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裁量労働制拡大と「つながらない権利」

昨年(2022年)7月に厚生労働省有識者会議「これからの労働時間制度に関する検討会」報告書が公開され、その報告書を基に厚生労働大臣諮問機関「労働政策審議会」労働条件分科会の公労使委員の間で議論され、12月には厚生労働省は「労働政策審議会労働条件分科会報告」を公表。

報道や弁護士や労働組合は裁量労働制拡大問題ばかりに関心をよせていたが、個人的には健康確保措置としての「つながらない権利」に関する議論にも注目。

「つながらない権利」に関しても「これからの労働時間制度に関する検討会」では議論されており、「これからの労働時間制度に関する検討会報告書」本文12頁には「海外で導入されているいわゆる『つながらない権利』を参考にして検討を深めていくことが考えられる」という個所があった。だが、労働政策審議会労働条件分科会では事務局(厚生労働省)が「つながらない権利」について取りあげもせず、委員からも意見がほとんどなかった。

そして、労働政策審議会労働条件分科会報告「今後の労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(報告)」には「つながらない権利」を参考にして検討を深められたような形跡はまったく見受けられなかった。個人的には「つながらない権利」を法制化しているヨーロッパ諸国に少しでも近づけたらと思っていたが、ただただ残念。

追記:つながらない権利と労働基準関係法制研究会

「労働基準関係法制研究会」は「新しい時代の働き方に関する研究会」につづいて開設された厚生労総省(労働基準局)有識者会議になります。

労働基準関係法制研究会の検討事項は「『新しい時代の働き方に関する研究会』報告書を踏まえた、今後の労働基準関係法制の法的論点の整理」と「働き方改革関連法の施行状況を踏まえた、労働基準法等の検討」とされています。

議題は毎回「労働基準関係法制」とありますが、2024年1月23日に開催された第1回研究会ではメンバー(構成員)全員が意見を述べ、2月21日に介された第2回研究会では「労働時間制度について」議論されました。

また、2月28日に開催されたされた第3回研究会では「労働基準法における『事業』及び『労働者』について」、3月18日に開催された第4回研究会は「労使コミュニケーションについて」議論された。

第5研究会は3月26日に開催され、これまで議論された「労働時間制度について」「労働基準法における『事業』及び『労働者』について」「労使コミュニケーションについて」の論点を整理しながら、さらに掘り下げて議論を一巡。

次回(第6回研究会)は、第5回研究会でのメンバー(構成員)意見を踏まえて再整理し、次々回(第7回研究会)からは労使ヒアリングを実施予定。

なお、第5回資料3「これまでの論点とご意見」には「諸外国におけるつながらない権利については、義務化するのではなく、労使で話し合いをするという制度設計がなされている。労契法上でデフォルトルールを定める方法もあり、労働基準法と労働契約法の接続の問題で議論されるべき」と記載されていました。

資料「これまでの論点とご意見」(PDF)

*ここまで読んでいただき感謝!