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恋の形

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実る恋  実らない恋 交わる恋  交わらない恋 どの恋も正解はなくて どれも素晴らしい ちょっと人にやさしくできないとき 読んでもらいたいお話しまとめてみました
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#言葉

花かんむりと優しさ

朝の清々しい空気の中、私たちはピクニックに出かけた 食後の紅茶の香りが漂う中、優しい空を見上げる 花冠をつけた君が欠伸をしている姿に微笑みがこぼれた 眠気で温かい体温を上書きするようになぞる指先 私だけが知っている君、瞬きの回数でわかる気持ち 平熱に戻るまで夢の中にいることを知っている 眠る前に言えばよかった、瞬きの答えを。 夏の日差しが君を溶かしてしまうまでは 日陰よ、どうかそのままでいてほしい 君の安らかな寝顔を見つめた 偶然飛んできたアゲハ蝶が舞い踊ると花が揺れ 君

見えない彼女と見える僕

僕は僕で生きる世界があって この世界に流れる風は、どこまでも冷たい 幾千の星々は、そんな僕にも笑いかけ でもやっぱり、朝になれば泡のように消えていく そこら中を見えないモノたちが潜んでいて 願い事を託す、彼らにはこの世が まるで穴が開いた空のように映っているんだろうか 嫉妬と焦りと闇が漂う世界に何を望むだろうか 冷たい空に見える君を、僕はどうすることもできなくて 海が見える踏切で一人考えてしまう 君に近づく方法は何通りあるのだろうか。 君を見つけてから、灰色であるはずの

探し物と碧い空

探し物が見つからない。どこを探しても見つからない。 もう、探しているものが本当にあったのかもわからないけど。 探し物を探す。 尖った心は誰も近づけさせず、人の話を片っ端から 「そうなんでしょ」って切っていったら 冷たくて、寂しくて、苦しい場所から抜け出せなくなった。 家まで送ってくれた先輩は私に夢を見させてくれたが 結局それは、先輩にとって苦しみしかないんじゃないかなと思う。 ある日、先輩は絵具を持ってやってきた。 首をかしげる私に「君を救い出そうと思ってる」って真剣に言

飴色の夕焼け

空が遠い。僕には手の届かない場所。 陽が落ちるこの時間帯は、なぜ物悲しい気持ちになるのだろう。 まだ落ちないで太陽よ、月よあと少しだけ待っててよ。 見送りたくて、バス停まで君と肩を並べて歩く。 話したいことが頭の中で文字になって舞い上がっている。 ふわふわする頭と心と足をどうにか地につけて、 消える太陽を見る君を僕はのぞき込む。 夕日が反射する美しい瞳に何かが割れる音がした。 ふわりと体が浮くような感覚に、胸が痛みだした。 飛び回る鳥を見て僕も一緒に飛びまわれたら この痛

うつろい儚く散れますように

声が、声が。出そうとしているのに出てこない。どうしてこうなったのか全く覚えていないけれど、私はどうやら死んでしまったようだ。そして病む私。死んでも病んじゃうんだ、つらい。 目の前には夫が私の名前を呼びながら泣いている、ねぇ私ここにいるよ? もう何十回何百回、いや何万回と叫んだけど私の声は届かなくてそれでも彼の時間は進み続けることに後悔している。 知らなければよかった、あなたがこんなに私を思っていただなんて。私が死んで20年。変わらず私を愛してくれている。なんでそこまで私にこ

甘いいたずら

秘かに好意を寄せる彼 授業中静かに寝ていた 彼の前の席は柔道部のキャプテンで 先生から死角になっている ここぞとばかりに周りの生徒が 彼に可愛いいたずらを始めた 先生の目を盗んでは ペンで落書きをしていく 彼に気づかれないように 最後は私 手と腕はいっぱいだったから 彼のほっぺに赤ペンで書くハート この想いよ届け。 〇と△シリーズ 好きな言葉をお題として組み合わせ詩を作る 今日は 赤ペン × ほっぺ

左目の言葉たち

「先生、質問です」そばにいるだけでよかったけど、 私の心の原石は、音もなく崩れていく 映画を見に行こうって待ち合わせた昼下がり、 最初の言葉に愛があふれる 手のひらに書いた「人」の字を左目だけで見つめる 姿勢の悪い先生の授業の中の長い沈黙がすき 帰り道の鳥居、小さい頃よく来た懐かしさに浸る 手を添えてまた明日 つま先に力を入れて、遅刻寸前の坂道を走ろう メガネ姿に細い目の先生と話したくて、制服のスカーフを直す 三本目の木の下、街路樹にいる先生の仕草が無邪気で そして穏や

誕生日嘘をついたページ/記憶の日記

「こうじさん、お誕生日おめでとうございます」 ふみさんが今年も誕生日を祝ってくれる。本当に僕は幸せ者です。 だけれど、彼女は僕を見ているけれど見ていない。 あなたは誰を見ているんだろう。 日記の一行目。 彼女の大切な人が自分ではないことに気が付いた。 手に持った彼女の日記の1行目。 誰か分からない想い人への一行目を、震える指で一文字ずつなぞる。 本当は知っていたし、わかっていた。けれど、彼女が彼女を演じる限り、僕は僕であるべきだとそう思う。 もう僕は知らなかった世界へ戻

どく

最初から知っていた、あなたの心には私の居場所がないと だからこそ、少しずつ、微かにでも 記憶の糸を紡ぐ 数日ごとに繰り返す同じ言葉は 微量の毒のように あなたの意識の隅に静かに滲み込み、こべりつくように 何かが起こるたび、ほんの一瞬だけ その存在を思い出させる そんな私を、どうか許して あなたの世界の片隅に、静かに息づかせて

甘い優しさの中で

「今日は何食べたい?」彼が尋ねると、カフェの中に静かな光が差し込み、私たちの間に微笑みが漂った。 メニューを手に取り、私はゆっくりと選ぶ。 たくさんの選択肢の中で、私の頭は幸せに包まれている。 しかし、決められない私に彼は優しく声をかけてくれた。 「いっぱい悩んでて、俺がその間に二人で食べるデザートを悩んでるから」と。 彼の言葉に、私は微笑みながら頷く。 彼はいつも選べない私の悩みをまるっと理解してくれる。 悩む時間も、私のペースに合わせてくれてその時間さえも楽しんでくれ

言葉を超える沈黙

眠りから目覚める前の君を見つめる 幸せが漂う静かな部屋 沈黙の心地よさ 心の奥底で響く 笑顔の後に届く 「おはよ」 君のまばたきに愛を感じる 静かな朝の光が差し込む 二人の世界に満ちる幸せ 沈黙と言葉の響きが奏でる 同じ空気を吸い込んで 同じ夢を見つめて 二人の時間が進む 愛と平和の詩が続く あなたと共に歩む幸せ 沈黙と言葉の響きが奏でる 今日もまた新たな一歩 愛に満ちた日々を紡ぎ続けよう 未来へと続く道 二人手を取り歩む 愛と共に 幸せの詩が永遠に響

もっともあたたかいブルー

彼はいつも冷たく見える 淡い青色のような指先で 私に触れる 彼はいつも冷たく聞こえる 深く青みがかった声で 私に話しかける 私は彼の心が知りたい 彼の色が知りたい あなたは何色なの? 付き合って3年目の記念日に プレゼントをくれた 「キーホルダーなんて使わないよね」と 彼が言った 私は微笑んだ 「ありがとう」 普段見せない照れくさそうな顔に 彼の優しさを感じた おそろいのキーホルダーに心が溶けていく かっこよくみせたくて 冷たくなってしまったんだって ずるい