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わたしたちがめざすスマート農業

スマートフォン、スマートテレビ、スマートハウス、スマートメーター・・・。最近は「スマート」な名前が巷にあふれています。農業分野もご多分に漏れず、「スマート農業」という言葉が盛んに言われています。また、農業の「DX(デジタルトランスフォーメーション)化」という言葉もよく聞くようになりました。スマート農業とは、ロボットや人工知能、情報通信技術を活用して、農業を取り巻く課題を先端技術で解決する取り組みです。デジタルフォーメーション(DX)も同じような意味ですが、食料・農業・農村基本計画(令和2年3月31日閣議決定)では「デジタル技術を活用したデータ駆動型の農業経営により、消費者の需要に的確に対応した価値を創造・提供できる農業」と定義しており、DXの方がより包括的な概念になっています。
今や農業従事者人口の内65歳以上が7割に達し、後継者がいないため耕作放棄地が増加している現実があります。労働集約的スタイルを続けている限り、生産基盤を維持していくことは困難であり、食料安全保障上の問題が背景にあります。
一方で、展示会に行くと、自動運転トラクター・ドローン・センサー・クラウドサービス・・・、華やかに技術を競っています。しかし、「何のためにやるのか」とういうことが欠落し、個別技術に偏り、人の存在が希薄になっているような気がします。

さて前置きが長くなりましたが、私たちの農園でもDX化を図ることは必須だと思っています。そこで、この農園でどんなことができるのだろか、少し考えてみました。

■省資源化
ブルーベリーを1株毎ポットに植付け、1日数回潅水をしていますが、晴れの日に合わせて潅水量を調整しているため、雨の日には無駄に水を消費しています。例えば、ポットの水分量を測定し潅水量を調整したり、気象条件から葉っぱの蒸散量を推測し最適な潅水制御を行うことにより、水資源を節約することができます。

■虫鳥獣害対策
「鳥がやってきたぞ!」⇒「鳥追いロボット発動!」
あるいは
「毛虫が大量に発生したぞ!」⇒「スタッフ全員にアラームを発報!」
鳥や虫が群れでやってくると、あっという間に食べつくされてしまいます。カメラやセンサーを使って、異常を早く見つけたいのですが、7,000㎡もある敷地をどうやって見張るのか?難題です。

病害虫被害最小化

■ロボットの活用による省人化
「鳥追いロボット」と書きましたが、姿はタカに似せ、鳴き声を発し羽ばたきしながら飛行するロボットなどは試作されています。その他、草刈りロボットがあれば、真夏の草刈りから解放されどんなに楽になるか!

■参加型農業の構築
私たちは学生、障害者、子育てママなど多様な人たちに参加してもらいたいと考えていますが、農業はノウハウ・知識の塊で、素人が簡単に手を出せません。しかしそれらをデータ化し、各人のレベルに合わせ作業を手順化すれば、多くの人に農作業に参加してもらうことができます。
さらに「熟練農業者の技術・判断の継承」事例として、剪定技術の学習支援システムがありました。悩みながら剪定作業をしている身にとっては、今すぐ欲しい!

剪定技術の学習

■廃棄ロスの削減
来年観光農園としてオープンしますが、来園者が摘み取る以上の実が成ることが予想されます。摘み取られなかった実は、私たちで収穫し商品化しますが、収穫タイミングを逃すと廃棄物になってしまいます。花をつけた時期や気候条件から、収穫量を予測し、収穫タイミングに合わせ人員を配置することにより、廃棄ロスを削減し生産性を向上することができます。

その他にも、高品質化、高付加価値化、農業生産活動に伴うカーボンニュートラル化など色々可能性はありそうです。
こうやって考えていくと、どうやら私たちが本当に欲しいのは「農業経営に直結する情報」のようです。
日々移ろう環境や生育状況、あるいはマーケットや観光情報などに基づき、栽培システムを運用し、収穫時期を見極め、旬の食材をお客様に届ける。そして、それを実現するための「農業ビッグデータプラットフォーム」を構築する。

農村には、自然と共生してきた里山の知恵があります。これを未来に向けてアップデートし、超高齢化社会に直面している農業の課題解決の手段として情報コミュニケーション技術を活用していきたいと考えています。

(小林 2021.11.27)

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