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ケンタウロスは翼が生えるのか

兄弟は兄と弟の2人しかいないから、仲良く、困った時は助け合いなさい。

そう、祖母に言い聞かせられ幼少期私は育った。
兄は気分屋だから、兄のしない事は私がやろう。
両親共働きだから、休日のお昼ご飯は拙いが私が作ろう。
祖母の相手や両親の相手、兄が苦手ならば私がしよう。

私は家族が大好きで、ファミコン、ブラコンを自称していた。
そうであるべきと思っていたし、強要していた。

なんとも押し付けがましい糞餓鬼である。


ケンタウロスになった兄の家に顔を出さなくなって、数年が経った。
受験シーズンから家から出なくなり、兄とも自然に距離ができた。
あれ程好きな兄に嫌気を覚える自分に嫌気がさしたのだ。
代わりにと文を送るが、気分屋の兄はいい気分の日が少ないらしい。
返事はカラ元気の圧が強い文しか届かない。


兄はずっと、走らないケンタウロスのままなのだろうか。
狭い部屋に足を折り曲げ布団の上に座るように眠る。
いつか、脚が腐る前に外で走り回って欲しい。
いや、常足でもいい。
もしくは、翼を生やして空を飛んだっていいじゃないか。 

前ほど、兄の隣に立つ事に自然さを持てなくなった私は、想像の中で兄に翼を生やす。
きっともう、隣に並ぶと私の目線は彼の目線に近づいているだろう。
流石にもう、背中に乗せろといわない。
共に歩こうとも言わない。
しかし残念ながら、私に君を背負うことは出来ない。
あまりにも大きく、重く、優美な兄は、自身で歩いた方が美しいのだ。
君が、気ままに歩ける場所を見つけてくれたらと、それだけ思う。


#短編集 #まほろば町白昼夢路通り #小説

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