史上最も奇妙なダービー
ドルトムントでプロ選手部門責任者を務めるゼバスティアン・ケール氏が、コロナ時代のサッカーについて語った。
ケール氏(プロ選手部門責任者)のコメント
― ドルトムントは土曜日(9日)から検疫(隔離合宿)に入っている。選手たちの日課は?
「ここ数週間は不確実で異常なものだった。そして、ここ数日で物事は非常に早く進んだ。水曜日には政府がブンデスリーガ再開の許可を出した。木曜日には選手たちに最新の状況を伝え、土曜日から7日間、ホテルに滞在することを伝えた。我々はDFLの衛生コンセプトをすべて遵守している」
― 選手が外部と直接接触することはある?
「NOだ。家族や友人の訪問ない。選手たちはこのことを理解している。それに加えて、現在は非常に狭い範囲(分野)の人しか動けないという事実を理解しているし、今後6~7週間はその状態が続くことになる」
― DFLの衛生コンセプトを実行するための課題はどれくらいある?
「対策は多岐にわたるが、我々はそれらに慣れてきており、チームでコンセプトを実行している。ここ数週間でグループでのトレーニングが再び可能になったが、例えば練習場での選手の食事は提供されなくなったし、シャワーは自宅で浴びるようになった。毎日の検温もあったし、今も行っている。選手、コーチ陣、スタッフは週に2回、コロナウイルスの検査を受けている。ちなみに選手たちは長い間、自身のスマートフォンに専用のアプリをインストールしており、それを使って毎朝の健康状態を確認している」
― 検査では具体的にはどのようなことを聞かれる?
「異常や症状はあるか、それぞれの選手の状態について具体的に聞かれる。また、長期的な経過を見ることもできる。少しでも体調不良の兆候があれば、その選手はチームメイトの近くにいることすら許されない。その努力は実際には膨大なものだが、誰もがその措置を受け入れた。なぜなら、それがまたプレーできるようになるための唯一の方法だったからだ」
― しかし、先週のサロモン・カルーの動画からは、すべてのブンデスリーガ関係者が重要なことを理解していたわけではないという印象を受けた。
「もちろん、我々の選手たちもこの動画を見たし、それについての議論は我々のチーム内でも問題になっていた。一人ひとりが、自分とクラブのために、そしてサッカー全体のために、自分が背負っている大きな責任を自覚していることは間違いないと思う」
― クラブOBで元GKのフィリップ・ラウクス氏を新たにスポーツ心理学者として雇った。これも、このコロナ時代を乗り切ることと関係がある?
「来季からフィリップ・ラウクスをドルトムントに連れてくることはすでに計画されていた。スポーツ心理学という重要な分野を、トップチームで恒久的に採用したいと考えていた。大きな目標を達成したいのであれば、すべての分野でトップにならなければならない。しかし今、我々は新たな課題に一刻も早く対応したいと考えていた。我々は現在、全員にとって全く新しい状況に置かれている。選手にとっては特にそうだ。このような経験は誰もしたことがない。このことを考えると、もしフィリップ(ラウクス)をすぐにチームに入れず、メンタル面でのケアを疎かにすれば、それは全くの過失だと思う。特に彼はスポーツ心理学に加えて、プロサッカー選手としての長年の経験も持っている」
― このような状況で、選手は自由に練習したり、プレーしたりすることができるのか?
「我々は何度か選手と話をして、疑問や懸念を率直に述べる機会を与えた。しかし、これまでのところ、根本的な懸念を持った選手は一人もいない。選手たちは、我々のドアがいつでも開いていることを知っている。我々は非常に親密であり、毎日のように交流をしている。もちろん、選手たちは皆心配している。それでも、このコンセプトが本当に信頼できるものであると確信している」
― ディナモドレスデンの2選手にコロナの陽性反応が出たため、ドレスデン市保健局によってチーム全体が隔離された。それでもプラン通りにシーズンを終えることができるという自信はある?
「土曜日の夜、この決定が明らかになったとき、我々は議論をした。もちろん、この決定が2部リーグや我々にどのような影響を与えるかについても議論した。しかし、シーズン全体が危険にさらされているわけではないと思う。このような何かが起こる可能性があることは最初から分かっていたことだ」
― あなたは現在、コロナ時代にフットボールをどのように続けて行くかを議論している「DFLフットボールコミッション」の一員だ。どのように続けて行く?
「我々は毎週、トレーニング方法、リーグの連帯、シーズンの継続方法について話し合っていた。また、コロナによる特別な状況の影響を可能な限り緩和する方法についても話し合った。チームは制限があるため通常の準備をすることができず、テストマッチはなかった。1試合で5回の選手交代は、選手の負担をより効果的にコントロールし、ケガを防ぐ意味もあるので、有益で賢明な措置だと思う。私は、このフットボールコミッションは、誰もが非常にオープンに、そして非常に献身的に関わることができ、ブンデスリーガのために意見や経験が交換される場だと感じている」
― 現在、多くのファンやDFLのザイファートCEOは、サッカーはコロナ危機から教訓を学ぶべきだと警告している。それはどのようなこと?
「現在、サッカーの未来について興味深く重要な議論が行われている。多くのことについて集中的に考える価値がある。しかし、何よりもまず、サッカーの信頼性を失わないようにしなければならない。したがって、将来的にクラブがより大きな経済的安定を実現するための戦略を立てることは正しいことだ。だが、その後も守られるかわからない事を急いで約束しないことはさらに重要だ。しかし、考えられる教訓は何かと問われれば、一つすでに確かなことがある。
ファンがいなければ社会に受け入れられないし、(その先に)サッカーはない」
― ドルトムントは土曜日にシャルケと対戦する。スタジアムにファンがいないダービーを想像できる?
「難しい質問だね。間違いなく史上最も異常なダービーになるだろう。ダービーはファンの感情やスタジアムの熱狂から生まれる。我々はこのような経験をしたことがない。選手たちは、ファンやスタジアムの雰囲気からモチベーションを得られないことを非常に寂しく思うだろう。ブンデスリーガ終盤のラストスパートで決定的なことが一つあると確信している。それは、誰がより高いクオリティを持っているかが問題ではなく、誰が試合中にいつもと違う状況に巻き込まれず、最大のパフォーマンスを発揮できるかということだ」
― ドルトムントの目標はやはりドイツ王者になることだ。しかし、この状況下でのタイトルはどのような価値がある?
「我々は順位表で2位につけているし、チャンスを活かすためにできる限りのことをするつもりだ。でも、そのためには現状を無条件に受け入れて、ピッチ上で全力を捧げるという最大限の意思が必要なんだ。もちろん、ファンと一緒に優勝を祝うことができないというのは奇妙なことだろう。それでも、我々は彼らを幸せにすることができる。それが我々の原動力になるはずだ」
【Source】5月12日、WELT他
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