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暑い夏だった。

まだ5月だというのに連日真夏を思わせる日差しが降り注ぐ。ブルーベリーの熟期も例年より前倒しになると読んで当初予定していたグランドオープンの日を1週繰り上げて6月10日のスタートになった。
昨年はプレ⁻オープンという形で農園の半分を開放してのトライアルオープンだったが、今年は植栽したブルーベリー全数の収穫が可能になることから全エリア解放のグランドオープンである。
事業を立ち上げて4年、幾多の難関を乗り越えて迎えたグランドオープンは感無量だった。
かなりしっかり準備してきたつもりでも、想定外の事態はかならず起きる。あとから振り返えると大半が自分たちの勉強不足や想定の甘さに起因するものなのだが、窮すれば通ずということばもある。思ってもみなかったところから打開の道が開け、明るい未来が見えてくることも経験した。
そんな、ひと夏を振り返ってみたいと思う。
 
■     日照りは続く、今年は豊作だ!
 梅雨らしい雨もなく太陽をいっぱい浴びてたわわに実を付けたブルーベリーが早生から晩生まで熟期順に配置されている。去年より木も一回り成長し実の量も多そうだ。これなら来園いただくお客様にも十分楽しんでもらえるだろう。生産農園として摘み取り発送する量も十分確保できそうだ。上々のスタートである。

■     ヒヨドリの襲来
オープンして間もなくのこと、なんだか去年よりヒヨドリやスズメの数が多いような気がして話題になり、テグス張りをして様子を見ることになった。そうは言いながら、去年はほとんど気になるほどの被害もなかったこともあり、少しくらいやられても大被害にはならないだろうとたかをくくっていたのだ。対策を考えていなかったわけではない。日本野鳥の会に調査を依頼したり、ソーラーシェアリングの架台に防鳥ネットを張るテストも進めてはいたが、実際には無防備のままでシーズンイン、滑り出しは順調で大粒の実がシッカリ実り、いい感じだった。ところが何ということか、7月1日を境に一気にヒヨドリの大群が襲来、わずか3日ほどで熟した実をほぼ全数ついばみ、落果させてしまったのだ。
まだシーズン入りしたばかりで、サアこれからというタイミングでの出来事だった。放置しておけば、今夏の営業はもう終わりだ。これから熟していくエリアは何としても守らねばならない。
それからの1週間、スタッフ総動員、応援に駆けつけてくれた会員有志の力もお借りして防鳥ネット張りに専念したのだった。
愛らしい小鳥の鳴き声が魔鳥のさえずりに聞こえてきた。

■     ウーン、会員が増えない
グランドオープンの年を迎え、これまでのプレ会員制度を解消し新しく年会員制度に移行することになっていた。計画では、プレ会員の8割が年会員に移行してくれると見込み、新規加入を加えて合計1500人の年会員獲得を見込んだ。そうすれば経営は軌道に乘る。
取らぬ狸の皮算用とはこういうことを言うのだろう。計画どおりに事が運ばないのは世の常とはいえ、まったくの誤算に頭をかかえてしまった。
考えてみれば、プレ会員も親族知人を中心に声をかけまくって集めた400数十名である。ほぼ声掛けはしつくした中で新規会員を獲得することの難しさは想定をはるかに超えるものであった。
さあ、どうしたらいいのだろう。

■     法人会員とのコラボレーション
個人年会員と併せて法人年会員の募集も行ってきた。今日現在の法人会員数は10社、個人とは異なり数を集めることを目指しているわけではない。われわれと価値観を共有できる法人に会員になっていただき、この人たちと一緒に地域社会づくりに取り組みたい。共益共存でコラボレーションできれば最高だ。
そんななかで、この夏S生協との関係が熱い。一緒にソーラーシェアリング発電所を創ろう、建設費で足りない部分はS生協側で負担する、発電した環境価値付きの再エネ電力はS生協に供給する、パネル下ではワイン用ブドウを実証栽培する、これらを本年度中に実行に移し、次のステップではより大きな発電所づくりを目指す、S生協負担の資金は積み立てられている自然エネルギー基金と組合員からの寄付金を充てる、概略こんなことなのだが、われわれにとって特に有難かったのは多くの組合員からのご寄付である。寄付金自体もさることながら、それ以上に寄付に応募してくれた組合員の数が短期間に1000人を超えたという事実である。それも全員が来園可能な周辺地域の住民だ。これは私たちの事業価値を理解してくれSBGの個人会員になってくれる可能性を秘めた人たちが周辺地域にそれだけ存在することを意味する。最初からこんな展開を想定していたわけではないが、お互いの信頼関係を深めていく中で形になっていった。

■     暗中模索・試行錯誤だけじゃダメだ
暗中模索し試行錯誤する中でひと筋の光明を見つけ道を切り拓いていく。特にわれわれの取組みは他に例のない未知の世界へ挑戦なので不測のファクターが多いのだが、ただ、こんなことの繰り返しから早く脱却して計算通り事が運ぶのが8割の世界に行きつかないとダメだ。
今の取組みがアドベンチャラスであることは確かだが、われわれは冒険家でも探検家でもない。つまずいたら誰かが手を差し延べてくれる保証など何もない。自立した事業家であることを肝に銘じて、前に進んでいかなければならないと思う。
                             (2023年9月9日 山川陽一)


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