【一日一捨】 マグカップ
前の会社に勤めていたときに忘年会のビンゴで当たった。色違いの同じのを同じ課の沢村さんが当てて、ペアカップみたいでなんとなく嬉しかった。今、思い返せばキモい。最初のうちは彼女も会社で使っていたけれど、そのうち持って帰ったのか見なくなった。ペアカップみたいで嫌だったのかもしれない。僕はなんとなくそのまま使い続け、残業しながらよくこれでコーヒーを飲んだ。会社を辞めたときに机の私物はほとんど捨ててしまったのだけど、このマグカップだけは持って帰ってきた。そういえば、送別会には沢村さんは来なかった。嫌われていたのかもしれない。コーヒーの茶渋でカップの中は茶色くなっている。給湯室にあった安物のインスタントコーヒーの味と香りを思い出す。捨てる。
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