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夫とのお別れ

2016年8月。医療用麻薬を貼ると呼吸が停まってしまうから


やめてほしいとお願いする。


しかし、下咽頭癌の激痛は、普通の鎮痛剤では効かない。


そこで、看護師が「2枚貼らせてください」と言ってきた。


「2枚も貼ったら死んじゃうから、やめて欲しい」と一晩中お願いした。


「痛みを長時間止めておけるし、呼吸が停まったりしません」と何人もの看護師が言ってくる。



夜中、攻防戦が繰り広げられて、


朝、夫は喉の激痛に耐えられなくて


「薬を貼って、貼って」と言った。


私も見るに見かねて


「(死んじゃうけど)1枚だけ貼ってください」と言ったら


看護師は、待ってましたとばかりにパッチを持ってきて、貼った。


その時の夫の幸せそうな顔。


こんな幸せな顔が見られたから、もう仕方ないなぁと思った。


午後、看護師から「家に帰って少し休んでください」と言われたので、帰った。


30分もしないうちに、看護師から電話が来る。


「ご主人の呼吸が停まりました。すぐに来てください」


一命はとりとめたが、意識はもうない。


だから、あれだけ医療用麻薬を貼らないでって言ったでしょ!!と


ナースステーションで言いたかった。看護師も私の顔をまともに見なかった。


しかし、夫も貼って欲しいと望んでいたことだし、


もう何が良くて、何が悪いのか、さっぱりわからなくなっていた。


命は一日でも長らえて欲しかったが、夫は激痛に耐えなくてはならない。


だから、これで良かったんだと、自分に言い聞かせる。



こうして、夫は意識が戻らないまま2日後に息を引き取る。


家族や親戚が全員集まってくるまで待ってくれたし、とても穏やかな最期だった。享年52歳。

つづく

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