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パリのルーヴル美術館で彫刻の髪形が気になる美容師

フランス・パリのルーヴル美術館で、人体の立像彫刻を見たときのことです。

大理石で作られた立体美によって、身体のどの部分からも輝きがあふれているのですが、職業柄とくに後ろ髪が気になって、髪の毛ばかりをずっとながめていました。

ながめながら、
彫刻家は、石を掘り込んで、立体的な像を作り出すのに対して、
美容師は、毛髪を切り込んで、立体的な髪形を作り出しているところに、なにか共通点があるような気がしました。


そこで今回、「彫刻家の作る彫刻」と「美容師の作る髪形」の、それぞれの特徴や共通点などを、西洋美術史や芸術哲学や形の本を頼りに比較してみようと思います。

人をモチーフにした石像は、容姿の美しさを表現することに加えて、石に彫刻家の魂を込めることによって、人間の内なる生命の力強さを表し示すことが本質的な目的のようです。

なので、髪を含んだ頭部はそこまで重視されていないと書かれていました;;

美容師にとっては、髪形を作ることが目的ですから、美容師のエネルギーは髪や髪形に注がれています。

彫刻は、流行を超越する「究極の美」といわれるのに対して、美容師の作る髪形は表面的で、流行という社会現象に左右される「一時的な美」です。

でも「流行の髪形」「似合う髪形」は、アイデンティティと結びつけられて、日常の精神にプラスのエネルギーを与えてくれます。
一時的なはやりの髪形であるけれど、なかなかの力はあると思います。

次に、彫刻を作るための石と、髪形を作るための髪の毛といった、「素材」を選ぶ手段の違いと、それぞれの「作られる美」をさぐってみました。

彫刻は、作品の仕上げのイメージに合わせて、大理石の種類をあらかじめ選ぶことができます。

特に人体像などは、肌のきめ細かさ、なめらかさ、鮮美な白さなどのために、肉体美が表現できる種類の大理石を選ぶようです。

そして作られた彫刻は、半永久的に存在する「造形美」です。

それに対して美容師の場合は、ヘアーショーでないかぎり、あらかじめ作りたい髪形にあった髪質や長さのあるモデルを選ぶことはできません。

お客様が「理想とする髪形」と、実際のお客様の髪質、毛量、長さなどがその髪形に適しているとは限りません。

カットの技術や色などを工夫することで理想の髪形に「合わせにいく」といった技術が必要となります。

流行によって変わるかたちを作り、また目や皮膚などの身体に対して機能的にと作る髪形は、造形美と機能美を併せた「第三のわざ」による美だといえます。


そして、両者の特徴の1番の違いだと思うところは、彫刻は掘った通りの「あるがまま」の姿を示すのに対して、髪はふかれる風や身体の動きによってかたちが姿を変えることです。

彫刻は作られた形が半永久的に保たれ「耐久性」があります。

ところが、髪は生成消滅を繰り返し、作られた髪形は風や動きでかたちを変えるなど「はかなさ」や「ゆらぎ」を伴います。だからこそ「今」を楽しめる美しい髪形を作りたいと思います。


最後に、彫刻家と美容師の究極の共通点は、この手によって石や髪を削ったり切り込むなどしながら「美しい形」や「美そのもの」を追い求め答えを探し続けていることなのだと思います。

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