見出し画像

ベトナム企業の「股東」

 ベトナム企業に対するデューデリジェンス業務の遂行中,定款や株主総会議事録などを見続けていたら,思考が脱線。

画像1

 日本語で「株主」と表記される英語の”Share Holder”は,ベトナム語では”cổ đông”という。これは漢語に由来する“漢越語“の一つ。そのため漢字で表現できる。
 cổは「股」,đôngは「東」となるが,その「股東」は,現在の中華民国と中華人民共和国でも”Share Holder”の意味で使われている。
 「股」は“二股“とか分かれるイメージがあるので“Share”に当てたのだろが,どうして”Holder”は「東」なのか。
 どうも,春秋時代,大国の秦,その「東」に位置した小国の鄭が,請いて秦の東方進出の手助けをしたという故事から,漢語の「東」には客人(秦)をもてなす「主(人)」という意味があるらしい。
 ただ,「東」も確かに「主(人)」の意味ではあるが,“Holder”というより,むしろ“Host“の意味に近い。
 以下,たんなる思いつき。
 欧米の侵略を受けていた当時の清は,彼ら力の源である「株式会社」について,積極的に吸収した明治の日本と違ってこれを蔑視し,お金を出してくれる人ぐらいな意味で,あえて“Holder”に「東」という文字を充てたとも思える。
 中華人民共和国の会社制度は不勉強のために知らないが,もしかしら現在でも「股東」はそのような扱いを受けているのかもしれない。
 ちなみにベトナムの“cổ đông”は,まだ貴重な存在なのか,なんだか日本よりも実利的に礼遇されている印象ではある。

東京で弁護士をしています。ホーチミン市で日越関係強化のための会社を経営しています。日本のことベトナムのこと郷土福島県のこと,法律や歴史のこと,そしてそれらが関連し合うことを書いています。どうぞよろしくお願いいたします。