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相席よろしいですか?

最近ではごく稀になってしまった外でのランチ。7割がたは1人で、残りの3割は夫と2人。友人や同僚とはもう随分外食をしていない。

店に入り「1名」であることを告げて、席に案内される。カウンターが空いていれば良いのだがそうでない場合、高確率で4人席に通される。コロナ禍なのだから仕方がないとはいえ、なんだか申し訳ないような心持ちになる。内心はパーソナルスペースの広さが有り難い。もともとテーブル間の狭い店を好まなかったのもある。

最近は「相席」を求められることもあまりない。コロナ禍においてはもはやタブーだろう。4人掛けまたは2人掛けのテーブルで、知らない他人と向かい合わせで食事をするのは私にとって可能なら避けたいシチュエーションである。以前は居酒屋や定食屋、蕎麦屋などで「相席よろしいですか?」と尋ねられ、断れずに気まずい思いで味わうこともせずに急いで食事を済ませるといったことも多々あった。

1人の客の為に広い席を充てることは効率的でないのは百も承知。断ればいいのに、と思われるかも知れないが、実家が飲食店を営んでいたのでその辺りは辛いところ。相席を断りづらく思いながらも内心は妙に気を遣ってしまう。

若い頃に勤めていた会社の近くに蕎麦&定食屋があり、よく食べに行っていたがその店は4人掛けの座敷席がメイン。同僚と2人で食べていると、お昼の時間帯なので当然ではあるが有無を言わさず相席となる。盛り上がっていた会話もしぼんでしまい、ましてや恋バナなどしていた日には聞かれたくないので話題を変えるか黙って急いで食べるしかない。隣では知らないおじさんが蕎麦を「ズゾゾゾゾーー!!」と盛大に啜り、先に食べ終わったと思えば楊枝で歯をシーシーとやりゲップを一発。終いには断りもなく煙草に火をつける。それを傍でやられたらうら若き20代OLにとっては苦行以外の何物でもなかった。50代のおばさんになったがやはり勘弁願いたい。

帰省して実家の店を手伝った時、相席についてそれとなく母に聞いてみた。小さな店でカウンター数席と4人掛けテーブルが3つというレイアウトだ。カウンターが空いていないと正直1人では入りづらいかも知れない。

「女の人は大体嫌がるからね、無理にお願いしたりはしないようにしてるよ。確かに相席にすれば回転は速いけどこれは仕方ない」とのこと。なるほど、と思った。女性1人でランチを食べにくる方も多く、しかも常連になってくれるケースも多々あったので気持ちよく食べていってもらいたい、という思い。その代わり満席だと外でお待ちいただくことにはなるけれど、その方がお互いに気持ちいいだろう。

回転が悪くなるから相席でもしょうがない、という考えではいたが、余計な気を回して自分が我慢することでお店が少しでも効率よく回せるだろう、だなんてとんだ上から目線だし大きなお世話だ。勿論、店主の意向もそれぞれだろうし一括りには出来ない。けれど、口ではOKと言っておきながら内心ストレスを溜めた状態でする食事はきっと身体にも良くないし、どんなに美味しくとも二度とその店に行かない可能性だってある。だったら嫌なものは嫌、とはっきり意思表示した上でその店を愛すればいい。

とはいえ前述の通り、近頃では相席を求められることも殆どなくなった。飲食店での相席はコロナ禍で加速するように廃れていっている。間もなく宣言が解除になるが、どこまで以前のように戻れるか。相席を好まない私ですら窮屈に思える透明パネルは、どのタイミングで外されるだろうか。

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