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鬼滅の刃無限列車編が音楽のチカラでぶんなぐってくるよねって話

私は絵を描くことと音楽を聴くことに全振りしてる系のオタクなので、オタクのわりに普段からアニメや映画に親しみが薄い。

たまに気になる作品、話題になっている作品をたしなむ程度の鑑賞スタイルだった。

そんな私が人生ではじめて映画館で同じ作品を何回も見た。

その作品は鬼滅の刃 無限列車編。

世間的にも歴史的といえる大ヒット作品だ。


私はこの作品を見る前はアニメは年に1本、映画は数か月に1本見ればたくさん見た方、みたいな感じだったのだが、この作品を見てからはなんとなく他のアニメや映画を見る回数までが増えた。

アニメって、映画って、こんなにすさまじい完成度でこんなに面白いんだ!!と思わせる力のある作品だった。

Blu-rayももちろん買った。これからも何度も繰り返し見る。

というわけで、鬼滅の刃無限列車編の感想をつづろうと思う。


鬼滅の刃無限列車編はストーリーが2部構成になっている。

前半の下弦の壱(魘夢)との闘いと、後半の上弦の参(猗窩座)との闘いだ。

なぜこの2部が映画として一本にまとめられているかと考えると、それは煉獄杏寿郎のストーリーで区切ったのだともいえるし、魘夢が手練手管を尽くす鬼であったのに対し純粋に肉体と技で鬼という種の強さを見せる猗窩座を対比させて印象を強める演出だろうともいえる。

鬼の肉体が人間の常識の範疇にないことを印象付ける見事な演出だと思う。

そういった演出の意図がなければ、TV版で無限列車までストーリーを消化して、猗窩座が出てきたところで映画への引きを作ることだって可能だったはずなのだ。


さて、演出意図的には対比のために2人の鬼を相手取る形になったのは納得できるが、敵が2人いるということはそれだけ映画の時間が長くなるということになる。

長い映画の最大の問題は中だるみが起きやすいことだ。

特に鬼滅の刃はメインターゲットが子供であろうから、中だるみは結構致命的な問題となる。

魘夢を倒して一息入れたところで見る側の集中力が途切れてしまっては、せっかく対比して肉体の強さを見せつける猗窩座との闘いがなんともつまらないものとなってしまう。

その問題を見事に解決したのが、音楽の力だ。


無限列車編の序盤、鬼の正体が判明する前は王道感あるヒーローミュージック。

相手が夢を操ることが判明してからは物悲しくも美しいピアノの旋律。

このピアノ曲は1人目の敵、魘夢が消滅するときにもその最期を壮絶なものとして印象付けるのに一役買っている。

魘夢は全力を出せなかったと主人公や現実を恨みながら消滅するが、TV版の同情の余地のあった鬼たちと違い、その最期はややもすれば喜劇になりかねない最期である。

だがそれを悲壮感ある音楽が盛り上げて、恨むべき敵であっても消滅というのは恐ろしいのだ、悲しいのだと強く印象付けている。

だがそれはまだ映画の中盤だ。

映画の中盤が盛り上がるとそこで集中力が尽きてしまう危険があるわけだが、魘夢の最期を盛り上げたピアノの旋律は、猗窩座の登場でエレキギターのうなる鮮烈な曲へいれ変わることで視聴者の集中力をさらに高める。

迫力ある音楽の盛り上がり、そしてその緩急が猗窩座と煉獄杏寿郎の戦闘を激しいだけではなく、練り上げられた技の応酬であることを表現している。


この音楽の切り替わり部分がなんとも気持ちよく、この部分を体感するために何度も映画館へ行ったといっても過言ではない。

戦闘と音楽の緩急がみごとにハマっていて、戦闘中にいちばん佳境となるシーンで音楽が切れるのもまたゾクゾクするような演出だ。

製作側も音楽の力を存分に理解し発揮してると感じるのは、キャラクターのセリフよりも音楽が大きな音を出している演出部分である。

音楽の盛り上がりをセリフが邪魔せず、むしろ音楽とセリフを融合させることによって最高潮のカタルシスが生まれている。

そして戦闘が終わってからも音楽の魅力は衰えず、太陽の昇るシーンでは太陽の神性を感じるほどである。


全編を通して音楽とともに映像が美しいが、特に煉獄杏寿郎の最期は逆光の中陽光で浮かび上がる輪郭線が絵画的な美しさを醸しており、物語のラストとしてふさわしい感慨がある。

煉獄杏寿郎が母の前でだけ、気を張らず幼い子供のような笑顔を見せるのがとても美しいと感じるのだ。

煉獄杏寿郎の瞳は燃える魂を表すように、夜のシーンでも自ら発光しているような輝きをもって描写されているのだが、それが閉じられた笑顔が最も美しいシーンとなっているのが、計算しつくされていると感じる。

そして流れる炎。

あんな煉獄杏寿郎の最期を見てから流れる炎に、泣かずにはいられない。


音楽が全力でその力をぶつけてくる体験に興味がある人は間違いなく無限列車編を見るべきだ。

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