裏切りのコイントス。
前の職場と戦争を起こす訳にはいかず、退職までは痛みに耐える日々が続いた。理不尽な要求にも黙って辛抱してきた。互いが綺麗に別れることを望んでいたとしても、世の中はそんなに綺麗じゃない。
「ゼリ沢はこの業界にはいられないようにしてやる」
ボスがそんなことを各得意先で言っていた。
新しい職場の社長にも、
「ゼリ沢はすぐに労基に行く奴。なんなら組合に入っている。あいつの父親は右翼だ。気をつけたほうがいい」
そんなことをわざわざ言いに行っていた。それを僕が知っているということは、つまりそういうこと。
あ、僕は労基に行ったことはないし組合にも入っていなくて、父は右翼ではないです。
惨めだった。
もうどこで何を言われても、もう何もならない。仕事を真剣にしている人達は、仕事を真剣にしている人の味方にしかならない。
情報の速さもその信頼性も、もうボスは僕には追いつけない。その自信があるし、その自信が惨めだった。ボスの動きがずっと丸見えだった。
この人が生きている限り、自分で商売することは不可能だと思った。大きな不安要素を抱えながら踏み出す勇気が僕にはなかったから、僕の力不足が原因で野望を捨てた。社会にはいろんな力があって、僕はボスよりも力が無かった。それだけのことだった。
会社のトップとハローワークから来た新人。それがいつの間にかまるで親子、まるで友達だった。
僕がボスの一番の理解者で、一番優秀な教え子であったことは間違いなく、誰よりも可愛がってもらっていた。この人を安心させることを目標にしていた。生きている間に必ずと、いつもそう思っていた。
一瞬でひっくり返った。
原因は些細な計算違いだった。
ボスの中では些細な計算違いだったけど、僕には生活が苦しくなる痛い計算違いだった。
僕は会社を裏切った。僕は会社に裏切られた。
会社は僕を裏切った。会社は僕に裏切られた。
全て同じ真実。角度が違うだけ。
別に何も不思議じゃない。何も起きてないよ。
理不尽も、不公平もない。有利不利もない。
新しい職場に迷惑をかけたくなくて、業界から去る覚悟で断ろうとした。
でも、それでも君が必要だと。
そして、入社していく。
これも、いつ何がきっかけでひっくり返るのかはわからない。そう思うと、生きることが苦しい。
今の自分に何が残ったのだろう。
いつも人間関係の隣に、ちゃんと不安がいる。
そういえば、京都のある哲学者がこんなことを言っていたっけな。
悔しいから生きている。
なのに、生きることがこんなにも悔しい。
ゼリレオ・ゼリレイ
うぅ…なんていい言葉だ。泣けちゃう( ; ; )
まぁ、元気でやってます。
俺ちゃんね、こんなことでは挫けねぇぜ。
いつもありがとうございます。はいほ。
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