ぼくが営業をやめた理由 #1
昨年5月頃、身長168cm体重100キロの私(牛乳特売日)は、常に転職アプリを開いていた。
就職して2年目である。
仕事はコンサル(営業)。コンサルという名前を利用しているだけの、ただの営業だ。
会社での人間関係は良好だった。
仲の良い同期2人、ちょっと舐めてかかっても許される1つ上の先輩、優しくて包容力のある2つ上の先輩、怒ったところを見たことがない支社長。
トラブルは一切なく、心の底から楽しく生活していた。1年目の夏までは。
1年目、蝉がバカうるせえ季節になった頃の朝9:30、抜き打ちで本社から重役が襲来。
緊急会議の始まりである。
理由は支社全体の営業目標(ノルマ)未達のためだ。
ふと包容力先輩を見ると、目が死んでいた。
支社の全員がその日に入れていたアポイントを全てキャンセルし、私は重役が飲むコーヒーを買いに行き、私以外の同期は機嫌取りの雑談で先制攻撃を仕掛け、キレずらい雰囲気を作る。
特に打ち合わせをしたわけではなかったのだが、なぜかここの連携はガッチリはまっていた。
しかし、コーヒーを持った私と同期2人は、新卒一年目で目標(ノルマ)がなかったため会議室から追い出された。
待つこと2時間。
会議室から神妙な面持ちをした重役が出てきた。
すかさず同期2人が雑談をしに行く。
私は先輩たちがいる会議室へ向かった。
会議室の中は、地獄であった。
泣き崩れている先輩方、天を仰ぐ支社長。
次の日、1つ上の先輩が退職した。
突然だった。
しっかり者で、お調子者とは程遠いがボケは通じる良い先輩。仕事面でも几帳面さが光る人間だった。
その次の日、相談もなしで同期2人が退職の意向を支社長に示し、2ヶ月後にはどちらもいなくなった。
和気藹々とした狭い事務所が、瞬く間に広くなった。
事務所には支社長と包容力先輩、私だけである。
新卒の私に目標(ノルマ)が割り振られた日、支社長は私に言った。
「牛乳くん、君はやめないよな😅」
辞めれない雰囲気になっちゃった。
私は営業が苦手な方ではなかった。
もともと人を喜ばせることが好きな人間で、小中高のクラスではムードメーカー、大学では飲みサーの部長だ。
コミュニケーション能力には自信があった。
そして人生の中であまり苦労もしてない。
部活でもあまり努力せずにレギュラーで試合に出ていたし、高校大学受験も勉強せず合格するような所に行っていた。
もちろん、就活も面接対策などやらず、あまり深い考えを持たない状態で受けた全ての企業から、内定を獲得した。
つまり何を伝えたいかというと、これから私は人生で初めての窮地を迎える。
同期、先輩が退職したにも関わらず支社としての目標(ノルマ)は変わらなかった。
一年目とは思えない目標金額を目にした僕は、あの日の支社長のように天を仰いでいた。
支社長は私に言う。
「お前は天才だからできる。無理はするなよ。」
いや無理せなあかん数字やろ、と言いたい気持ちを押し殺し、頑張りますと一言返す。
そこからの私は土日返上で昼夜問わず働きまくった。
支社の管轄内すべてにテレアポをし、アポイントを詰めまくり冗談をしまくった。
しかし、結果は契約2件(しかもショボい)。
経験もスキルもなにもかも足りなかった。
必死でトークをしていた僕を商談相手が見て、
「欲しいと思ってたけどいらなくなってきた。」
と言った。
この時点で転職を決心した。
アポイントから事務所に帰るなり退職の意向を伝えるため、支社長の元へ向かう。
息を切らした僕の前に包容力先輩が現れる。
「あ!牛乳くん!私辞めることになった!」
めのまえがまっくらになった。
支社長の元へ向かっていた僕は踵を返し、トボトボと自分のデスクに戻る。
包容力先輩は前々から支社長に退職の相談をしていたという。
今辞めたら会社へ迷惑がかかるという思いから退職という2文字はどんどん薄れていった。
包容力先輩がいなくなってからの数ヶ月間は、今振り返ってみても異常だった。
出社前にストレスから嘔吐。
商談前に嘔吐。
帰宅後に嘔吐。
眠れない。
大好きだった、人と話すことも大嫌いになっていた。
そんな状態でうまく行くわけがなく、営業結果は散々であった。
そして3月、重役が来た。
会議室で私の重役のマンツーマンである。
最初は優しかった重役が私に罵詈雑言を浴びせ、人格を否定される。
ついには私の親の否定までされた。
私はこの時、怒りを覚えることなく自責をしていた。
もっと自分が営業できていれば、もっと自分がこうしていれば...。
そんな考えばかりが頭でいっぱいだった。
身体の膿を出したかのようにスッキリとした重役は、本社へ帰っていった。
私は指導してくださった重役に長文のお礼メッセージを書き、夜11時に送信する。
この会社での常識だった。
一種の洗脳状態であったと、今は思う。
つづく😊
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