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無常だから花が咲く

若院コラム『和而不同』(わして どうぜず)2024年7月号-〔毎月発行〕さいほうじの読みもの-


コラム担当:西法寺若院 星野徳行(ほしの のりゆき)


四季折々にいわゆる旬の花があるが、梅雨の時期といえば、やはり「紫陽花」が代表的だろう▼あのカラフルな色彩は土壌の性質によって決まるそうだ。酸性なら青色、アルカリ性ならピンク色へと移ろうことから、花言葉は〝七変化〟。別名「無常の花」とも呼ぶらしい▼無常といえば、「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。」という、『平家物語』の有名なフレーズがある。しかし、ここでの悲嘆/詠嘆的イメージは、あくまで無常の一側面に過ぎない▼『すべて現実のものは移り変わっていくー』(ブッダ遺誡の言葉)。花が散るのが無常であれば、花が咲くのもまた無常ゆえである。人が亡くなることが無常であれば、人が育つのもまた無常ゆえである▼生まれたものは、いつか必ず息絶えてゆく。ひとたび縁がもよおせば、次の瞬間が〝その時〟だ。ゆえに今、いのち恵まれているということは、あたりまえではなく、実は何よりも不思議なことなのだ▼それでも別れはやってくる。大切な人だけでなく、自分自身とも、だ。『無常』とは いのちの本質を語る、厳しい言葉であるとともに、その厳しさはまた いのち に向き合っている証でもあるのだろう。