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命乞いする蜘蛛【毎週ショートショート note】
突然、俺の視界は茶色い壁に覆われた。
ガムテープだ。急いで逃げろ。昔、仲間がアレに殺られたんだ。
どうして俺をそんなに嫌うんだ。
俺はお前を刺さねえし、ブンブンうるさく飛び回ることもしねえ。
たしかにベタベタした巣は不快かもしんねえが、なによりダニを食べてやってんだ。
殺される筋合いなんてねえ。
上手く逃げれたと思ったら、今度はいきなり真っ白な世界になった。
ティッシュってやつだ。俺は俊敏に飛び上がった。
しかし奴は鬼の形相で追いかけてくる。
クソッ、俺もここまでなのか?
いや、諦めるわけにはいかねえ。
だって、もっといっぱい美味しいダニを食べたい。
ゴキブリだっていつか食べてみたい。
もっとでっかい巣を張れるようになりたい。
だから神様、どうか命を助けてください。
心の底からそう願うと、体中にパワーがみなぎってきた。
まだまだ生きてやるからな。
俺は左に行くと見せかけて、右に行く技を使った。
「痛てっ!」
ティッシュを持った奴が、盛大にコケたようだった。