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ロボット&AI時代と農業の「剰余価値」のゆくえ他

AI戦闘機と言うのが開発されているそうです。有人戦闘機と戦わせたら、「勝った」のだそうです。

もっとも将棋のAIアプリも初手から「全て」を考えているわけではなく、これまでの棋士の指し手を覚えさせている部分が大きいようです。

つまり、こういう局面ではこういう風に判断すべきだと思うと言う人間がやった判断事例を膨大に覚えさせて、AIが「じゃあ、今回はこういう風に判断しよう」とやっているのだと思います。

AI戦闘機についても、プロパイロットの行動を「覚えさせて」、動いているのかもしれません。

何もない状態から「考えつく」と言う過程は、AIにはない、人間固有のものとして残っているような気がします。

さて、経済学者シュムペータが、マルクスが述べた「剰余価値逓減の法則」について論じています。

剰余価値は平たく言えば、利潤の事です。逓減はだんだん減ること、つまり、「資本主義」では、だんだん得られる利潤が減っていくと言うお話です。

仮に労働者が一日働いて、1万円の給料を受取るとします。ところが、その労働者が一日働いて作る「価値」は2万円分あるとします。

農家が作った大根をお惣菜屋さんが煮物にして売る場合、大根を「洗う」、「切る」、「煮る」と言う労働をして「煮物」ができるわけです。

消費者は、自分で煮物を作らなくてもお店で買えば「煮物」が食べられるわけです。煮物が300円で材料費が100円だとすると200円分が「利潤」になります。

その利潤は「大根を洗う、切る、煮る」と言う労働によって生まれていると言うのが、アダム・スミスなどの「古典派経済学」からマルクスが受け継いだ「労働価値説」です。

マルクスの場合、いや、一日にお惣菜は100個できるんだ、だから、労働者は200円×100個=2万円の価値を創造しているんだけど、労働者に支払われる報酬は1万円で、差額の1万円を資本家がポケットに入れている、これはおかしいんじゃないか?と言う点を強調していたわけです。

さて、剰余価値逓減の法則と言うのは何かと言うと、この「大根を洗う、煮る、切る」をロボットがやっちゃったらどうなるかと言うお話です。

シュムペータは、資本主義では競争が行われている、そうすると、300円のお惣菜より200円のお惣菜の方が安いから消費者が買う、つまり、競争力を持つ・・・

そこで、人件費を払うよりロボットにやらせた方が安くつくんなら、ロボットを導入するような「改革」を始めるお惣菜屋さんが出てくるんじゃないか?

みたいな事を言っているわけです。

でまぁ、ロボットを導入すると価格200円のお惣菜ができるかもしれない、人間がやったら1日100個しか作れない大根の煮物を200個作れるようになるかもしれない、だから、売上は4万円に増える、でも、ロボットもいつかは壊れるだろうし、メンテナンスも必要になる、そう言うロボットの「原価」が結局1日3万5千円ぐらいかかるとすると、利潤は1日5千円になってしまう・・・

あれ?人間がやっていた時は利潤は1日1万円だったのに・・・、ロボットを導入すると利潤が減ってしまうの?

と言うような事が「剰余価値逓減の法則」です。

どうしてこうなるかと言うと、「手作り時代」のお惣菜は1個300円だったのが「ロボット時代」には200円・・・「価格破壊」をしているからです。

価格破壊の結果、労働者の給料が1日1万円だとすると、「手作り時代」には労働者は1日の労働で30個ちょっとのお惣菜が買えるだけだったのが、ロボット時代には50個買える事になります。

大根のお惣菜だけ毎日30個も50個も買う人はいないと思いますが、こうして「生産力」が向上すると、労働者は、今までお惣菜に使っていた分を他の事に使えることになります。

「電気製品」が開発されて、昔は薪や炭でカマドで火を起こしてご飯を炊いたり、オカズをお料理していたのが、「電気炊飯器」とか「電子レンジ」とかがやってくれるようになった、労働者がそういうものを買えるようになった・・・

それが日本で言えば、1960-70年代の高度経済成長期に起こった現象です。今の新興国もそういう風になってきています。

この間見たロシアン・ドラマでは、メイドの人が「食器洗浄機」のスイッチを入れていました。

富裕層が雇うメイド(労働者)は、自分で食器を洗うと言う労働はしないで食器洗浄機のスイッチを入れると言う労働をしているわけです。食器洗浄機が動いている間は、他の労働・・・お掃除をするとか、お洗濯をするとか、をするわけですが、

お掃除も掃除機、お洗濯も洗濯機が使えるわけです。

そうすると、昔だったら、大貴族だけが、何人ものメイドを雇う事が出来た、そのメイドの人達は手作業で食器を洗ったり、お掃除をしたり、お洗濯をしていた・・・、いくら安くこき使うにしても、最低限、メイドの人達が明日も働けるように、ご飯を食べさせる必要はあるので、そのコストはかかる・・・

だったのが、現代では、大貴族じゃない「ちょっとした富裕層」が一人のメイドを雇えば、そのメイドの人が食器洗浄機と掃除機と洗濯機を使って、家事を全部こなしてくれる・・・

この状態が更に進んで、食器洗浄ロボット、お掃除ロボット、洗濯ロボットを登場し、それをみんなが買えるようになったらどうなるか?と言うと、「ちょっとした富裕層」は「高級食器洗浄ロボット」、「高性能お掃除ロボット」、「高機能洗濯ロボット」を買うようになって、メイドは雇わなくなる

と言うか、みんなが「食器洗浄ロボット」、「お掃除ロボット」、「洗濯ロボット」を使うようになれば「メイド派遣業」と言うビジネスはなくなるかもしれません・・・

マルクスは資本家に搾取されている貧しい労働者が革命を起こして資本主義は終わると考えていたのですが、シュムペータは、マルクスの剰余価値逓減の法則は、経済学的には正しいとしながらも、豊かな社会になると資本主義のエンジンは停止すると考えました。

つまり、掃除機も洗濯機もない時代に、掃除機や洗濯機が登場すればどんどん売れた、しかし、みんなが掃除機や洗濯機を持つようになれば、もう売れない、

昔は植民地に投資すれば儲かった、しかし、旧植民地が豊かな「新興国」に変わっていけば、途上国の資源開発に先進国が投資して儲けると言うようなビジネスモデルは成り立たなくなる・・・

こうして豊かな社会になると投資機会が消滅して資本主義のエンジンが停まっていくだろう・・・

現在の成り行きをみると、マルクスよりシュムペータの見通しの方が正しかったように思われます。

さて、農業、特に野菜づくりは、この「剰余価値逓減の法則」を阻む最後の砦みたいになっています。

野菜は、ピーマンとかナスとかネギとかホウレンソウとかいろんな種類があり、栽培の作業も多種多様です。

「耕す」ことならトラクター、溝掘りなら溝掘り用のアタッチメント、苗植えなら「苗植え機」とか、それぞれの機能ごとの機械化はできそうですが、多種多様な野菜についてのありとあらゆる農作業を機械化するのは、なかなか進んでいません。

開発費もかかるので、機械は高額にならざるえませんが、年に一度か二度使うだけの機械に高額な投資をする農家はほとんどいないでしょう。

かくして、野菜栽培には、手作業部分が膨大に残されていますし、当面、それも今後も長期間、手作業がたくさんある野菜栽培の状態は維持されていくでしょう。

そして、回転寿司ではロボットがお寿司を握り、個々のお店にお惣菜づくりロボットが導入されると言うよりは、大工場でお惣菜が大量生産(生産は機械化されています)されて、スーパーやコンビニに並び、

新興国のドラマでは富裕層に雇われたメイドの人が食器洗浄機のスイッチを入れてる風景が映っている時代、

そう言う時代に、あえて、「農業」をしようと、半農半Xの人も「全農」=専業農家の人ともいますが、そう言う人達が登場してきている・・・

これが「現代」=21世紀の前期も前半戦が終わり、そろそろ21世紀中期について考えるようになってきた時代に起きていることなわけです。

まぁ、僕も「あえて」と言うか、「成り行き上」と言うか、そう言う時代に、「農業」をしようとしている一人ですが・・・

2週間予報は4/15以降、雨が降らない日が2日とか3日しかないと言う見通しが消え、雨の降らない日がけっこう多いと言う観測に変わってきています。

ただ、大気が不安定になり、関東で降雹のピークとされる4/25以降、しばらく雨が降る日が続く、また、4/28、30も雨が降る、

つまり、4月下旬の不安定期の後、安定したゴールデンウィークとなるのではなく、少なくともゴールデンウィーク前半は不安定状態が続く可能性が示唆されています。

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