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【男の自画像-1】プロローグ

 本書は、1992年3月14日に前職の海外研修で渡米した時のエッセイをもとに2023年4月に加筆修正したものだ。約30年間もほったらかしていた本書を、何故今頃に加筆修正しようと思ったのか?
その理由は、病気・・・

 健康優良児であった僕は、今迄病気にはまったく縁が無く過ごすことができた。しかし、2012年5月に椎間板ヘルニアを発病、また脊椎間狭窄症も併発していた。以来手術をせずに体幹と筋肉強化に努めて腰痛と共存してきたが、2022年暮れに歩行に支障が出てきた。やむなく杖を使っての歩行を強いられる。

 びっこを引きながらの歩行に耐えられず、2023年2月に脊椎間脊柱管の専門病院で手術を受ける。もちろん生まれて初めての手術である。手術後は、約1ヶ月半の休職を余儀なくされる。その後、復職活動をするも、休職中の体力気力の低下と風邪引きが重なり、やがて3週間程、食事ができなくなった。

 一日一食、終日寝込むことが多かった。食べられないため体重も6キロほど痩せた。しばらくして洗面時に左耳下の腫れ物に気がつく。看護師をしていた女房にも相談し、病院での検査が続く。3月に原発不明癌でリンパ腫に転移しているとがわかってきた。お茶の水にある大学病院に転院して手術を受けることになった。
4月27日、病理検査結果の告知
 ・中咽頭癌
 ・左下リンパ腫転移
 ・ステージⅢ

 以前の検査でも事前に知らされていたが、あらためて主治医から告知されると辛い。女房も同じだろう。いや残される身としては、僕より辛いと思う。彼女も65歳、同い年である。ここ数年、医療技術や生活環境が改善され、年人生100時代と言われている。しかし、彼女も、いつ災害や事故にあうかもしれない。いつ病に倒れるかわからない。でも僕が癌の手術を受け、抗がん剤や放射線治療などをはじめれば僕の方が先に逝く確率は高い。その後、彼女が悔いの無い人生を送れることを切に願う。

 2023年、65歳。あまりにも早すぎる癌発病に夫婦で不安を隠せない。
自宅で安静にしながら、時間を見つけての終活をはじめる。

 家族が処分に困るものは、全て処分した。スクーバダイビング器材、パソコン関係の器材、仕事で使用していた諸々の書類などを処分した。見よう見まねでエンディングノートも作成した。無念さと寂しさでいっぱいだが、やむをえない。

 さてさて、残された貴重な時間をどのように過ごすか?
仕事はできる限りしていたい。収入も必要だが、自分らしく生きるためには、やっぱり仕事をしていたいと思う。格好良すぎる考えだが、楽しいことや思い出作りよりも仕事をして自分らしく生きていたいのが正直な気持ちだ。
 そして自分の気持ちを安定させるために本書を加筆修正することにした。家族に残すと言うよりも自分の気持ちを整理することで安心感を得たいという気持ちが強い。つまり気持ちの問題だ。そしてこの気持ちを女房に伝えたい。まぁ男の勝手な自画自賛ではあるが・・

 本書のタイトルは、「男の自画像」である。「自画像」とは、端的に言えば、自分の肖像のことである。「肖像」とは一般的には、”人物の顔や姿を表現した絵”という意味に使われている。また19世紀後半に興った印象派以降の画家達は、自己の内面を見つめ、自己の対話と自己検証のために自画像を描くようになったとも言われている。

 だから僕も「自己の内面を見つめ、自己の対話と自己検証のために」今回の病気を機に本書に加筆修正を試みている。写真ではなく、僕の感性を言葉にして物語にしてみたい。心静かに・・・

 そして、本書が未完の作品とならんことをただただ祈っている。

2023年4月

がんになってから、「お布施をすると気持ちが変わる」ことに気がつきました。現在「認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ」に毎月定額寄付をしています。いただいたサポートは、この寄付に充当させて頂きます。サポートよろしくお願い致します。