見出し画像

【一日一捨】 陶芸教室で作ったお皿

カルチャーセンターの陶芸教室でお皿を作った。
粘土をこねて形を整え、色をつける。あとは焼くだけ。
焼くのはセンターの方でやりますということで、教室に預けて帰宅して数時間後。マンションが激しく揺れた。仕事部屋の本棚は倒れて本が散乱し、キッチン棚から飛び出した食器は落ちて割れ、冷蔵庫は傾き、室内はめちゃくちゃになった。
2011年の3月11日のことだった。当時住んでいたいたのは埼玉だったけど、それでもめちゃくちゃ揺れた。日常が一変した。大変なことになった。東北地方に押し寄せた大津波。原発事故。日々報じられる被災地の状況。仕事は完全にストップし、部屋でニュースを見る毎日。未曾有の大災害。計画停電。自粛。自粛。自粛。日常は完全に崩壊し、メンタルも相当やられた。

何ヶ月かが過ぎ、なんとか少しずつ日常が戻ってきた頃に、カルチャーセンターから「お皿が焼き上がりました」と連絡があった。すっかり忘れていた。
あの地震の揺れの中で、お皿が無事だったことにちょっと驚いた。とりあえず焼き上がったお皿を引き取りに行き、これはあの震災を生き延びた皿だと思って大事に使おうと決めた。決めはしたけれど。

そこはまあ素人が作ったものだし、正直そんなに上手くできてない。
作ったのは自分だけど、中途半端な大きさの渋い色をした四角い皿は実際あまり使い道がない。焼き魚を乗せるには小さすぎるし、ケーキを乗せても色味的に美味しそうじゃない。結局、2回ほど使っただけで戸棚の奥にしまい込み、引っ越しの度に緩衝材に包んでは解きを繰り返しながら、いくつかの部屋を渡り歩いて今に至る。せっかく震災を乗り越えたお皿だけど、使わないなら仕方ない。捨てる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?