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ひさしぶりに食べた故郷の味

 こんにちは。
 名前を持たない私です。
 今日は体調があまり芳しくないようなので、お花見の予定は取りやめ、整体が終わった後、家に帰ることにしました。

 その道すがら、晩ご飯のおかずを買わなきゃなあとスーパーに寄りました。そこで見つけてしまったんです。――河内晩柑を。
 みなさん、河内晩柑をご存知でしょうか。熊本発祥の三月下旬から初夏にかけて流通する蜜柑は、私の故郷、愛媛でも多く生産しております。ゴールデンウィークにはよく祖父母の家で河内晩柑が出されたものです。親戚のおじさんおばさんも集まって、河内晩柑の厚い外皮を剥き、内果皮を剥いて実を食べます。
「おお、酸いね、酸いね。こりゃ食べるのがちと早かったわ」
「ほれ、こっちは熟しておいしいぞ。ひとつぶやるわ」
 そう言って、口をすぼめて眉を寄せる祖母を、親戚のおじさんが笑っていた、いつかのことを思い出しました。
 私の手は不思議と河内晩柑(2個入り)を手に取っていました。

 家に帰り、詰められたビニールの封をきりました。ぷぅん、と漂う柑橘の香りといったら………。温かい時期に流通する蜜柑の、あの爽やかで、どこかあおさを感じさせる香りが鼻腔をくすぐります。手で皮を剥こうとしたけれど、私は片腕があまり動かせないため、いそいそと包丁で河内晩柑の頭とお尻を切りました。とたん、強くなる香り。
 内果皮を剥くというのをすっかり忘れて、私は一個を食べました。こうしてnoteを書くに当たり、調べてみて、「どうりで記憶と味が違っているはずだ!」と納得しました笑

 正直言って、私は夏みかんが苦手でした。果実の体はあんなに大きくて、黄色いのに、こどもの舌ではちっとも甘さを感じ取れませんでした。酸っぱくて、苦い。それが私にとっての夏みかんの印象です。それを、おいしい、おいしい、と言って食べる祖父母も親戚も母も、みーんな宇宙人に見えていました笑

 こうして河内晩柑を食べたのは実に5年以上ぶりです。酸っぱさのなかにある仄かな甘み、じゅわわと喉を滑り落ちていくたっぷりの果汁。それでいて、後味はさわやかで、すっと鼻に柑橘の香りが残る。
(あぁ、たしかにこれは暑くなってきたゴールデンウィークや初夏に食べたいみかんだ)
 そう思ったのでした。

 最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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