考えたくないことほど頭に浮かぶ

考えたくないと感じている物事ほど頭から離れなくなる。

あることについて意図的に考えないようにしようとする努力やその過程は思考抑制と呼ばれている。過去に行われたWegner(1994)の実験を元に、今でも関心が向けられている内容だ。

また、思考抑制によって抑制しようとしていたことがより思い出されたり、より抑制しにくくなっていくことは逆説的効果と呼ばれている。
抑制しようとした瞬間にその物事が頭の中で思い出され、さらに抑制しようとしている間も思い出され続けることで、考えないようにするほど頭の中がそのことでいっぱいになるという現象である。

大体の人は心配事が頭の中から消えなくなることを経験している。特に新しいことを始めたり、失敗をしたばかりであったり、何かしらの不幸が起こっている時にはなおさら。
心配事は、頭の中で繰り返すのにうってつけの内容だから止めることは容易ではない。しかも、考えることのリスクは少なく、もしかしたら考えることで良い結果になる可能性もあるから、考えずにはいられない。
ただし、デメリットとして抑うつ的な気分が持続するということはあるだろう。心配事を考えれば考えるほど心配になり、今の状態を楽しむことが難しくなる。さらに理性的に物事を分析する力も弱くなり、心配事にとらわれ、巻き込まれることもある。

考えたくないのに考えてしまうのは、考えたくないことを考えないようにしているからだ。まさに皮肉にも、考えたくないと対象を引き離そうとするほど考えてしまうという逆説が起こっている。

そんな自分に気が付いたら、まずできることがある。
「自分は今、考えたくないことを抱えている」と認め、考えたくないことが頭に浮かんでくるのをそのままにしておくことだ。
本当の意味で、そのままにしておく。その考えを評価したり分析したりせず、ただそのままにしておくこと。
これが意外と難しい。頭の中をコントロールしたいという欲求を私たちは常に持っている。だから頭の中が自分の手から離れることは不安になる。
しかしだからこそ、手放すことには価値がある。
浮かんでくる考えを、漂わせるように、頭の中で自由にさせる。
はやりの言葉で言うところのマインドフルネスだ。

自分がまず何かしらの考えによって不安にさらされていることに気が付く。
次はその考えを少し眺めてみる。
自分にはこのような考えが浮かんでいるんだなと、少し自分と距離を取るような言い回しをしてみる。
「ああ、いいですよ、そこにいてください。好きなだけ」と考えに声をかけてみたりしてみる。

どうせ長い間居座るつもりなのだから、その存在にあまり腹を立てない方が互いにとって居心地がいい。

その他、自分にとって意味がある活動に移ってみる。
動画でも、小説でも、散歩でも、食事でも。ただし。その間もその考えはふと浮かんでくるだろう。
突然頭の中にやってくる侵入思考を経験するのは人類の90%以上だ。これは止められない。考えが侵入してきたら、そこですかさず「あら、きたんですね」とそのままにしておく。
「ようこそ、○○さん」と心配事に名前をつけてみるのもいいかもしれない。

そんなことをしても、心配事は解決しない。
でも、心配事にとらわれている状態よりかは少しはマシになる。


今日はそんな一日だった。


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