洞窟の奥はお子様ランチ【毎週ショートショートnote】
洞窟の中で、好奇心旺盛な大人たちが、いつも走り回っている。
その洞窟の近くにあるレストランは、そんな冒険家たちの来店により、経営が成り立っていた。
ある日のレストランにて。
「店長さん。僕たちにお子様ランチを食べさせてください」
「ダメです。大人にお子様ランチを頼まれると採算が取れません」
「僕たちは、子供心を忘れていません。精神年齢は小学生なので、どうしてもあの新幹線プレートのやつが食べたいんです!」
「そこまで言うならこうしましょう。今度、あの洞窟のどこかにお子様ランチの旗を隠しておきます。それをいち早く見つけた人のみ、注文することを可とします」
彼らは飛び跳ねて喜んだ。
後日、冒険家たちは、旗を見つけるべく、我先にと洞窟に飛び込んだ。
鍾乳石に紛れていないか虫メガネで観察する者や、住民であるコウモリに在処を聞き出そうとする者らがいた。
「あったぞ!」
そのとき、洞窟の奥で男が叫んだ。
小さい日本国旗を掲げている。
振り返らずに、脇見もせずに、ひたすら前に進んだ会社員の森田さんだ。
「おめでとう」
「いいなー」
森田さんは仲間に見守られながら、ひとくちハンバーグを味わっていた。