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小話エッセイ/ウキウキ通りを行ったりきたり

先日、noteで見かけた記事(どなたのものか控え忘れてしまいました、スミマセン)の一節が心に残っている。

その一節とは、うろ覚えだが 

――思っても詮無いことを、いつまでもグジグジと考えていた。

といったような内容の文章であったと記憶している。

グジグジ。最近はあまり聞かない、ちょっと懐かしい響きだ。
「くよくよ」とか「歯切れ悪く」といった意味合いで、上方かみがた落語なんかに出てきそうな良き言葉。
うだるような暑い午後に読んだせいか、書き手のやるせない感じが文面から伝わってくるようであった。

そうして、こういう言葉(オノマトペというらしい)は、時代をより反映しやすいのではないかと考えた。

たとえば、「もふもふ」「まったり」「むぎゅっと」。
平成中期以降に頻繁に使われるようになった言葉だろう。
逆に「わいわいガヤガヤ」「どったんばったん」「きゃぴきゃぴ」などの言葉を使うことは少なくなった。
大きく派手な音が鳴りをひそめ、細やかな感覚を好む傾向が感じられる。

言葉の流行には、漫画も一役買っているように思う。
神々しいものの登場する際の「パアァ・・」
ほのかな光を手の中で灯す「ポウ」。
文字の持つ画的な効果をも見込んだ表現だろう。

これが時代小説のアクションシーンとなると
ひょう——と空を切って矢が飛んだり、
カッ、と刃がかち合い火花が散ったりしたものである。(最近ではどうか知らないが)

この手の言葉で、私の好きなものを挙げるなら、断然

「プシュッ」 だ。

もちろん、その後の「ゴクゴク」「プハァ~ッ」も大好物ではある(大して飲めもしないのだが)。
がしかし「プシュッ」のインパクトと独自性には到底敵わない。

かの音は、すべての始まりだ。
堪えきれない欲望の、僅かな隙間からほとばしり出る、、、、、、、あの感じ。
これから始まる、愉しくも儚いほんの一夜の物語を予感せずにおられないウキウキの音。

それでいて、どこか密やかなる背徳の念をも覚えるのは、
かつての夏、家に帰るまでの間さえも我慢できず、コンビニ前でウロウロした挙げ句こっそりプルタブに手をかけた記憶によるものだろうか。

そんな事を考えながら、今宵もひとり「プシュッ」に耳を傾ける。
窓を開けると、薄くなった雲間から琥珀色の陽がみえた。




※約1ヶ月半、夢中になって書いてきた小話エッセイですが、新たな小説の準備に取りかかるため、しばらくは不定期更新となります。

ここまでのおつきあい誠にありがとうございました m(__)m


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