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映画「Fukushima 50」感想

この映画を観るならせっかくならということで3月11日に劇場で鑑賞してきました。深夜終わりの回だったにもかからわらずそれなりに人が入っていたのでそれだけこの災害の影響の強さを改めて実感しました。基本的に実際の時系列通りなのでネタバレの心配はないと思います。

まず全体的な感想になりますが、非常にしっかりしたドキュメンタリー映画でした。正直なところ宣伝で豪華キャスト多数出演という謳い文句がある邦画はイマイチな作品が多いと思っていましたがこの作品は違いました。ちゃんと演技力のある役者を揃えつつ主軸に渡辺謙演じる福島第一原発所長の吉田昌郎と佐藤浩市演じる福島第一原発1・2号機当直長の伊崎を軸に話が進んでいきます。このため全電源消失をいう未曾有の危機に対して現場でどういうことが起こってどのような対応をしたのかをちゃんと伝えてくれました。事故当時はニュースで起きている事態のほんの一部分しか知ることのできなかった中、現場では文字通り決死隊を作ってまで対応していたことを伝えてくれるだけでもこの作品を鑑賞する意味があると思います。

作中での時間経過とともに全員がどんどん疲弊していく演技は演者全員お見事でした。この作品は性質上建物内のカットが多いため時間経過は主にテロップでの文字情報しかないのですが、俳優さん方の疲労困憊ぐらいの演技でも長時間対応にあたっていたことがわかる素晴らしい演技だったと思います。

個人的に気になった点についても述べておきます。主に福島第一原発内で話が進んで行くのですが出てくる場面が中央制御室と緊急対策室と建屋周辺が主でもう少し全体を俯瞰するような描写があってもよかったのではないのかなと思います。建屋が崩れ落ちるシーンでも非常に狭い画角であったため全体のサイズ感が伝わりづらかったです。また吉岡里帆さんの演技は良かったと思うのですが家族のエピソードはなくても良かったのではないかなとも思いました。エピソード自体は感動的な話で非常によいものなのですが少し映画としては余計で、ないほうがよりラストシーンが際立ったのではないかなと思いました。あと本当に細かい演出なのですが、ビジネスメールでもない親とのメールで文章の最後に名前は書いていた点が気になりました。

最後になりますがドキュメンタリー映画としてはしっかりとした作りになっていて災害とともに後世に残していく一つの媒体としては十分の作品だったと思います。


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