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誤読のフランク 第12回 下宿屋

Rooming house、Bunker Hill, Los Angeles

このバンカーヒルってどんな場所かなって検索してみたら
https://www.kcet.org/shows/lost-la/rediscovering-downtown-las-lost-neighborhood-of-bunker-hill
このページとか興味深い。
ロスの市役所近くだって。

この建物、1950年代後半にしても古臭い感じがするのは気のせいだろうか? 上のリンクかWikipediaだかに、お金持ちがビクトリアン調の家を作って行ったみたいなこと書いてた気がする。なるほど、その古い建物が賃貸になって貸されてた、ということか。多分。短いキャプションでいろいろイメージあって、こういう情報って、知らない国の人にはあんまりイメージわかないし、分からないよね。

で、この写真は前の写真で雑踏に足を踏み込んだロバートフランク(と、この本を見ている僕達)が、ふっと雑踏から抜けて1人(家族だけ)になった雰囲気があって、ごちゃごちゃしたイントロから、少しずつ、視線の錯綜の果てに自分の見たことを素直に撮りだした感じもする1枚のように感じる。何にせよ、画面上の白い部分の多さも相まって、力が抜けた1枚。

構成上は力の抜けた1枚だけど。

この写真、よく見てみると、縦に三分割するとちょうど柱と人物で分離できる写真。「三分割の右側」。いままで見てきて中で、この「三分割の右側」の写真ってのは実際に多い気がしない? いや、いまこれ思いついて、面白いなと思ったので、一緒に見てみようと思う。ちょっと以下の写真を思い出してみてください。
・街の偉いさんたち
・葬式
・ロデオ
・交差点の親子
・お金持ちの男
・キャンディストアではちょうど通路
・黒人看護婦
・車の親子
・ヨム・キプル
これらの写真の力の中心というか構図的な中心は、全部「三分割の右側(のライン上)」って感じしない? 多分この後にも同じような写真が出てくると思うけど、これって、ある種の癖だよね。
写真を撮る人なら、自分の癖があっていつも気がつけば、おんなじような構図になってしまうんだよね、というのって持っているのではないかと思うのですが、どうだろう? 僕は自分の癖があって、自分では自覚してるけど、直せないというか、気を抜くとすぐ出てきてしまう。癖ってそういうものじゃないかな。ロバートフランクの癖は「三分割の右側(のライン上)」。

もひとつ、同じような癖があるのだけど、向かって左上の位置へと向かう力があって、この写真も上部中心から右へ階段が下るけど、その力が白い柱につながって、左上の暗い2階部分に視線の力が凝縮してゆく写真だと思うのだけど、同じことは、交差点の親子の写真の子供グッズのお店の白い部分にも言えるし、後の方に出てくる道の写真や、最後の写真にもつながるような気がしてる。

で、この写真、上でも少し書いたけど、今までのバラバラの対象から、初めてロバートフランクが、「今、ここ」の意味で撮った写真が出てきたというか、はじめて「自分のこと」の写真が出てきたというか。いや、写真なんて全部自分のことだよと言われたらそれまでだけど、そうじゃなくて、上手く言えないけど、構成上ここに置いたというのが重要で、そう言う時に限って、人物の顔を隠してるっていうか、見えないことによって匿名性がでてるというか、今まではパレードだったりデモだったり、非常に社会的な写真だったけど、それでも下宿屋なら、非常にインチメイトな感じがするのはなぜ?

旅をしつつ時々は1箇所に留まったのかも知れないなんて考えると、物語が生まれる。

ねぇ、いいかげん車で寝るのはいや。お風呂も毎日入りたいし。ねぇねぇ。子供だって退屈してるわよ。
ということで、不動産屋に来ました。ひと月ぐらいたけど入居できる部屋ないですか?
あ、古くていい? いいです。
じゃ、うちのお父さんが連れていってあげる。おとうさーん。この人三丁目の空き家、みてみたいって。
フガフガ。やってきたのは杖をついたスーツ姿の老人。大丈夫かいな。
ここじゃよ、と連れて行かれた家は、100年経とうかと思う古い屋敷。白塗りのペンキが植民地時代を思わせ、柱の意匠が美しいものの、ちょっと住むにはボロ過ぎない? あんたいい加減にしてよ! なんて時に撮ったのかも知れない。そんなことを考えたり(妄想とも言う)すると、もっと面白く読めるような気がする。

あんた、なにやってんの、早くいくわよ!
はいはい、わかったよ。なんて答えるロバートフランク。なんてね。

もう少し調べてみた。
Bunker Hill, Los Angeles Wiki
https://en.wikipedia.org/wiki/Bunker_Hill,_Los_Angeles

Bunker Hill Redevelopment Project In 1955, Los Angeles city planners decided that Bunker Hill required a massive slum clearance project. The top of Bunker Hill was cleared of its houses and then flattened as the first stage of the Bunker Hill Redevelopment Project to populate Bunker Hill with modern plazas and buildings. >
ってある。
そういえば、このページの始めのブログの写真を見ると、スラムの写真とかがある。そっかー。いってみれば賃貸物件として出されたビクトリアン様式の古くさい物件は近くのスラムがあるために、借り手が見つからない(もしくは安く買い叩くような客ばかり?)という話なのかな。建て壊し決まってて、一時的に借りられるだけみたいな。
日本でもありそうだよね。あちこちに。

とはいえ、結構外から見た感じ、悪くなさげ見えるんだよなあ。1940年代の映像。
https://youtu.be/7qnOmS50YpI


バンカーヒルにはエレベーターがあって、丘を突き抜けるトンネルも掘られてたって。ますます素敵。

こっちは最初のブログ?の物語。
https://youtu.be/tSBQ5lqPTtg

こっちは40年代のロサンジェルス
https://youtu.be/ZdrtJonkcug




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