見出し画像

怪しい翻訳講座にご注意      ○○翻訳カレッジとか○○翻訳アカデミーとか。

翻訳者になりたい方、英会話やTOEICに投資したお金を取り戻したい方、好きな英語をマネタイズしたい方、メルマガやLINEで翻訳講座の「無料体験」「無料動画」を見たことはありませんか?
それ、危ないかもしれません。

情報商材ってご存知ですか?

実態のない「儲かる」情報をあの手この手で売りつける商売です。多少儲かる人が出ることもあるので、詐欺で立件することが難しいのです。そのため、特商法という法律で消費者が契約を解除できるようにしたり、消費生活センターが介入できるようになっています。ネットが発達して、いろいろなタイプが出てきました。そして、翻訳の情報商材に騙される人ができてきました。30万、50万というお金を払って、満足な結果が出ない講座が増えているのです。あなたも、似たような話に興味を持ってしまっていませんか?

詐欺まがい翻訳講座

日本では多くの人が英語を学んでいます。英会話やTOEICの学習記録をXにポストする人もたくさんいます。それなのに、翻訳の資格はありません。大好きな英語で仕事をしたい人、病気や介護、育児でフルタイムが難しいから、在宅で少しでも働きたい人…そういう人にとって、翻訳は魅力的な仕事なのだと思います。だって10年前に病気退職した私もそうだったのですから。

怪しい講座はそこにつけ込んできます。
・自由なライフスタイル
・高い英語力は不要(調査力、日本語力の方が重要)
・隙間時間で月10万、がんばれば年1000万円稼げる
・好きな時間に学習できる
これまでの詐欺まがい翻訳講座が使ってきたキャッチコピーです。似たような宣伝をクリックしてLINEに登録してしまっていませんか?

実は、2018年ごろからいくつもの詐欺まがい翻訳講座が発生、多くの被害者を出しています。1つ目は5億円を集め、カンニングや経歴詐称を示唆して、なしくずしに解散。翻訳業界でも注意喚起が出ました。その後も類似の講座が生まれては消えています。多くの被害者が出ていますが、詐欺とまで認定できず、情報商材屋がバックについているので、返金までこぎつけるのも大変なようです。
最新の講座について、中日新聞が取り上げてくれました。30~50万円の口座で800人以上、総額数億円の被害が出ています。有料記事なので途中までしか読めませんが、それでもひどさが分かると思います。


翻訳者から見た、詐欺まがい講座の怪しさ

私は翻訳会社でチェッカーのパートをしながら翻訳学校に2年半通い、フリーの翻訳チェッカーからスタートして現在は翻訳の仕事をしています。産業翻訳者から見た、詐欺まがい講座のキャッチフレーズの怪しさについて、まとめてみました。
自由なライフスタイル
案件ごとに納期がありますので、計画的に作業を進めないといけません。好きな時間に遊べる自由はありますが、そのためには人が寝ている時間に作業することも…また、守秘義務があるので、カフェや新幹線で仕事をすることはありません。
高い英語力は不要
そんなわけないでしょう? プロ野球の入団テストも、まずは50メートル走からです。翻訳スクールの授業についていけるのは、TOEIC800点、英検準1級レベルからです。扱うのは、ニュース、ビジネス文書を始め、学術文書など専門性の高いものもあるのですから、英語のレベルが低ければ、講座の内容をこなすのに他の人より時間がかかってしまいます。
隙間時間で月10万、がんばれば年1000万円稼げる
普通の翻訳者と同じスピードが出せるようになるまで、1年などの時間がかかります。スキルというのはそういうモノなんです。駆け出しのうちは、1日4時間毎日働けば月10万くらいになるかもしれませんが、そこまで仕事をもらえるかどうかの方が難しいですね。1000万超を稼いでいる人もいますが、それはエースのお話です。オオタニサンにあこがれるのは大事ですが、全員がなれると思うのは愚かです。とりあえずLINEに誘導する講座だけはやめておいた方がいいです。
好きな時間に学習できる
オンライン受講なら、確かに縛られないという面はありますが、逆に空き時間は全部学習、ぐらいでないと、翻訳者になれないと思います。元英語教員、英検1級、TOIEC965点の時点でも、講座の1つ目の課題から知らない言葉だらけでした。翻訳会社で見た工業の用語は、日本語すら分かりませんでした。私は、修業期間の3年間、通勤電車の中も昼休みもずっとスクールの課題や検定の勉強していましたよ。

講師が1人しかいない翻訳講座は要注意

翻訳学校で講師をしている人は、ほとんどが現役のプロの翻訳者です。担当は週に1回から2回です。自分の仕事があるからです。
翻訳の学習は、自分で訳したものを添削してもらって学ぶのが基本です。そして添削には時間がかかります。初心者向けの講座を担当したことがあるのですが、6人の添削に半日かかりました。授業や教材作成を入れると、1日以上かかります。(翻訳の仕事をしたほうが楽だし稼げるな~と思ったのを覚えています。)
つまり、講師が1人しかいない単独の講座なら、受講生が30人もいれば添削とサポートだけで手いっぱいになり、翻訳の仕事をすることができないのです。
「稼げる」と謳っている翻訳の仕事をほっぽって、動画を撮影しLINEで広告を出すのは、それだけの「うまみ」があるからです。動画を自習させ、添削はテンプレでコメントするだけ。セミナーでは上手いことを言っても、具体的なサポートはしない。返金要求があっても自己責任で諦めさ、のらりくらりと逃げる。これが詐欺まがい翻訳講座の実態です。

焦らせる広告は、一旦立ち止まって!

詐欺まがい講座は、LINEで毎日動画やメッセージを送り「反響がすごい」「通知が鳴りやまない」などと言ってきます。その割には、カリキュラムや料金については、ネット検索しても出てきません。
1週間ほどすると「明日、料金と詳細をお知らせします!〇時になったらすぐに申し込んでください!」と言ってきます。でも結構料金が高いのでためらっているうちに「あと〇人になりました!受講を考えている人はお早めに」というメッセージが…
いや、ちょっと待ってください。ネットで料金でてこないの、おかしくないですか? このじらし方、情報商材の典型的な手法なんです(ステップメールと言います)。普通の翻訳スクールなら、検索したら期間、回数、料金、場合によっては教材サンプルも見られますよ。見学もできるし、メールや電話での相談もできます。LINEと動画だけでそんな高いお金使って大丈夫ですか?
老舗翻訳スクール、フェロー・アカデミーの「翻訳入門(1)」と比較してみてください。
https://www.fellow-academy.com/school/primer1/

怪しそうな講座、本当に効果がないのか?

難しいところですが、詐欺まがい講座で翻訳者になれる人もいます。元々力がある人達です。海外で働いていて英語力も背景知識もある人、メーカー勤務で海外勤務をしていた人、語学系の大学出身で勤めながら背景知識を身につけた人(秘書、社内翻訳者、英文事務、国際業務担当など)だったら、多少のノウハウが分かれば、翻訳者になる人もいるでしょう。
詐欺まがい講座の許せないところは、1人でも成果が出たら詐欺じゃないと言い張るところです。また、「誰でも簡単に」翻訳者になれると言っているところです。
翻訳学習には、2つの大きな壁があります。語学力と背景知識です。この2つの壁を必死に上ってやっとできる職業なんです。だから、ご自分の語学と背景知識について棚卸して考えてみてください。
一般の翻訳学校では背景知識も学習します。調査できるようになるには、知識とPCスキルが必要です。また、翻訳支援ツールの使い方などは単発セミナーで学ぶことが多いです。普通は週1回、2~3時間の授業が多いですが、それでも足りないくらいです。
現役翻訳者なら、翻訳の学習が「簡単」だとは言わないはずです。

怪しい講座の共通点

1)LINE、メルマガに誘導してステップメールを1週間送り付ける。
2)公式ウェブサイトはあっても詳細は記載されていないため、LINEに登録するしかない。
3)高い英語力やPCスキル不要、最短3か月で時給5000円目指せる、という甘い言葉をちりばめている。広告が無駄に長い
4)オンライン自由な時間に勉強でき、チャットサポートで質問し放題!
↑大事なので覚えておいてください!  

翻訳学校の講座

週1回、2~3時間。毎回添削。少人数。直接質問できるし、いいところ、悪いところを指摘してもらえる。ウェブで詳細が分かるし、説明会や見学会がある。語学レベルで足きりがある場合も。現実を知っているので、甘いことは言わない。講師をネット検索すると、堅実な活動をしていることが分かる(名前+怪しいで検索して情報が出てくる人は要注意)。

今日のTakeawayは、こちら!

1)LINEに誘導されたら、撤退! 簡単・早いは、ありえない~!
2)翻訳者になりたいなら、まずは通訳翻訳ジャーナルをどうぞ!
初心者には『通訳者・翻訳者になる本 2025』もおススメ♪
https://tsuhon.jp/book/
分野、スキル、スクール、トライアル、副業、翻訳支援ツール、海外エージェント、開業など、情報がまとまってます。
3)Twitter(X)で情報収集を。かなりの数の翻訳者がつぶやいてます。特定の分野の翻訳者をフォローするもよし。セミナー情報も流れてきます。

翻訳の学習、心配な講座についてのご質問、ご相談は、
X(旧Twitter)@bumicchu ぶみにゃんご まで♪

申し込んでしまった!という人、まずは消費生活センターへご相談を。
下記の日本翻訳者協会(JAT)・詐欺まがい講座対策委員会(連絡先メールアドレス:sagimagai@jat.org)でも相談できますよ。




追伸:2023年12月11日、通訳翻訳関連4団体が詐欺まがい翻訳講座について以下のような注意喚起を出しました。参考になさってください。

『近年、「簡単に翻訳者になることができる。高収入を得られる」などの宣伝文句で受講者を集める翻訳の学校、講座等が出現し、「宣伝内容と実際の講座等の内容が異なる。宣伝内容に虚偽が含まれていた」などの理由で、受講者と業者との間のトラブルに発展した事例が報告されています。

さらに、近時、「AIを使った翻訳なので語学力不問で翻訳者になれる」と宣伝する翻訳の学校、講座等が出現し、同様のトラブルに発展することが危惧されています。

「AIを使うと語学力不問でプロの翻訳者になれる」という宣伝文句の根拠はまったく示されていません。

AI翻訳(機械翻訳)の品質は、プロの翻訳者から見るとまだ十分とは言えません。原文と訳文を比較して、訳抜けや誤訳、不自然な表現を見つけて修正する作業が必要です。これをポストエディット(機械翻訳の後編集、「MTPE」)と呼びますが、ポストエディットをするには、原文と訳文の両方を理解する語学力が欠かせません。高性能な機械翻訳や生成AIを使っても、それだけでは商品価値のある翻訳はできません。

また、実際の翻訳の現場では、通常の翻訳案件はもちろんのこと、「ポストエディット」案件でも、情報漏洩等の観点から一般に公開されている機械翻訳エンジン(Google翻訳、DeepLなど)の使用が禁止されている場合が少なくありません。

このような事実に反し、そのような学校、講座等では「AIの便利な機能を使うとパッと簡単に翻訳ができる」という、実際の翻訳作業およびポストエディット作業とはかけ離れた指導が行われていることを示唆する宣伝もされており、業界への悪影響が懸念されています。

こうした宣伝文句を安易に信じ込んでしまう前に、現職の翻訳者に相談するか、翻訳学校などについてもっと情報を集めるようにしてください。

また、受講者に対し、講座の内部情報を一切開示しないこと等を承諾させ、これに違反した場合に高額の違約金を支払うことを約束させる「同意書」に署名させているとの情報も寄せられています。もちろん、講座等の内容を転載するなどは著作権法で禁止されている行為です。しかし、講座等の内容や契約その他の不当性等について、受講者が国民生活センター(消費生活センター)や弁護士、業界団体等の然るべき者に相談するなどの行為は著作権法上も妨げられていません。もし、講座等の内容や契約その他の不当性等を相談するなどの行為が、同意書に反する(違約金が発生する)かのような言辞を受けた場合や、不当と思われる違約金を要求された場合には、安易に応じることのないようにご注意ください。まずは日本翻訳者協会・詐欺まがい講座対策委員会(連絡先メールアドレス:sagimagai@jat.org)にご相談ください。

皆様には十分ご注意いただきたく、お知らせいたします。なお、英語版を作成する場合は日本語版を正とします。

令和5年(2023年)12月11日
特定非営利活動法人 日本翻訳者協会(JAT)
一般社団法人 日本翻訳連盟(JTF)
一般社団法人 日本会議通訳者協会(JACI)
一般社団法人 アジア太平洋機械翻訳協会(AAMT)』

リンク
JAT https://jat.org/ja/news/お知らせ

JTF https://www.jtf.jp/pdf/20231211.pdf

JACI https://www.japan-interpreters.org/news/sagimagai2023/

AAMT https://aamt.info/wp-content/uploads/2023/12/お知らせ_20231211.pdf

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?