言葉にできない居心地の悪さをひたすら感じる映画「ミッドサマー」感想 (ネタバレあり)

TOHOシネマズ日比谷にて鑑賞。収容人数が多めのシアター5がほぼ満員でした。割とネットでこの映画の話題が挙がっていたのでそれなりに人気なんだろうと思ってはいましたが満員なことには驚きました。一応ジャンルとしてはホラーで最近観たこの手のジャンルにはいる犬鳴村やシライサンは人の入りがそこまで多くなかったのでこのジャンルは人気がなくなってきているのかなと思っていたのですがそんなことはなかったです。まぁJホラーはそもそも怖さの質が異なるのでそもそも嫌いという人も多いので全く比較にはなりませんが。完全にネタバレが含まれますが感想を残しておきます。

映画を観ながら「クレヨンしんちゃん アクション仮面VSハイグレ魔王」をなぜか思い出していました。アクション仮面vsハイグレ魔王はクレヨンしんちゃんの劇場版の第一作です。子供の頃に劇場で観たのですが、序盤のレアカードを入手してからパラレルワールドに入るまでの日常から少しづつ非日常に入っていく居心地の悪さをこの作品では最初から最後まで感じることができました。

あらすじは主人公であるアメリカの大学でおそらく大学院生のダニーとその恋人クリスチャンとその友人らは友人の一人にに誘われて故郷のスウェーデンで行われる夏至祭に参加します。友人の故郷は街ではなくいわゆるコミューンと呼ばれる我々のものとは異なる価値観を共有しつつ共同生活を営む集団で育ったようです。主人公らはロンドンから来たカップルと意気投合しながら夏至祭で行われる奇妙な儀式に参加します。夏至祭二日目、今年72歳になる男女の老人らが崖から飛び降りるというイベントが行われました。このこのコミュニティーでは18年周期ごとにライフステージを分けており、72歳になると自ら神への捧げものになるという風習を持つ集団だったのです。当然外部参加者はこのイベントに大きなショックを受けて、ロンドンから来たカップルはその日のうちにこの村から去ることを決めます。このあたりからまずカップルの男が彼女に相談なしに帰ったことになり、気づくと女性のほうも帰ったことを村人から伝えられます。これを皮切りに友人らが少しづつ姿を消し始めるというのがこの映画の大枠です。

映画自体は非常に精巧な作りになっていて、序盤の描写やそこに映るものそれぞれが後から見返すと一つ一つがそれぞれ中盤、後半に起ることを暗示しています。特に作中では様々な絵が何気なく写っているのですが、正直自分は全部は把握しきれていなく見逃してしまっている暗示がたくさんあると思います。また都会から離れた森の中に広がる綺麗な草原やそこで行われている文明社会から離れた生活はそれだけで見応えのある絵になっています。このきれいな風景とそこで行われている事件のギャップのせいで気持ちよさと気持ち悪さが同時に混在する不思議な感覚となりました。

また完全にネタバレになるのですが、この物語は主人公ダニーが抱える様々な悩みや問題を開放し、最終的にこのコミューンを受け入れ一員になります。序盤からずっと居心地の悪さを感じる理由はダニーの抱える不安やトラウマが常に彼氏や友人らによってもたらされるために感じていたようです。グロテスクな描写は多いのですが、ダンスを始めたあたりからダニーの心が開放されていき少しずつ集団に溶け込んでいき、最終的に彼氏を生贄に捧げる決断を下し完全に悩みから開放されたダニーにはなぜかスッキリする感想さえ抱いてしまいました。

グロテスクな描写や日本だとモザイクがかかる描写など多いので苦手な人もいる作品ですが、それらに抵抗感がない人であればホラーではなくカルト映画としておすすめできる作品です。

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