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【小説】 亮介さんとあおいさんとぼくと  24/30

じぶんがいかに欲望の少ない人間かということがわかったと同時に、強くもない欲望を、ぼんやりとした願望を、無理やり掘り起こそうとしていたのが二十歳のころだった。

そういう経験から、しだいに、やりたいことよりも、できること、やるべきことを選ぶようになっていった。三十歳になった今でも、何がしたいのかよくわからない。

死ぬまでにやりたいことリストには、人にはいえない秘密のリストがあった。死ぬまでにしたいことは正直、たった一つだった。

 

女性とねんごろになりたい。

 

どうすればねんごろな関係になれるのか。表向きには、彼女がほしい、といっていた。しかし、彼女がほしいと公言すればするほど、ねんごろな関係をもとめる下心は見透かされ、成就から遠ざかるという法則がある。

そんなことも知らず、インスタントに同級生をすきになり、あっさりと振られ、また別の同級生をすきになり、あっさりと振られた。何度かこういうことを繰り返した。

女子たちのあいだでは「手当たりしだい告白をするから、あいつには気をつけろ」と認定されていた。その評判については、谷口に教えてもらった。

じぶんはどうやらこのままでは、ねんごろにはなれないらしい、と焦りはじめていた。その一方で、じぶんらしくいれば、だれかはありのままのじぶんを認めてくれるはずだという謎めいた自信があった。

しかし、世の中は甘くはなく、努力しない人間はむくわれず、じぶんの求めるものと得られるものがまったく噛み合わず、精神の崩壊をむかえることになった。

そのうちに、ねんごろな関係については、あまりにあっけなく訪れてしまった。なんのドラマもロマンもなく、ただただ、来るべきものがやって来て、それをぼくは手にしただけだった。相手は年上の女性だった。


ーーー次のお話ーーー

ーーー1つ前のお話ーーー



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