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食物繊維を"あえて"減らしてみると

「食物繊維は便秘改善など、腸内環境に良い。」
そのためにも食物繊維が摂れる野菜や果物、芋などを召し上がるのではないでしょうか。

基本的に食物繊維は身体にとってメリットになる栄養素。
しかし、その食物繊維の食べる量をあえて減らしてみたという研究があります。

体重の減らし方は2パターンある

食物繊維は主に「腸」で働く栄養素です。主な働きとして以下が挙げられます。

  1. 炭水化物などの吸収スピードを緩める。

  2. 腸内細菌のエサとなり、良好な腸内環境を作る。

  3. 水分を吸収して、便の嵩を増やす。

食物繊維の食べる量を減らすことで、3番目の便の嵩、しいては体重を減らすことにつながらないか、ということがこの研究の目的になります。

一般的な「ダイエット•減量」の場合、エネルギー不足状態を長期間作って体脂肪を減らす「慢性減量」があります。これとは異なり、一部のスポーツでは短期間で”体重”を減らす「急速減量」があります。急速減量では体脂肪ではなく水分やグリコーゲンなどを体重減少のターゲットにしており、ボクシングの計量前によく行われています。

今回の「食物繊維を減らす」という食事方法はその「急速減量」の1つの手法なり、ランナーも活用し得るものになるかもしれません。

通常食→低食物繊維食

研究では習慣的に運動を行う男性(平均年齢32歳 体重77.5kg)に7日間、食物繊維を30g/日含む「通常食」を食べてもらいます。
それに続く4日間は食物繊維10g未満/日の「低食物繊維食」を食べてもらいました。
通常食の期間と低食物繊維食の期間との間で、体重などがどのように変化するかを比較しました。

その結果、低食物繊維食に移行してから4日目に体重が0.40kg、5日目には0.58kg、通常食と比較して減少しました

なぜ、食物繊維の食べる量を減らすと速やかに体重が減るのか?
これには2つのメカニズムが考えられます。
1つは食物繊維の「嵩を増 やす」働きによるもの。
もう1つは「排便までの期間」から考えられるものがあります。

前述しましたが、食物繊維(特に不溶性食物繊維)は水分を吸収して便の嵩を増やす働きがあります。普段摂っている食物繊維が多いと便の重さが多くなることが考えられ、その分が体重減少量につながったと考えられます。

食べたものが便として通過されるまで平均2日かかるとされますが、大きな体重減少をもたらすには4日を要するのではないかと考えらています。

一方、低食物繊維食は通常食と比較して

  • 排便回数の低下

  • 便の硬化

  • 満腹感の低下・食欲の増加

という一般的にはマイナスの効果が見られました。

カーボローディングとの応用

この手法と結果からわかるように、低食物繊維食は「体脂肪を減らす」ダイエットにはなりません。
この食事方法をどのように活用できるか?ランナーであればフルマラソン前によく行われるカーボローディングに応用できるかもしれません。

カーボローディングを行うとグリコーゲンと比例して水分も増えるため、通常1〜2kgほど体重増加が見込まれます。低食物繊維食をカーボローディングと併用することで、カーボロディングによる体重増加を軽減・相殺できるかもしれません。ただし、普段から食物繊維をしっかりと摂れていることが前提です。

食物繊維の摂取量の平均は以下の通りです。
【男性】
30~39歳:18.3g 40~49歳:18.3g 50~59歳:19.4g  60~69歳:20.6g

【女性】
30~39歳:15.9g 40~49歳:16.0g 50~59歳:16.8g  60~69歳:19.8g
2019年度 国民健康・栄養調査,厚生労働省

研究では通常食で1日30gの食物繊維を摂取しています。もし平均的な摂取量の場合、研究結果の半分程度の体重減少しか見込めません。

通常の食事では食物繊維が摂れる食事であることが、良い健康状態を保つためには必須です。食事摂取基準の目標量は1日約20gです。1日30gを摂ることがマストではありませんが、まずは日頃から野菜、果物、芋など食物繊維が摂れる食事を心がけましょう。


参考

Foo, W. L., Harrison, J. D., Mhizha, F. T., Langan-Evans, C., Morton, J. P., Pugh, J. N., & Areta, J. L. (2022). A Short-Term Low-Fiber Diet Reduces Body Mass in Healthy Young Men: Implications for Weight -Sensitive Sports, International Journal of Sport Nutrition and Exercise Metabolism, 32(4), 256-264. Retrieved Aug 14, 2022.

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