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「美の実践者」である美容師とは?

美容師が髪を切っている時や、仕上げのセットをしている時など、

美容師はヘアスタイルを作りながら、美しい形を実現させるための技術の実践と、

人に対しての、思いやりや気配りといった道徳的な行いを実践する「美の実践者」であるといえます。


たとえば、結婚式を間近にひかえた女性のお客様がご来店され、美しい髪形、キレイな髪色、ツヤ感のある髪を希望されたとします。

その思いに応えようとする美容師の心のあり方は精神の美に関わってきます。

お客様が求める美しい髪形を想像するときは、美容師側の美的センスが関わりますし、

即興性を交えながら髪を作っているときは、即興によって生まれる美も関係してきます。

ところで「これが美しい形である。」「これが美しい精神性である。」と判断するときの美の判断とは感覚的なものだけなのでしょうか?

それとも、理性や知性によるものなのか。

それとも、精神によるものなのでしょうか。

哲学者カントによると、美しいものを判定するためには精神の力や知性の力など、内的な熟成に裏付けされた感性の豊かさが必要であると述べています。

美しい髪形を作るときは、なんとなくの感覚によって作ることもできます。

流行の価値観に従ったヘアスタイルを望むお客様がいる場合、それを可能にする技術も評価されるべきです。

何故かと言えば、こうした技術による形の美は二次的な条件となり、一次的な心の美につながるからです。

こうしてみると「美の実践者」である美容師には、制作に関わる技術的な美には、感覚だけではなく知識も大切ですし、

情緒や知性といった精神の美の知識と、

倫理的な知恵を持つことが大切なのだと感じます。

それらの知恵が支えとなって、感性が豊かになり、内的な成長につながっていくのではないかと思います。

美に対する広い知恵や背景を持ち合わせるほど、作られるヘアスタイルの美しさや、内面から出てくる美しい会話や振る舞いなどから表れ出る人柄も高まっていくのではないでしょうか。

これらの美の問題を、美学を頼りにしながら、美容の仕事を中心に、ささやかにゆっくりと紐解いていこうと思います。

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