10年ぶりの出逢い(5)
「それじゃあ、どうしてるの? はっきり言ってカラダ疼くでしょ? 誰かいるの、そういう人?」
「うん、いちおう…」
旦那ともう10年以上もあれがないと言うサエコ。
かなり酔ったとは言え、初対面の男性にそんなことまで明け透けに語るとは…
オレを信用しているということだろうが、今ひとつ真意がわからない。
いったい何を求めているのだろうか?
こんな女性は初めてなので戸惑う。
ここは素直に〈オレを信用している〉〈オレに好意を持った〉と捉えることにしよう。
「どんな人なの?仕事関係?」
「うん。もう10年くらい続いてる」
「そうなんだ、けっこう長いね」
「悪い女でしょ」
「そんなことない! 気持ちよくわかるよ」
オレの肩に置かれたサエコの頭が小刻みに震えている。泣いているのだ。
そっと頬に手をやり涙を拭ってやる。
「自分を責めてるの?」
「悪い女」
「僕はそんな風に思わないな」
「優しいんだね」
「みんな、誰かを愛したいし、誰かに愛されたいんだよ」
肩に回した腕にいっそう力を込めて強く抱きしめてやる。
「旦那さん、女がいるのかなぁ?」
「わかんない。たぶん特定の人はいないと思う」
「じゃあ、風俗で抜いてるとか?」
「そうかもしれない」
「仲は良いって言ってたけど…」
「うん、旅行とかよく一緒に行くし。話も盛り上がるの。でも私、女として魅力ないのかなぁ?」
「それは逆でしょ。とっとも魅力的だよ」
さて、どうするか…
時間は午前2時を回っている。
この状況から考えてホテルに連れ込むのは簡単だ。
ふたりとも相当酔っているが、なんとかやり遂げる自信はある。
でも、それで良いのか!
こんな状況に付け込むのは男としてどうなのか!
そんな理性がもたげてくる。
オレを信用して秘事を打ち明けたサエコは、オレに何かを求めているはずだ。
それに応えることなく、カラダだけいただくなんてことはできない。
何かを求めている(と思われる)サエコに対して、こちらも向き合わなければ。
サエコにも行きずりのアヴァンチュールで終わらせてほしくない。
オレの胸で打ち震えるサエコ。
男や夫婦間の問題だけでなく、経営者としてのストレスも色々あるのだろう。
雇われサラリーマンのオレには窺い知れない悩みが。
優しく包み込んでやりたい。
(つづく)
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