初デート（１）

サエコとの偶然の出逢いから２週間。
週末の夜に食事することとなった。
それまでの間、毎日LINEでやり取りを重ねたことは言うまでもない。

初デートの場所は都心にある行きつけのベトナム料理店を提案した。
サエコは東南アジア料理に目がないようで、即座にOKの返事をもらった。

午後６時、某駅で待ち合わせ。
サエコはきょうも黒を着ている。
前回よりもっとボディラインがはっきりわかるワンピースだ。
大きく開けた白い胸元にプラチナのネックレスが美しい。

ベトナム料理を食べながら仕事や旅行の話で盛り上がる。
空腹や満たしたところで２軒目を提案する。
ライヴショーが見られる店だ。
主に70年代から80年代の洋楽…ソウルナンバーやディスコナンバーが聴け、興が乗れば踊ることもできる。
サエコも興味を持ったようで即座にOKとなる。

このライヴハウスはもう20年近く通っているが、流石にコロナ期間中は自粛していたから久方ぶりだ。
すでにハウスバンドが演奏を始めていた。
ステージ正面奥のボックス席に案内された。
ウィスキー水割りを舐めながらショーを聴く。

アバ、EW&F、S.ワンダー、M.ジャクソンなど、馴染みの洋楽ナンバーのコピーが次々と演奏される。
女性ヴォーカル二２と男性ヴォーカル１人、バンドはホーンセクションも加えた7人編成。
迫力あるサウンドに圧倒されたようで、サエコの目が生き生きと輝いている。

ステージ前の空間では、すでに5-6人の客が踊っていた。
サエコが踊りたくてうずうずしているのがわかる。
頃合いを見計らって「ちょっと踊ろうか」
「うん、行こ行こ」
リズムに合わせて体を揺らす。
酒が入っていることもあり、サエコは開放的な雰囲気だ。
やがて曲はスローバラードに変わった。
自然とサエコの手を取りチークダンスに持ち込む。
サエコはオレの首に腕を回し肩に頬を埋めてくっついてくる。
オレもサエコの腰に手を回し、体や密着させてチークを踊る。
「タケちゃん、好きっ」
いきなりサエコが耳元で囁き、いっそう強く抱きついてきた。

（つづく）