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54話 - 感想 『囀る鳥は羽ばたかない』

今回の大きな進展は、七原がゆるキャラじゃない事と矢代さんの運転が異次元な事が甲斐にバレた点だと思いますが(はずれ)、とうとう百目鬼が事実を知った、それが辛い。

えっと、普通に話が面白くて興奮します。
エレベーターが閉まって開くカット(下3コマ)すごく好きです。 BLという枠を抜きにしてカメラワーク(ではない)やコマの見せ方は先生の手腕ですね。すごい好き。

1) 矢代さん

今日も調子がよろしい様で。運転が絶好調。
「ホウレンソウ下手でありがと、助かったわ」のチップもオシャレ。

百目鬼が不機嫌な理由が矢代さんに届かない。あの2人が会えば自分の話になる事は容易に想像できるし、お喋り井波の口から余計な説明がある事(てっきり「あのイ◯ポ野郎」と言うのかと思ってましたもっと酷かった)も想像できるはず。きっと矢代さん「別にバレた所で。」と思ってるかな。自分が井波に反応しない、そして百目鬼に反応する、それを知った所で百目鬼は何とも思わないと。
問い詰められても「お前に関係ねぇ事だろ」とか言いそうで。そこに矢代さんのもう1つのコンプレックスを感じます。

2) 百目鬼

矢代さんのいない場で、矢代さんを守りたい感情を全力で感じる。「ヒマつぶしにあの人を使うのはやめろ」の言葉と顔は何だか、4年前のなりふり構わない必死で不器用な百目鬼。でも「二度と会うな」は井波に言う事じゃない。

前回「動画は見ない展開がいい」と書いたのは、動画自体を見ないでほしいというより…あれが被虐だという事を知らないでほしかった。知れば物語は動くけれど、百目鬼が今知るには酷だなと。知らないまま展開するならそれも良いな、なんて。身体が反応していようがしてなかろうが、矢代自身を傷つけている行為だと分かっていたはず。だから止めたかった。ただ、もう身体が被虐を嫌だと訴えているのに、心がそこにしがみついている状況は、あまりに痛々しい。まして百目鬼は矢代を責めた

(前回も書きましたが…)状況は違う、でも葵を思い出す。自分が距離を取っていた間、その大事な人は苦痛に耐えていた。
葵への想い(本当の家族になりたかった期待)がフラれ、まるで裏切られたかの様に葵を避けた。そして見過ごし続けた被害。その罪悪感は新たな壁を作った。
矢代への想い(変わっててほしかった期待)がフラれ、裏切られたかの様に冷たく接した。再会後の百目鬼の態度はまるで、期待に応えてもらえなかった事への苛立ちの様だった。

井波の言葉で気づくのはきっと、
矢代がやっぱり変わっていた事。自分が防げたかもしれない苦痛を4年間味わっていた事。そして、自分が、矢代を信じなかった事

“井波“の着信を見た、たったそれだけで「変わらない」と決めたつけたのは、他の誰でもない百目鬼。あの判断をして以降、いつか襲う罪悪感を膨らませる一方に見えた。

投げつけた言葉、
「変わらないんですね。今も変わらず誰とでもするんですね」
「そんなに男が欲しいんですか」
「誰でもいいのかと思ってました」
「少しも変わらなくて苛々します」
「井波に情報流す気だったんですよね」
「あなたの身体は本当にどうしようもない」
「本当にセックスが好きなんですね」

これらは必ず刃物となって百目鬼に返る。だから聞いていて辛かった。

1話「違うとは言わないんですか。公衆便所」
矢代が自分への評価に反論しない(期待しない)事はとっくに知っていたはず。矢代は全て飲み込んだ。

・罪悪感

人を支配するし、狂わせる。私はこの感情が嫌いで、だからこそずっと気になった。また百目鬼に降りかからないかと。“ほんとに自衛をしない人ですね”等とこれまでの感想に書いてきたものが、遂に降り掛かるのだろうかと勝手に不安になりました。

普通「井波に反応しない。自分に反応する」だけでは「自分が好きだ」には怖くて結びつかないと思う。でも、4年前病院で七原に言われた事、最後に肌に触れた時の「触んな」、コンタクトケースがあの引き出しにあった訳など…、百目鬼は何をどう結びつけるだろう。「レイプだろたまんねーな」ではなく「勃たない」という言葉への困惑でいっぱい。井波への怒りに勝る感情が何かは、55話へ持ち越し。

合意という免罪符を得て、汚い手で矢代に触れる井波。汚い手に触れさせ自分を大事にしない矢代。何よりそれを止めれなかった自分。井波、矢代、自分。この三者にどんな態度を取るだろう。

3) 井波

・「クラウド知らねーのか!?」知らねぇよ、いいからその古典的サイズのSDを渡してくれ
・「たまんねー」。「な」じゃないんよ。同意求めてる?百目鬼が「(だよ)な」とか言うはずないんでせめて「たまんねー」であれ
・「レイプみたいだから好き」じゃなくて「矢代とするのが好き」だよね。認めたくないよ
・殴られたのも、携帯割られたのも差し置いて話したい事「俺の所に来た」
・時々乙女ポーズするのなにかな
・4年間も(こんな)自分を求めてくれた矢代をあっさり失うのは、井波も正直辛い
・百目鬼1人を今しょっぴいて竜頭を警戒させるお粗末はしないだろうけど、井波がお粗末キャラでも特に問題はない
・口悪いと嫌われちゃうよ

百目鬼への執着が「憧れ(嫉妬)」だと感じるのは私だけでしょうか(そうだよ)。井波の言葉は常に百目鬼の罪悪感をえぐる。百目鬼の大事な物が何かよく見えててえぐる。羨ましい、壊したい、そんなもの不要だと思いたい。自己愛や欲動に動かされる井波(や平田)を私はどこか憎めません。

百目鬼も勃たない矢代相手に同じ事をしていると思っているなら、言いたい事はきっと「父親と変わんねぇな」。でももし言われてしまったら百目鬼には思い当たる節もある。昨晩、自分がどう矢代を扱ったか。簡単に押さえつけられる相手に、自分の感情をぶつける行為と化してなかったか。

注 : 私は百目鬼大好きです。

4) ママ

ママの感じ、最高ですね。綱川が”目が利く”とみた神谷の言う通りか、ママが一枚上手か、どちらも面白いです。
ママは、第一声「力!」の際(50話)、その戸惑いと汗は何かなと気になりました。でも今回神谷の言葉に見開いたあの目は、綺麗で好きでした。優しい女性に見えましたがどうですかね。優しい人なら百目鬼並みの天然さん。しかし、腕で自身の身体を抱え込む姿勢も、暴力から目をそらすのも、演技だとしたら結構やばい人。

5) 七原

・年下から送られたチキンを見る視線、腹が出てきたとの自白、ダブル公開処刑を経てからの株上げ。先生やっぱりSなのでし…略
・俺のスーツこんなボロボロアピール、癒されます。社長に良いスーツ新調してもらってね。でも腹を引っ込めねぇと七原から七段腹に改名。

6) お互い、知らないことがある

煽り文に、触れてみる…
互いの知らない事、それは、矢代の変わった所と百目鬼の変わらいない所、そう感じました。

4年で互いに変わった所と変わらない所がある。でも、
百目鬼は矢代が「変わらない」とばかり言う。
矢代は百目鬼が「変わった」とばかり言う。

変わった矢代を、百目鬼は知らない。
変わらない百目鬼
を、矢代は知らない。

おわり

あとがき

書きたいこと書けてない気がします。残したいとこ削った気がします。でも何としても55話発売日前に投稿したくて…しかし私は55話も電子派。

32話の扉絵(傘を握る百目鬼)をそっと思い出して。落としたのか、拾うのかは、お任せです。

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