を要してしまったり、いざその状況になってみると状況が変わってしまっていることがあって、この後の「再生」を難しくしています。

最後に「再生」に関わることとして、「ナナカードゲーム」が圧倒的に有利なことがあります。それが、「3枚組を作る」ということです。「アニコレ」が「4枚セット」であることに比べて、「3枚で良い」ということは大きなアドバンテージです。
また、「アニコレ」では「動物」と「色」を交互に尋ねさせるということが「再生」(思い出す)ことをいっそう難しくさせている可能性もあります。

総じて、「カードの移動」があることで「アニコレ」における「記憶」の負荷がとても大きくなっていることがわかりました。とはいえ、「ナナカードゲーム」における場札もある意味で、「位置情報」と「言語情報」という異なる2つの属性を覚えておくことを求めるので、実際にプレイしてみて、想像していたよりは記憶負荷の差があるようには感じませんでした。

「運」の扱い

記憶負荷の差がそこまでないと感じたのに、自分自身「アニコレ」と比べて、「ナナカードゲーム」を遊びやすい(テンポが良い、カジュアル)と感じたのは、「運」の扱いにその要因があります。

2つのゲームで「運」の扱いについて考えてみたいと思います。
例えば「アニコレ」でゲームに参加しない第三者が、ゲームに参加している全員の手札を観察し、プレイヤーの誰かに加担することが可能であれば、そのプレイヤーを容易に勝たせることが可能です。
情報は、プレイヤー間で秘匿されているけれど、部外者である第三者の視点に立てば、最善の策を取ることできるので、勝利への道筋=正解のようなものが実はある。そのため、「(記憶力が人並外れて高い)理想的なプレイヤー」がいれば、ゲームの用意されたパズルはいずれ解かれてしまいます。その意味で、「アニコレ」はゆくゆくガチ感の強いゲームになることは否めません。(実際、そういった点指摘を受けていました。)

一方で、「ナナカードゲーム」では、少なくとも場札の内容全てが公開されるまでは、第三者の視点からゲームに参加したとしても、特定のプレイヤーをいつも勝利に導くことはできなくなっています。
言い換えれば、場札のめくり運がよければ(意図せず)勝ててしまうこともあり得ることになります。

こういった点が、「ナナカードゲーム」を少しカジュアルにしているように思います。実は、「アニコレ」でもガチにならずにカジュアルにしようとして「運」を取り入れた工夫があるので、次の話題で書いていければと思います。

勝利条件

最後の比較点は、「ゲームにおける勝利条件」です。これは、2つのゲームで似ているところもありつつ、違うところもあります。

まず、「ナナカードゲーム」は、「3枚組のセットを3組作る」か、「2枚組のセットを作り、そのカードに書かれた数字の和か差が7」、「7の3枚組のセットを作る」です。
一方、「アニコレ」は、「4枚組のセットを他プレイヤーよりたくさん作る」か、「真ん中に伏せられたカードの動物を当てる」です。

「ナナカードゲーム」の勝利条件の1つ目、「3枚組のセットを3組作る」は、「アニコレ」で基本的に多くのセットを作るという目的とよく似ているなと思います。しかし、他の2つは大きく違います。そして、その2つがとても面白い!

まずは、「2枚組のセットを作り、そのカードに書かれた数字の和か差が7」について。「アニコレ」でも4枚組のセットの特定の組み合わせを揃える、ということを考えなかったわけではありませんが、結局各「動物」を平準化したことがあって、実装には至りませんでした。和か差を「7」というのが絶妙だと思いました。「ナナカードゲーム」では、どのカードでも少なくとも1通りは「7を作ることができる」可能性はあるので、どのカードを獲得することにも意味が出ているところはうまいなと思いました。
また、「7の3枚組のセットを作る」という勝利条件は、逆転可能性をゲームプレイの終盤まで残す、ということにすごく効果的で美しいルールだなと思いました。とはいえ、これを狙うには相応に論理的思考や記憶が求められそうですが。

すでに述べたように、「アニコレ」の勝利条件の1つ目は「ナナカードゲーム」の1つ目と似ています。しかし、2つ目は独自のものです。そして、この勝利条件が「アニコレ」を特徴づけ、ガチにもカジュアルにもする要素になっていると作者としては思っています。

というのも、実はゲームの最序盤からでさえも2つ目の勝利条件は満たすことができてしまうからです。「運」さえ良ければ「6分の1」の確率で、ゲームに一発勝利ができてしまうのです!
これは元々、1つ目の勝利条件である「4枚組のセットを他プレイヤーよりたくさん作る」に対抗する手段として、終盤の逆転要素として実装したものでした。ところが、ある意味で「記憶疲れ」のプレイヤーにとっての「逃げている」ように見せて、実は諦めない一手として機能することにもなり、カジュアルプレイという幅を持たせてくれたルールかなと思います。

まとめ

「まとめ」というまとめが書けるわけではないんですが、2つのゲームを比べてみて、改めて2つのゲームがそれぞれ持つ良さを確認できたなと思います。
もちろん、方や売れに売れまくっているゲーム、方やほんの少しの頒布数のゲームで、販売数を見ると圧倒的な差があるのですが、それでも様々な比較を通して自分の作ったゲームの良さを再確認できたことは良かったと思います。

対象年齢については上で一度書きましたが、ここまで書いてきてその差があるのは、宜なるかなと思います。一方が、「記憶」に完全によることなくカジュアルに楽しめること、もう一方が「記憶」を使って楽しむために記憶負荷を意図的にあげたこと、このあたりを反映しています。
それだけに伝搬性に大きく差はありますが、どちらも対象者に届いたらHAPPYですね!(特に「アニコレ」笑)

このnoteを読んで、「アニコレ」に興味を持ったぞ!という方、BASEにてあとわずかですが販売してますので、ぜひ買って遊んでみてください。そして、恐れ多いですが「ナナカードゲーム」と遊び比べてみてくださると、記事に書いたことを感じていただけるかなと思います。

おまけ(対象人数について)

最後に、販売数に大きく影響した(かもしれない?)と思う対象人数について書いておきます。

「ナナカードゲーム」は2〜5人で、「アニコレ」は3〜4人です。そりゃ、遊べる人数の幅が大きい方がいいですよね。
実は、「アニコレ」ははじめ4人専用で作っていて、現在より対応人数が限られていました。なんとか3人用ルールも考えたのは少しでも手に取ってもらいやすくするためでもあります。そして、今回、「ナナカードゲーム」を2人用ルールで遊んでみて、「あれ?コレはアニコレも2人用ルールで実はいけたんじゃない?」というところに至りました。

頒布してしまった段階で思いついてしまったことですが、うまいことルールに落とし込むことができたらnoteなどで公開しようと思います!

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