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エネルギー基本計画とソーラーシェアリングの可能性

こんにちは。さがみこファーム代表の山川勇一郎です。

今日は国のエネルギーの根幹を決める「エネルギー基本計画」についてのお話です。

私達は親会社のたまエンパワーで地方自治体や企業の脱炭素化の支援も手がけているので、そっちの観点から話をしてみたいと思います。

さて2021年10月22日、国の電源構成を決める第6次エネルギー基本計画が岸田内閣で閣議決定されました。

昨年、菅前総理大臣が2030年CO2マイナス46%、2050年CO2ニュートラルを宣言、遅ればせながら日本もようやく脱炭素化に向けて動き始めました。今回、正式な閣議決定と共に、今まであいまいだった目標数値の内訳が公開されました。

それによると、主力電源として位置付けられた太陽光発電は「2030年に117.6ギガワット(GW)を目指す」とされています。これは現状の55.8GWからほぼ倍増で、カテゴリ別では、公共施設等が4GW、荒廃農地の活用+自治体のポジティブゾーニングで8.4GW、自家消費で10GWなどとされています。

CO2排出量の増加と気温上昇のスピードと考えると117GWでも足りないぐらいですが、実際の数字を個別に見ていくと、それでも相当高いハードルであることが分かります。

数字が大きすぎるので、市町村レベルの目標値に落とし込んでみましょう。

ざっくりと人口比で計算してみます。日本の総人口が1.2億人なので、私が住む多摩市(人口14.6万人)は全国比1:822、さがみこファームの農場のある相模原市(人口72万人)は全国比1:167となります。これを「市町村レベルの目標値」と仮定します。

そうすると、「公共施設等への追加導入」(つまり屋根上太陽光など)は、多摩市は7.2メガワット(MW)、相模原市は36MWとなります。相模原市の小中学校115校全ての屋根に100kWずつ載せても11.5MW、目標値の1/3弱にしかなりません。それも2030年までの9年間に、です。

では「農地」はどうでしょう?
ソーラーシェアリング型の太陽光発電でおよそ20㎡/kW程度の農地が必要とすると、相模原市は100haの荒廃農地に50MWのソーラーシェアリングを設置しなければいけない計算となります。弊社は現在272kWの発電所を運営していますが、計画を合わせても約500kW、上記の地域での導入目標の1/100程度です。

みなさん、これらの数字をどう見ますか?

「非現実的」「そんなのできるわけがない」「どうせ現場を知らない役人が机上で描いたんだろう」・・・そうした声が今にも聞こえてきそうです。
でも、ちょっと待ってください。これまで「現在の延長」で考え、行動してきた結果が深刻な気候変動問題を引き起こしているわけです。「どうすればできるのか?」と考えるのが、未来からのバックキャスティング(=逆算思考)です。もちろん簡単ではないですが、子どもたちの未来を考えた時、今、大人が動かなければいつ動くのでしょうか?グレタさんに言われるまでもなく、意識と行動を切り替えないと日本は沈みゆく国になってしまいます。

しかし、FIT制度が終焉を迎える中、FITに依らない再エネを向こう9年間で倍増させる、というのは実際問題極めて高いハードルです。補助金や規制緩和、投融資の促進、系統運用ルールの見直し、電気保安ルールの改正など、政策を総動員して「しっかり取り組めば儲かる」形を作らないと、民間投資は増えないと思います。一方で手綱を引きながら、一方で促進する。太陽光の無秩序開発を許してしまったFIT制度と同じ轍を踏まないよう、国の本気度が試されます。その上で、市町村や民間の事業者も意識を切り替え、覚悟を持って実行しないと、目標は絵に描いた餅になります。

農地についていえば、ソーラーシェアリングが有力な選択肢であることは疑いようがありません。ただ、実際に進めようとした場合、農業の担い手を確保し、地域との信頼関係を構築し、自然環境に配慮しながら進めないと、地域住民や行政(特に農政や農業委員会)の理解は得られないというのは経験上、断言できます。農業には農業の理屈があり、地域には地域の事情があります。それを理解して進めないと、いくらいいことをしていると言ったとしても反対の憂き目にあってしまいます。

私たちは「地域共生型再エネ」を目指し、耕作放棄された農地を再生してブルーベリーなどを栽培しています。時間はかかりましたが徐々に広がり、管理面積は1.7haに広がりました。ベストだとは思いませんが、少なくとも「地域で前例があること」は次へのステップにつながると思います。

2050年ゼロカーボンを掲げる自治体は2021年10月末時点で479自治体に上っています。今後それらが一斉に脱炭素計画をつくることになります。企業も大企業のみならず、中小企業にも脱炭素化が求められます。需要に対して再エネ電源が圧倒的に足りていません。良質な再エネ電源の取り合いになることは明白です。
再エネ(太陽光は特に)は地域に薄く広がっているので、地域で作って地域で消費するのが最も合理的な選択です。農地でソーラーシェアリングをつくる、公共施設で太陽光発電を自家消費し、余ったら地域で売る、FITに頼らない再エネを地域で広げていく必要があります。

自治体のみなさん、地域企業のみなさん、土地所有者・市民のみなさん、金融機関や大学のみなさん、どうすれば目標を達成できるのか、みんなで知恵を絞りましょう。

例えば、再エネ調達100%を目指す企業が、地域のソーラーシェアリング発電所に投資をし、電力小売会社を通じて再エネ電気を調達する。電気だけでなく下部で育てた農産物も購入する。そうして荒廃農地を再生し、エネルギーも農作物も地産地消するといった取り組みが考えられます。私達も今後そうした熱意のある地域企業と一緒にチャレンジしてみたいと思います。

地域マイクログリッド、EVや蓄電池を活用したVPP(=仮想発電所)、ノンファーム型接続、コミュニティでの電力マネジメントなど、テクノロジーを最大限活用して、系統に再エネを最大限導入することにもチャレンジすべきです。地域防災や買い物弱者の支援など、地域課題解決に資するような取り組みと組み合わせることで、地域により受け入れやすくなると思います。

大きな目標を達成するには、まず自分たちのマインドセットを変えるところから始まります。ぜひ、地域から、取り組んでいきましょう。
(2021.11.6 山川勇一郎)

▶︎たまエンパワー株式会社のウェブサイト

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