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Merry Christmas 2015

いつもよか豪勢な飯ーータンドリーチキンに俺好みなアレンジが入ったブッシュ・ド・ノエル。ラム酒が利いてて、甘ったるくねぇヤツ。普段呑まねぇ値段のシャンパン。
財布のヒモをいつもキツく縛ってる俺の恋人は、こーいう時に出し惜しみはしねぇ。
「せっかくのイベントなんですから、楽しまなきゃ損じゃないてすか」
そー笑って。

俺は知ってる。堅実なお前は、イベント前にひっそりと金稼いできてるコトを。
誰にも何も言わねぇ。だが、俺が把握してる財布の中身よかイベント時のみ金が増えてたら、気付くだろ。
それがお前の気遣い。そして、気付かれたくねーコト。金なんて関係なく楽しんで欲しー。それがお前の願いだから。
だから、何も言わねぇ。望み通り、用意してくれたモノと時間を共に楽しむ。

今日はクリスマス。俺もこっそり金稼いで、八戒にプレゼントを用意しておいた。喜んでもらえるかどーかは分かんねぇが、想いのたけを込めてメッセージカードも書いた。

呑んで、食って、めっちゃ笑って。しゃべりまくって。
楽しー時間の礼に、プレゼントを八戒へつき出した。肝心な時に照れが入る。
素直に笑って渡せりゃイイのに。いつもそー思うんだが、上手く行かねぇ。
八戒は目をぱちくりしてから優しく微笑んで、
「ありがとうございます、悟浄。開けてもいいですか?」
頷くと、丁寧に包装紙を解いて、メッセージカードに目を通し、嬉しそうに目を細めてから箱を開けた。

中に入ってるのはーー本。八戒が読みたがってたんだが人気があり過ぎて、なかなか手に入れんのに難儀した。それでも駆けずり回って、手に入れた。八戒のイメージに合うブックカバーと栞もセットにして。
この本をずっと探してるコトをヤツは誰にも言わなかった。俺だけが気付いてた。
地図を買いに本屋へ寄る時。俺らに気づかれねぇよーに店主に聞いてたから、タイトルは知ってたし、どんな話かの概要も周りの情報を仕入れて聞いてた。
幸せに暮らしてた恋人達に突然襲い掛かる悲劇。時に挫折し、手を取り合いながら立ち向かう恋人達の力強い物語、だそーだ。

「この本、ずっと探してたんですよ。なかなか見つからなくて。良く見つけましたね、悟浄。素敵なブックカバーに栞まで。嬉しいな」
ーー大事にしますね。そう穏やかな声で呟いてプレゼントを机に置き、八戒の手は俺に伸びてきてーー優しく、優しく抱き締められた。
この温もり。匂い。俺の大好きなモノ。

俺らは、旅の途中。いつ、何があっても分からねぇ。
その時にも、その物語の恋人達みてーに手を取り合っていこーな。
お前が読み終わったら、次貸してくれ。俺も読んでみてぇ。お前がソコまで読みたいと思った物語を。
そん時は感想の交換しよーな。

優しく降りてくるキスを受けながら、これから始まる甘い時間の後にそー伝えよーと、思った。

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