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蒸し返しダンサーに【毎週ショートショートnote】
「兄ちゃん、俺のプリン食べた?」
「あっ、ごめん。食べたわ」
「ああ、まあいいよ」
3日前、俺は心が広いふりをしてプリンを我慢した。
今さら蒸し返したら小さい男だと思われそうだけど、このまま泣き寝入りなんてできない。
そこで俺はひらめいた。
プロのダンサーとして活動している兄に、俺もダンスを通して気持ちを伝えてみたらどうだろう。
翌日、兄をリビングに呼び出し、ミュージカルを披露した。
「♪ご褒美〜それは甘い幸せ〜」
俺は軽快なステップを踏んだ後、冷蔵庫のドアを開ける仕草をした。
「♪ない〜どこにも〜信じられない〜」
頭を抱えて膝から崩れ落ち、全力で絶望を表現した。
すると、兄が駆け寄ってきて、俺のそばでターンを決めた。
「♪弟よ〜すまない〜私は罪を償う〜」
それから、兄は俺の手を引いて玄関を飛び出し、2人でコンビニに入った。
「♪そなたにミルクプリンを奢ろう〜」
「♪どうもありがとう〜」
俺たちは、陳列棚の前でワルツを踊った。