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ゲームで学び、ゲームを学ぶ(1)-「技術アプローチ」から「戦術アプローチ」へ-

「技術アプローチ」から「戦術アプローチ」へ

「ゲームが最良の先生」(日本サッカー協会,2012)、サッカー指導教本に書かれてある言葉です。この言葉は「戦術アプローチ」(Griffin et al.,1997)と呼ばれる「ゲームの中でゲームに必要な技能を身につけていく」という現在では世界的に主流とされる「コンセプト」に沿ったものです。指導者の工夫によってデザインされたゲームの中で、選手が攻防による経験の中での気づき(戦術的気づき)を通じて、成長していくことを支援するアプローチです。本連載では「バレーボール」における「戦術アプローチ」に着目し、実践するための要素(エッセンス)に加え、具体的な実践方法を提案・紹介していきたいと思います。

「ゲームが最良の先生」

今日、指導者の役割は初心者の段階からスポーツそのものを経験させることが大切とされています。スポーツそのものとは「ゲーム」です。サッカーは前述の通りですが、加えて国際テニス連盟の指導教本が翻訳されている「プレイ・テニス教本」(日本テニス協会,2010)においても、コーチの役割は「参加者にできるだけ早くテニスをプレーさせる(サーブ、ラリー、得点)」ことがコーチの役割の章では「1行目」に書いてあります。この表現もサッカー指導教本と同様に「ゲームが最良の先生」、つまりは「戦術アプローチ」のコンセプトに基づくものです。

「戦術アプローチ」の時代へ

「戦術アプローチ」とは「ゲームの課題」(目的)を常に意識した状況で「技能(技術の使い方)」(手段)を身につけようとします。例えば、サッカーでは「ゲームの課題」(目的)は「ゴールを奪う、ゴールを守る」です。その「目的」が設定された「ゲーム」を通じて「シュート」はもちろん、そこに至るまでの「パス」「ドリブル」や「ディフェンス」など、目的達成のためのあらゆる「手段」を、様々な状況で学びます。

従来は「技術アプローチ」と呼ばれ「ゲームの課題」(目的)に必要と考えられる「技術」(手段)を、それぞれ学習するものでした(シュート練習、パス練習など)。その後、それらがある程度できたら「ゲーム」で繋ぎ合わせようとするコンセプトでした。この「技術アプローチ」の課題は「技術」(手段)を個別に身につけても「ゲーム」の中で使い方が学習できていない(「技能」になっていない)ことが、効率的ではないことがありました。

そのような背景から現在の主流である「戦術アプローチ」が確立されてきました。これは、現行学習指導要領においても反映されていることで、学術的な背景からもボールゲーム・コーチングの発展の流れを確認することができます(文部科学省,2008)。

次回:ゲームで学び、ゲームを学ぶ(2)-ゲーム・ラリーの構造-に続く。

【参考文献】
日本サッカー協会(2012),サッカー指導教本2012,日本サッカー協会,東京
・Griffin et al.,(1997)Teaching sports concepts and skills.Human Kinetics.
・国際テニス連盟(2010)プレイ・テニス教本,日本テニス協会,東京
・文部科学省(2008)小学校学習指導要領解説(体育編),東洋館:東京.

▶︎縄田亮太のプロフィール

バレーボールに関する記事を執筆しています。バレーボーラーにとって有益な情報を提供することをコンセプトにしています。