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【小説】二十歳、父からの手紙

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父親から20歳になった息子への手紙。息子がまだ生まれる前に書かれた手紙。家族に起きたある出来事について、死生観を交えながら綴られている。
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2019年5月の記事一覧

8. 私が生きた人生

8. 私が生きた人生

《3》

ここからは、私がいかにして、今の死に対するアイデアに辿りついたかについて話そうと思う。その目的のためには、私が私の人生をどのように過ごしてきたかをあなたに知って欲しい。

振り返ってみると、思っていた以上に、死は私の人生のあちらこちらにあった。しかし、自分の周囲で起きた死に対して、それなりの対応するには、私はある程度の年齢を重ねる必要があった。

一定の時間を共有した人々の死に直面した時

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7.君が生きる人生

私は応答のため手紙を書いた。

人生への関わり方、という答えのないコンテンツ。弟は、それについて常に頭を抱えてきた。そして私とディスカッションを重ねてきた。彼は議論を好む。

しかし、議論も重要だが、私には考えがあった。

彼には、哲学的な話の以前の問題があった。心を持て余しているのではないかという。寂しさが人生訓を狂気的なものにしているという。栄養不足と承認の欠如が、彼をあらぬ方向へ奮い立た

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