ダサい男子よ、がんばれ
ダサい男子を見ると、応援したくなる。
「ああ、お前、ダサいな~。いいよ、いいよ。がんばって将来は幸せになってくれよ。」
と思う。
なんか少し上からものを言っているように聞こえるかもしれないけど、そうではない。
自分自身がクソダサかったから、そう思うのだ。
昔の自分を見ているようで、そして、同じダサ道をひた走ってきた先輩として、心からのエールを送りたくなる。
私は、自分でいうのもなんだが、まぁ、ダサかった。
小さな田舎の町に住んでいて、いわば周りの人間ほぼ全員ダサかったんだけど、そんなダサ集団の中でもひと際ダサかったと思う。
その言動が、その挙動が、その服装が、その発想が。
ダサ界のトップランナー、ダサカーストのバラモンだった。
そんなダサ王だった私も、今では少しだけダサさが減った。(と信じたい。)
休日を奥さんと(私にしては、なかなか素敵な奥さんと結婚できた)、小ジャレたカフェなんぞで過ごすこともある。
そんなとき、閑静な住宅街に迷い込んで来たタヌキのように、ちょっと周りの空間とかみ合っていないダサ男子を見かけた。
小太りで、メガネで、色黒で、変な英字プリントのTシャツで、ウエストポーチで(今、また流行してるらしいけど)、絶対童貞で。
落ち着きがなく周りをキョロキョロしたり、じっとメニューを凝視したりしている。
「お前、だいじょうぶか?一人でこんなとこ来なくても、マックとか行ったらよかったのに。俺のテーブル来るか?」
かつて、小太りで、メガネで、色黒ではなかったけど、母親の買ってきた変な英字プリントのTシャツ来てて、ウエストポーチはしてなかったけど、ほとばしるほど童貞だった私は、心の中で思う。
もう完全なる邪推でしかなく、余計なおせっかいでしかないんだけど。
「お前もつらいよな。興味の9割5分が女の子にしかない時期に、全然女の子にモテなくて。オシャレな服屋とか、入るのも怖いしお金もないしで、そんな変なTシャツ着てるんだな。」
そう思って、目の前の奥さんの話なんか全然聞こえなくなってしまう。
私は、彼らのような人たちにこそ幸せになってほしい。
世界とは彼らのためにこそあるべきだと思う。
将来、本当に好きな人ができて、その人に少しでも近づくために必死に努力して、ただ顔が良くてチャラチャラしてただけのヤツらなんかよりも中身がある男になって、それでもやっぱりブサイクだし結局その大好きな人には振り向いてもらえなくて、死ぬほど泣いて、でもまたがんばって、それを繰り返してちょっとずついい男になって、素敵な奥さんと巡り会ってほしい。
そんで、いつか昔の自分みたいな男子を見て「ああ、あの頃は俺もダサかったなぁ」なんて思ってほしい。
イケメンでスマートなやつが、サラっと幸せになる話なんて何にも面白くない。
やっぱり面白いのは、いつだって底の方から這い上がって、幸せをつかみ取るストーリーだ。
世界がそんな物語で溢れるよう。
ダサい男子よ、がんばれ。
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