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誤読のフランク 13回目 卒業式 カフェ

顔が見えないのが続く。
Yale Commencement - New Haven Green, New Haven, Connecticut

イエール大学の卒業式。ほらね、これも3分割の右側ライン。

これだけ続くとなんか意味があるように見えるけど、どうだろう。
写真の構図ばかり気にするのは下の下の所業だけど、やっぱり気になるよね。気になるのは僕だけかな?
普通に見てたらそんなに構図は気にならないけど、ロバートフランクのアメリカ人は案外というか、ものすごく構図が定石で安定している。なんつーか、今回この連載のために精読するまで僕は気が付かなかった。気にもとめてなかった。面白い。

主役の学生たちはほとんど顔が見えない。それに比べて、帽子の男は、ちょっとうんざりしてるように見える。手が顔にある仕草もどこかのページを思い出すけど、それは深読みしすぎか。手にしてるのは新聞。ちょっとわからない。誰かこの新聞と卒業式の日付もわからなかった。何がこの日の見出しかもわからない。
でもなんとなく状況はわかるような気がする。大学近くの公園かなにかで新聞を読んでたら卒業式に向かう学生たちの群れがやってきて、新聞どころじゃなくなってしまった。のか、もしかすると株で大損こいたのか。なんか、そんな顔。

イエール大学の卒業生は将来アメリカを背負って立つ若者たちと目されていた。いまもそうだよね。その若者たちとの対比の男性は苦い顔。
ことを政治的にすると、アメリカ人を描く時にアメリカの現状を作り出しているのは彼らのような、エリート層であって、一般の人達が、社会の現状を作り出しているわけではない。抵抗し、意見を出したりアイデアで乗り越えようとしたり、何とか小さな工夫を積み重ねることで、生活をやって来ている。

99% vs 1% って日本では盛り上がらなかったけど、特に今、世界中で起こってる問題の多くは富の集中によるものであって、世界のお金持ちの上から100人の財産を世界中に分配すれば、戦争なんて起こらなく、貧困なども消滅するのではないか、なんて夢想するわけだけど、とりあえず、こっちは来月のお米をどうにかしなきゃならなくて、仕事もない、子供も泣いてる。ああ、どうすればいい? うちには年老いて寝たきりの婆さんがひとり、腹を空かせたガキが7人もいて、あしたの米の心配ばかり、来月の支払いがかさんでて、ああ、貧しいものは死ぬしか出来ないのか、一家心中しかない。エリートさんよ、どうにかならんもんかね。うちには年老いて寝たきりのガキが7人いて腹ぺこの婆さんが。。。ってこれ何の落語のネタだったっけ。丈夫であったかな花色木綿、だったかね。

で、これ、パレードの類型なのかなって思う。はじめてパレード(群衆)を見ている人と共にパレード(群衆)が一緒に写っている。新しいね。

縦横違うけど、白黒比率はどちらかを反転すると、前の下宿屋に似通ってる。

この時(1955年)の卒業生の同窓会写真。2015年で80半ばだそうだ。
https://medicine.yale.edu/alumni/ysmnews/article.aspx?id=9602

ロバートフランクとサンユー http://junquonimura.jugem.jp/?eid=110
この記事面白い。イエール大学とロバートフランクの繋がりを探していて見つけた。サンユー覚えとこっと。



カフェ Beaufort, South Carolina

で反対の黒人の赤ん坊。二つ目のジュークボックス。
前のジュークボックスは少年たちが周りを囲んでたけどこっちは赤ん坊が(たぶん寝起き?)ひとり。
これも3分割の右側ライン。前の写真の手前のおじさんの位置に柱。すっと下りて赤ちゃん。
ジュークボックスがデカい。画面左側を占めている。
光が回ったフローリングの床。なんとなくジュークジョイントが思い浮かべられる。もしかして、このカフェはかつてジュークジョイントだった建物が、いまカフェとして使われているのだ、と言えなくもない。そんな雰囲気がある。

ジュークジョイントは昔、主に南部の綿花畑にあった今でいうライブハウス。多くが小さな簡素な小屋で、夜になると音楽と酒が楽しめたという。南部の黒人達が綿花畑で働いた後、夜に憂さを晴らすために、集まり、いわゆるレイスミュージックの生まれた場所と言われている。
この写真も夜な夜なギターを抱えたブルースミュージシャンがやってきてただろう、なんて、イメージが湧くような床。西部劇でバーのシーンの床がこんな感じだったよね、なんて思うのはある意味正しいと思う。
当時、ロバートフランクがブルース周辺の音楽に詳しかったかどうかは知る由もないが、後年、ストーンズのムービーも撮ってたからまったくの接点がないとも言えないけど、この当時はどうだったかなんて、やっぱりよく分からない。
でも、この写真を撮った意図がかつてのジュークジョイントにあったとすればまた違った意味が生まれる。
ジュークジョイントでは生の音楽が演奏されていた。でも今は(1950年代後半)、そこにジュークボックスがある。グローバリズムなんては言わないけど、音楽は大量生産で、どこでも同じ音で楽しめるような時代がきたのだ。

流しのミュージシャンは居なくなり、ジュークボックスが置かれる風景。
ウチの母がね、建てたんよ。ここは。去年子供が生まれて戻ってきたら、使ってないじゃないの。だからカフェとして開いて、これからやっていこうと思っとるんよ。今風でいいでしょ。それにね、今はね、これがあるからさ、好きな音楽かけられるよ。新しいの奮発したんよ。あんた何が聞きたい?

ジュークジョイントに関しては例えば映画「クロスロード」の最後のギターバトルのシーンとか、マンガ「俺と悪魔のブルーズ」とかに出てくる。

今も残る(残ってた)ミシシッピのジュークジョイントの記事をみつけた。
http://janetmami.blog130.fc2.com/blog-entry-653.html
すごい。こんなところ行ってみたい。


【おまけ】

1955年56年のビルボードのR&Bチャートを転載しておく。この時期の黄金のラインナップを見よ! なんてチャートだ。今でもカバーされ歌われる曲も多く、こういう曲がかかってた元ジュークジョイントのカフェがあったら、そりゃ溜まらんだろう、なんて思うのは黒人音楽が好きな一部の人だけだろうか。
https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_Billboard_number-one_rhythm_and_blues_hits

【1955】
Jan 15: Earth Angel (Will You Be Mine)  — The Penguins (3 weeks) 
Jan 22: Sincerely  — The Moonglows (2 weeks)*  
Feb 12: Pledging My Love — Johnny Ace (10 weeks)* 
Apr 9: The Wallflower — Etta James (4 weeks)*  
Apr 23:  My Babe  — Little Walter (5 weeks)* 
May 7:  I Got a Woman — Ray Charles (1 week)  
May 21:  Unchained Melody — Roy Hamilton (3 weeks) 
Jun 11:  Ain't That a Shame — Fats Domino (1 week)  
Jun 18: Unchained Melody — Al Hibbler (1 week)  
Jun 25: Bo Diddley — Bo Diddley (2 weeks)*  
Aug 6: A Fool for You — Ray Charles (1 week)  
Aug 20: Maybellene — Chuck Berry (11 weeks)  
Oct 22: Only You (and You Alone) — The Platters (7 weeks)  
Oct 29: All by Myself — Fats Domino (3 weeks)  
Dec 17: Hands Off — Priscilla Bowman Jay McShann and His Orchestra (3 weeks) 
Dec 31: Poor Me — Fats Domino (1 week)  
Dec 31: Adorable — The Drifters (1 week)  

【1956】
Jan 7: The Great Pretender — The Platters (11 weeks)*
Jan 7: At My Front Door — The El Dorados (1 week)  
Mar 17:  Why Do Fools Fall in Love — Frankie Lymon And The Teenagers (5 weeks)  
Mar 24: Drown in My Own Tears — Ray Charles (2 weeks)  
Apr 14: Long Tall Sally — Little Richard (8 weeks)  
May 19: I'm in Love Again — Fats Domino (9 weeks)*  
Jul 21: Fever — Little Willie John (5 weeks)  
Jul 28: Treasure of Love — Clyde McPhatter (1 week)  
Aug 4: Rip It Up — Little Richard (2 weeks)  
Aug 18: My Prayer — The Platters (2 weeks)  
Aug 25: Honky Tonk (Parts 1 & 2) — Bill Doggett (13 weeks)*  
Sep 1:  Let the Good Times Roll — Shirley & Lee (3 weeks)*  
Sep 15: Hound Dog / Don’t Be Cruel — Elvis Presley (6 weeks)* 
Nov 13: Blueberry Hill — Fats Domino (11 weeks)*  

ヤバい。半分以上メロディが思い浮かぶ。

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