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とんこつQ&A

むらさきのスカートの女は、評判に反してあまり受け付けなかった。その気味の悪さにというよりは、人間の心の描き方が、弱さを悪に受け止めさせるような押し付けがましさに感じられたから。
それでも著者の作品は気にはなっていて、図書館でこの本を予約していた。

短編が4つ、人の心の弱さやの卑しさのようなものを描くのは前作とも似ているが、こちらの方が好みであった。
表題作であるとんこつQ&Aと、良夫婦という作品が特に良かった。
どちらかといえば不器用で、弱い立場にいる人が本人なりに一生懸命人のことを考え、人に近づこうとしていくが、その距離の取り方もまた不器用で、程よい距離が保てなくなり、最終的には他人より自分可愛いの常軌を逸する行動をする。そしてその体験が、また人との距離の取り方を歪めてゆく。

心理の仕事をしていると、こうした人との距離の取り方について話すことは多い。多分この作品は、日常的でありつつもめったにない(そうは言ってもそんな人自分の身の回りにはそんなにいない)"病んでる"(と言われる)人を取り扱っているのだろうとは思うが、程度の差はあれものすごく身近にこうしたことはある。そして読み手が無意識のうちに彼らを蔑んだり批判する気持ちは、常識的とか一般的といわれる集団の力となって、また彼らをひどく傷つけていく。

病んでるのは、無意識に常識に捉われている常識的な人の方なのかもしれない。

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